講演するメルカド氏
フィリピン現地協力者であるグロリア・メルカド氏が2019年12月14日から7日間、来日しました。
AMDAは同氏協力の下、2013年より様々な緊急支援活動を実施しています。同氏は2016年から2018年までフィリピン大統領府長官筆頭秘書官として、2019年からは和平プロセス担当大統領顧問室事務局長として、フィリピン南部ミンダナオ島における和平構築に関わってきました。
2019年12月16日、総社市役所で市職員と市民を対象に「平和への願い」と題して、翌17日には、広島大学のIDEC(International Development and Cooperation)セミナーにおいて、大学関係者と学生合わせて約30人に対して「モロ民族の苦悩とバンサモロ和平構築」について、メルカド氏が講演。話の中で、ミンダナオ島およびバンサモロ和平構築における歴史、フィリピン政府の開発・安全保障に関する枠組みと和平プロセス包括計画について触れました。政府による具体的な取り組みの一例として、「正常化」を挙げ、身分証明書の発行、住居や就職機会の提供などにより、戦闘員が一般人の生活に戻れるよう支援していることを紹介しました。
ミンダナオ島は、第二次世界大戦を含む多くの戦闘を経験している島であり、政府とモロイスラム解放戦線が和平に向けた話し合いを続けている、という漠然としたイメージしかありませんでした。講演を聞いて、和平にむけた多方面からの取り組みを知る機会になると同時に、戦友を亡くしている軍人、戦闘員たちが互いを認め、信頼を構築していくには長い時間を要するものの、不可能ではないことを確信しました。その証として昨年、バンサモロ暫定自治政府が発足しました。これは、政府側と自治政府側の互いの信頼なくしては成し得なかったと思います。ただし、そこにたどり着くには、多大な努力、紆余曲折があることをミンダナオの歴史が教えてくれました。