
全国で「こども食堂」は約2200カ所にのぼり、国の後押しも受けて運動の輪はさらに広がる勢いです。2016年10月に、倉敷市に「子どもソーシャルワークセンターつばさ」を立ち上げた紀奈那代表理事に「こども食堂」の現状や課題、将来の夢をお伺いしました。
AMDA
まず「つばさ」を立ち上げた経緯を教えてください。
紀代表理事
川崎医療福祉大医療福祉学科に在学中、同大学の直島克樹講師(社会福祉士)や先輩らと任意の福祉サークルを作りました。しかし、運営資金集めに苦労し、社会の信用度をアップするため一般社団法人として組織化しました。親に甘えた経験がない小学生が私に懐いてくれ、喜びとやりがいを感じていたことも、私が活動を続ける原動力となりました。
AMDA
「つばさ」はどのような運営をされていますか。
紀代表理事
子どもたちが自由な雰囲気で自分の家に帰ったような居場所を目指しています。平日の週3〜4回(午後3時〜8時半)開催し、スタッフはボランティア学生30人、職員は(学生を含め)7人です。「つばさ」が運営している居場所にくる子どもは小学生から高校生まで8人。食事も提供しますが、みんなよく食べ、うれしいですね。誕生日会やクリスマス会、海水浴やプールにも行っています。
AMDA
実際に「子どもの居場所」を運営されると、課題も多いのではないでしょうか。
紀代表理事
「貧困」に認識の違いがあり、「貧乏なんでしょ」と捉えて差別につながるケースもあります。子どもたちがいじめられたりしないよう、実際に子どもが集まる場所は事務所とは別の家を借りており、住所は非公表としています。運営費のやりくりも大変ですね。
AMDA
子どもと接することで、親への支援の必要性も出てくるのではないでしょうか。
紀代表理事
子どもが通う小、中学校の先生や関係機関と定期的に会議をしています。保護者から電話もかかるようになりました。信頼関係が徐々に築けていることはとても嬉しいです。
AMDA
直島講師が代表となって「こどもを主体とした地域づくりネットワークおかやま」も出来ているそうですが、どのような組織ですか。
紀代表理事
こどもの支援者同士がつながりを持つ組織で、会合には多い時は約60人が参加して頂くなど支援の輪が広がっているのも心強い限りです。子どもの居場所連携事業も立ち上がり、こども食堂や子どもの居場所を運営している人たち同士がつながる機会も作っています。
AMDA
2017年12月、産官学民で組織する「AMDAこども食堂支援プラットフォーム」を立ち上げました。紀代表理事にはAMDAとこども食堂の連絡役をしてもらっています。お世話になり、感謝しています。
紀代表理事
国内外に緊急医療チームを派遣する国際医療ボランティア・AMDAに国内の貧困問題にも関わっていただき、ありがたい気持ちでいっぱいです。AMDAの知名度や組織力など総合力をお借りし、子どもの居場所づくりがさらに進むことを願っています。ある時、男の子から「大人は信用できない」と言われ、大きな衝撃を受けました。他人を信用し、夢を持ってすくすくと育ってほしいと思います。皆様のご理解とご協力をよろしくお願いします。
(聞き手・広報担当参与 今井康人)