2018年度年次報告 教育支援 グローバル人財育成事業(2019/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2018年度年次報告 教育支援 グローバル人財育成事業(2019/7発行)

AMDA中学高校生会

概要
◇実施場所 国内:岡山県岡山市、赤磐市、高知県黒潮町 国外:スリランカ
◇実施期間 1995年〜継続中

◇事業内容
AMDA中学高校生会(以下、中高生会)は県内の中学生、高校生28人、他府県から4人合計32人のメンバーで活動している。国際協力や災害・防災をテーマに毎月1回以上の定例会を持ち、テーマに向け活動の目的、内容、準備の話し合いや作業、活動終了後は報告と振り返りを行っている。今年度の主な活動は以下のとおり。
1)AMDAスリランカ紛争後復興支援平和構築プログラム青少年交流事業
2)高知県黒潮町中学生高校生との防災教育取り組み交流会

1)AMDAスリランカ紛争後復興支援平和構築プログラム青少年交流事業

◇実施場所 スリランカ・ポロンナルワ
◇実施期間 2018年8月3日〜5日

◇参加者数 (中高生会より) 4人
◇参加者の声
・「日本人の本当の役割は、ただ交流をするだけでなくスリランカ国内の民族同士の子どもたちを繋ぐ橋を架けること。笑顔だけではなく「言葉の壁」を乗り越え、次のステップに進んでいくために自分達なりの答えを探していきたい。」
・「昨年努力しても2つの民族を繋げることができなかったが、今年この流れを変えることができてうれしかった。」
・「民族間、宗教間の差がチラホラ見え、タミル、シンハラの人達の間を埋めるために参加したのに、あまり行動できずにいた自分が今思うとはずかしい。でも全体的にはとても楽しく良い経験となった。」
・「3日間という短い期間だったのに1か月生活したように感じられるくらい充実していた。今まで生きた人生で一番濃く、一番大切な3日間になった。笑顔ほど人を癒し幸せにしてくれるものはないと心から思った。ただの笑いではなく人を幸せにする笑顔を探し、笑顔の輪(和)を広めたいと思う。」

◇事業内容
1983年に勃発したスリランカの内戦が2009年に終戦を迎え、その間2003年〜2006年の3年間AMDAは医療和平として異なる民族・宗教の人々に平等に巡回診療や健康教育を行った。2011年から医療和平?として活動を再開すると並行し、異なる民族、宗教の生徒たちが交流する「平和構築プログラム」を実施、中高生会は2015年度から参加している。2018年は8月3日〜5日にスリランカ・ポロンナルワで開催し、赤磐市中学生、広島県立誠之館高校の生徒たちと共に中高生会4人がこのプログラムに参加した。

今回は事前に「共に平和を考える」をテーマに中高生会の参加者を中心にスリランカでの自分達の役割と活動内容をしっかり話し合った。今自分達は何ができるのか、平和になるためにはどのような取り組みが必要なのかについて真剣なディスカッションを重ねスローガンとして「Share our Smile」を掲げた。

スリランカでは、お互いの宗教(仏教、ヒンズー教、イスラム教、キリスト教)を知る宗教プログラム、スポーツや文化交流のプログラム以外、「共に平和を考える」ことの取り組みとして、参加者全員が各々平和についての思いを絵にし共有する活動、日本からのチームによる平和についてのプレゼンテーション、そして現地で事故が絶えない灌漑用水の大きなため池に掲げる「命を大切に」をテーマとしたポスター作成も行った。2泊3日、スリランカの生徒たちと寝食を共にし、相互理解の大切さ、思いやりの心など深く心に刻み、「笑顔の大切さ」を改めて学ぶことができた。


◇帰国後の報告
帰国後の定例会で今回の参加者が報告したところ、「笑顔も大切だけどそれ以上に相手を尊重し自分の意見をジェスチャーできちんと伝えることが大切だと感じた。言葉が伝わらなくてもつながると思う。」「報告を聞き、平和を実現するために大切な事、日本人の役割を深く考えることができた。」「スリランカの人は日本の事が好きで、今後日本とスリランカの関係がもっと深まればいいと思う。もっとスリランカの歴史を勉強したい。」と報告を聞いたメンバーも自分の思いなどを語った。

また、11月11日には、赤磐市にて開催された「AMDA赤磐市防災交際フォーラム」の場で、今回参加した中高生会のメンバーたちは、赤磐市中学生、広島県立誠之館高校の生徒たちと一緒にパワーポイントや動画を使用し活動報告を行った。

2)高知県黒潮町中学生高校生との防災教育取り組み交流会

◇開催場所 高知県黒潮町
◇開催日 2018年8月25日

◇参加者数 6人
◇参加者の声
・「黒潮町の防災に対して、中学生や高校生が活動がとてもきめ細かく大変勉強になった。」
・「避難訓練も学校単位でなく地域の中に入り、住民と一緒に行っている。修学旅行でも防災教育を行っていることをすごいと思った。」
・「ハザードマップを生徒たちが地域の住民に配布したり、防災訓練では高齢者に対して必要に応じお手伝いをしていることを聞き、勉強になった。」
・「故郷を愛し地域住民と共に犠牲者0を目指し、災害に立ち向かおうとしている中学生や高校生の意識の高さがすばらしいと感じた。」

◇事業内容
AMDAと黒潮町が南海トラフ災害に備え、連携協定を締結したのをきっかけに8月25日、中高生会6人が黒潮町を訪れ交流会を開催した。黒潮町にある高知県立大方高校で、中高生、大方高校、黒潮町立佐賀中学校、大方中学校の参加でそれぞれ防災に対しての取り組みを発表した。中高生会からはスリランカ平和構築プログラムの活動紹介に加え7月に発生した西日本豪雨災害でのボランティア活動を中心に防災に対しての自分達の考えを発表した。黒潮町の中学生高校生は避難訓練、防災教育の発表後大方高校が作成したHUG(避難所運営訓練のロールプレイ)を使いグループワークを実施した。

◇定例会での報告
交流会後の定例会で参加者はメンバーに報告を行った。報告を聞いたメンバーたちからは、「黒潮の防災マップはきめ細かく、地域の人との関わりがすごいと感じた。」「岡山の自分達も意識を高くしたい。今すぐに行動しないといけない。」「中学生や高校生の活動を同世代だけでなく、大人に働きかけることも大切と感じた。」などの声が聞かれた。

 

TAPP: シンガポール国立大学の医学生、ネパール・トリブバン大学教育病院での研修


◇実施場所 ネパール・カトマンズ トリブバン大学教育病院
◇実施期間 2018年5月14日〜6月13日

◇派遣者
アルチャナ・シュレスタ・ジョシ/調整員/AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDA本部、トリブバン大学教育病院、AMDAネパール支部

◇受益者数 シンガポール国立大学医学生9人
◇受益者の声
・「病院の医師や現地の医学生は私たちの前では必ず英語で会話し、話の内容を理解できるように気を配ってくれた。現地の医学生はテストがあるにも関わらず私たちと一緒に時間を過ごしてくれたり、いつも歓迎されているように感じることができてとても嬉しかった。」
・「言葉が通じない患者さんたちも、僕に優しく接してくれて、初めて言語を超えたコミュニケーションを取ることができて感動した。」

◇事業内容
AMDAは次世代の育成のために「トリプルAパートナーシップ・プログラム(以下、TAPP)」を開始した。TAPPは、AMDA、 AMSA(アジア医学生連絡協議会)、 AMSA Alumni (卒業生部会)の三者が協力し、主にAMSAメンバーである医学生が将来、自国のみならず海外において医療を通じて世界平和に貢献できる人材となるよう育成を目指すプログラムである。

2018年度はその一環として、5月中旬より1か月間、シンガポール国立大学医学生9人がネパール・トリブバン大学教育病院 (TUTH) とAMDA ダマック病院で研修プログラムを受講した。医学生たちは最新の医療機器が整っているシンガポール国内で医療に関わっており、ネパールの医療システムや医療機器の違いに少し驚いたが、「医療従事者として患者に対する思いやりや関わり方、そして患者さんの早期回復を願う気持ちは国境を越えて変わらないと共感した。」と述べた。

今回受け入れたトリブバン大学教育病院の外科部長は、「トリブバン大学教育病院は国内でもある程度医療機器が揃っている総合病院で、私立病院に比べて治療費用が比較的に安いため全国から患者が殺到する。患者や患者の家族で溢れている状況の中で診療することはシンガポールでは考えられないと思うが、研修に来た医学生たちがこの病院での経験を活かして、どこでも医師として患者の治療ができるようになれば効果は大きくなると思う。」と語った。また現地の医学生も「今回のシンガポールからの医学生との交流でお互い学べる事が多くあり、視野が広くなった。」と述べるなど、両国の医学生にとって良き刺激と学びとなった。

 

新庄村中学生大使館訪問

◇実施場所 岡山県新庄村、駐日ネパール連邦民主共和国大使館、駐日インドネシア共和国大使館
◇実施期間 2018月7月29〜30日

◇従事者
新庄村、新庄村教育委員会、AMDA

◇受益者 新庄村立新庄中学校生5人

◇事業内容
大使館に訪問し、大使閣下や担当者の方に英語で出身地の紹介など、コミュニケーションを取ることで、中学生の知識を広げ国際理解を促すため、AMDAが支部を置いている国の在日大使館(駐日ネパール連邦民主共和国大使館、駐日インドネシア共和国大使館)へ新庄村立新庄中学校生5人が訪問した。

大使閣下や担当の方と英語でコミュニケーションを取るために事前学習として、大使館訪問前にAMDA職員が中学校に赴き、訪問する大使館の国についての説明なども実施した。

当日、中学生らは各大使館にて英語で新庄村の紹介をして、お米やジャムなど村の特産品を手渡した。ネパール大使閣下より「生徒たちによる新庄村の宣伝は素晴らしい。お土産もありがとう。」と感謝を伝えられた。また、インドネシア大使館の教育担当の方は、「日本の田舎には今まで行く機会がなかったが、説明を聞いて素晴らしさに感動した。日本の田舎に行ってみたくなった。」と語った。

大使館訪問をした中学生らは、「初めはとても緊張したが、大使館の方が明るくて、緊張が解けた。」「大使館で新庄村の発表ができてよかった。このことは忘れないだろう。」「ネパールとインドネシアのことを色々知れた。今回学んだことを将来に生かしたい。」などと感想を述べた。

 

インターンシップ受け入れ:佐藤 未来さん


◇実施場所 AMDA本部
◇実施期間 2019年1月21日〜3月22日

◇期間中の業務内容
駐日外国公館への提言書作成、「第1回日越国際シンポジウム」の司会進行、その他会計書類作成や備品整理など

◇事業内容
教育事業の一環として、AMDA本部にて1人のインターンシップを受け入れた。大学を卒業したばかりの佐藤さんは、途上国の公衆衛生分野の協力に関心があったこと、そして地元岡山から社会に還元できることはないかという想いから就職するまでの間、インターンとして活動した。

会計などの書類作成、備品整理など本部業務も多くこなす一方、ルワンダ大使館への母子健康手帳の重要性に関する提言書作成、日本に住むベトナム人と日本社会での共生について話し合う場となった「第1回日越国際シンポジウム」の司会進行など、様々な業務に携わった。

また、初めて佐藤さんがAMDA事務所を訪れた日が、ちょうどインドネシア津波災害の緊急支援活動にAMDAから調整員を派遣する時であり、事務所で調整する職員たちを見て、「本当に支援を必要としている人たちに迅速に支援を届けるためには、問題の原因は何であるのか、先で何が必要なのかを想定し、関わる人たちを巻き込みながら、細やかな調整を進めることの重要性を学んだ。」と後で語った。加えて、「業務の中で、他団体との連携を取りながら業務をこなす先輩方を見て、このような調整力を今後身につけていきたい。今後AMDAと協働する機会があることを願い、日々精進していきたいと思う。短い間でしたが、本当にありがとうございました。」と話した。

 

こども食堂支援プラットフォーム

概要
◇実施場所 岡山県内
◇実施期間 通年実施

◇事業内容
2017年12月に産官学民で組織する「AMDAこども食堂支援プラットフォーム」を結成した。こども食堂への支援は食材提供だけでなく、子どもたちが将来社会参加できる機会と社会から必要とされる環境を整える活動を目指している。県内のこども食堂は40〜50団体とされているが、事業の一環として具体的には、こども食堂の運営に取り組む希望の団体へ次のような支援活動を行った。
1)お米配布
2)弘前産リンゴ贈呈
3)イチゴ狩り農業体験

1)お米配布

◇実施場所 AMDA本部事務所 (岡山市北区)
◇実施日 年4回(2018年6月12日、9月13日、12月6日、2019年3月14日)

◇受益者数 10団体、延べ435人

◇事業内容
「こども食堂」の運営に取り組む10の団体に食材支援として年4回(6月、9月、12月、3月)合計880kgのお米を配布した。受け取られた方から「経費のやりくりが大変なので主食の支援はありがたい。」「おいしい。」などの感想をいただいた。

2)弘前産リンゴ贈呈

◇実施場所 贈呈式:岡山県司法書士会館 (岡山市北区)
贈呈:AMDA本部事務所 (岡山市北区)
◇実施日 贈呈式:2019年1月9日
贈呈:2019年1月17日、18日

◇贈呈式参加者 7人
◇受益者 14団体、180人

◇事業内容
岡山ハーモニーライオンズクラブよりAMDAこども食堂支援プラットフォームを通して弘前リンゴの贈呈を受け1月9日贈呈式を実施、同月17日、18日にプラットフォームより希望の14団体へ配布した。リンゴの支援について「フルーツは高価なのでありがたい。」「普段、提供できないのでうれしい。」等の声をいただき大変喜んでいただいた。こども達からお礼の手紙や絵を準備され同ライオンズクラブへ届けた。

3)イチゴ狩り農業体験

◇実施場所 岡山フルーツ農園 (岡山市東区)
◇実施日 2019年3月26日

◇参加者数 5団体28人

◇事業内容
3月にこども食堂のこどもたちを対象にイチゴ狩りを実施、当日は5団体28人(保護者11人含む)が参加した。このイベントは楽しく視野を広めることで将来を担う子どもの健全育成を目指す狙いで計画され、当日は岡山県立大学、川崎医療福祉大学の学生さん12人がボランティアとしてスタッフと共に子どもたちのフォローにあたった。

参加した人たちからは「イチゴはみんな好き。AMDAは国内外へ医師らを派遣するなど忙しい中、子どもが喜ぶ催しをしていただき感謝している。」「イチゴの栽培などを聞いて農家の方の大変さがよく分かった。これまで野菜や果物などを何気なく食べていたが、これからは感謝の気持ちを忘れないようにしたい。」という声が聞かれた。

ボランティアとして参加した学生の方たちからも、「子どもと接する機会があまりなかったので、思ったことを正直に話す子どもに驚くと共に勉強になった。イチゴを食べる子どもの表情から満足感が伝わり、すごく楽しかった。」「子どもと一緒にイチゴを食べることで双方の距離間が縮まったのがうれしかった。親と交流できたことも勉強になった。今後もこんな機会があればぜひ参加したい。」などの感想をいただいた。