ウクライナ担当 岩尾 智子

2022 年2 月24 日に勃発した人道危機から1,000 日以上が経ち、ウクライナでは3 度目の厳しい冬を迎えています。時間の経過とともに、避難者の置かれている状況も変わってきています。海外に避難していた多くの人がウクライナに戻ってきている今、比較的安全な西部の町は人口が2 倍になり、住宅不足や失業問題が発生しています。当初は、自分の身の安全を守るため、着の身着のまま緊急避難してきた方へ服用中の薬の処方をしたり、避難中に負った外傷や急性ストレス反応への対応をしたりと、緊急的なサポートが中心でした。一方、現在は長期的なストレスが原因と考えられる不安障害、頭痛、消化性潰瘍などの症状を訴える方が多くいます。生まれ育った地元を離れ、将来に不安を抱えながら生活する国内避難者への継続的な支援の重要性が増しています。

東部の戦闘地域から約20 キロに位置するハルキウに住む人々の生活は、依然として厳しい状況です。時期によりますが、数日に1 回、ミサイルや爆撃の音が聞こえる中での生活を住民は強いられています。子どもたちは安全確保のために地下にある防空壕で学ばざるを得ず、長時間換気の悪い場所にいることが原因で健康問題が発生するなど、環境は決して良いとは言えません。商店は通常通り営業しており、物流も今のところは正常に戻ってきている一方、医薬品が手に入りにくい状況は改善されていません。

さらに、電力供給に不安があるため、ウクライナ国内で活動するAMDA の各協力団体は、発電機を購入したり、燃料購入に充てる費用を捻出するために他の支出を抑える工夫をしたり、と知恵を絞って厳しい冬に向けて備えてきました。物価や燃料の高騰、地域によっては継続的な爆撃による被害もあり、多大なストレスを抱える中、ウクライナに住む人たちは力を合わせて懸命に日常生活を送っています。

2022 年3 月より活動を始めたAMDA は、現在、医療支援と食糧支援を中心とした活動を行っています。今後も現地協力団体とともにウクライナ国内避難者へのサポートを継続していきます。



