- 大阪北部地震被災者緊急支援活動
- 西日本豪雨被災者緊急支援活動
- インドネシア・ロンボク島地震緊急医療支援活動
- インド連邦・ケララ州洪水被災者緊急支援活動
- 北海道胆振(いぶり)東部地震被災者緊急支援活動
- フィリピン災害被災者に対する支援活動
- インドネシア・スラウェシ島地震被災者緊急支援活動
- ハイチ地震被災者支援活動
- スリランカ洪水被災者緊急支援活動
- インドネシア津波被災者緊急支援活動
大阪北部地震被災者緊急支援活動
◇実施場所 大阪府高槻市、茨木市
◇実施期間 2018年6月18日〜19日
◇派遣者
大西彰/調整員/AMDA本部職員、神倉裕太郎/調整員/AMDA本部職員
◇事業内容
6月18日午前7時58分、大阪北部を震源とするマグニチュード6.1の地震が発生、最大震度6弱を観測した。
同日午後、AMDA本部より調整員2人を派遣し、夕刻に震度6弱を記録した高槻市に入った。同市災害対策本部にて情報収集を行い、避難所となった公民館や小学校を実際に訪れ、避難者全員の帰宅を確認した。
翌日、同じく震度6弱を記録した茨木市危機管理課及び保健医療センターを訪問し、地元医療機関の診療開始を確認。その後、茨木市及び高槻市市内の避難所にて担当者から、既に保健師による巡回健康相談を開始しており、水や食料も十分支給されている状況を確認した。また、避難されている方々が「家に帰れないというより、余震が怖いから避難所にいる。」「余震だけでなく、土砂災害も心配している。」など不安を抱え、この日も避難所に残られる話など調整員が直接避難者より伺い、その後、高槻市災害対策本部内危機管理室にて見聞きした話を含め最終報告を行った。
調整員は医療を含めた支援の必要性はないと判断し、同日午後6時、活動の一旦終了を決定、帰途についた。
西日本豪雨被災者緊急支援活動
◇実施場所 岡山県総社市・倉敷市真備町
◇実施期間 2018年7月7日〜8月31日
◇派遣者数
265人 (医師11人、看護師39人、薬剤師15人、医療調整員6人、理学療法士1人、保健師12人、鍼灸師40人、心理士1人、弁護士4人、助産師2人、あん摩マッサージ指圧師1人、介護福祉士1人、調整員76人、学生ボランティア43人、AMDA職員13人)
◇活動参加・活動地訪問自治体、団体、企業 (敬称略)
自治体(自治体コード順):
岡山県総社市、岡山県赤磐市、徳島県阿南市、徳島県美波町、徳島県海陽町、高知県黒潮町
医薬品関係(五十音順):
一般社団法人岡山県薬剤師会吉備支部、株式会社幸燿、有限会社アイ薬局
医療機関(五十音順):
一般社団法人吉備医師会、一般社団法人瀬戸健康管理研究所 SHL丸亀健診クリニック、医療法人さくら診療所、医療法人サンズあさのクリニック、医療法人社団かとう内科並木通り診療所、医療法人社団時正会佐々総合病院、医療法人杉会高杉こどもクリニック、医療法人ときわ会藤井クリニック、医療法人芳越会ホウエツ病院、医療法人横浜柏堤会戸塚共立第2病院、株式会社岡山医学検査センター、社会福祉法人旭川荘療育・医療センター、社会福祉法人全仁会倉敷平成病院、独立行政法人国立病院機構福山医療センター、美波町国民健康保険美波病院、モンゴル・ウランバートルエマージェンシーサービス
教育機関(五十音順):
岡山県立大学、学校法人朝日医療学園朝日医療大学校、学校法人加計学園玉野総合医療専門学校、学校法人ノートルダム清心女子大学、国際医療勉強会ILOHA、国立大学法人岡山大学 法学部教授 黒神直純、モンゴル国立医科大学
企業・団体(五十音順):
AMDA沖縄、AMDA熊本鍼灸チーム、AMDA兵庫、一般社団法人岡山経済同友会、一般社団法人岡山県鍼灸マッサージ師会、一般社団法人Bridge for Fukushima、NPO法人福祉苑リーベの会、岡山倉敷フィリピーノサークル、賀川法律事務所、株式会社イシダ工務店、株式会社大塚製薬工場、株式会社廣榮堂、公益財団法人風に立つライオン基金、公益社団法人岡山県鍼灸師会、清水博文税理士事務所、社会福祉法人倉敷市社会福祉協議会、社会福祉法人総社市社会福祉協議会、十字屋グループ、小規模多機能ホームぶどうの家真備、人道援助宗教NGOネットワーク(RNN)、生活協同組合おかやまコープ、生活協同組合コープこうべ、中外製薬株式会社、特定非営利活動法人AMDA社会開発機構(AMDA-MINDS)、特定非営利活動法人リザルツ、日本青年会議所医療部会、有限会社蒲池畜産
◇受益者数 延べ5,542人
◇受益者の声
「日中も保健師さんや看護師さんがおられるから安心して過ごせる、家よりもここがいい。」 (サンワーク総社)
◇事業内容
【災害急性期 (7月7日〜9日)】
7月5日より降り続けた雨は激しさを増し、翌日夜には岡山全域で大雨特別警報が発令、県内では堤防の決壊や土砂災害など甚大な被害が発生した。
7日午前11時過ぎ、AMDAは災害協力協定を結んでいる岡山県総社市の災害対策本部に調整員1人を派遣、協議の結果AMDAチームによる市内避難所の巡回診療を決定。同日正午に看護師、調整員各1人も追加派遣。アイ薬局の所有する移動調剤車も到着し、総社市、地元医療機関、AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム協力医療機関のご協力により、医師2人、薬剤師2人、看護師1人、調整員1人から成る医療チームを編成、当時393人が避難していたきびじアリーナで診療活動を開始した。外傷患者2人を含む11人を診察、傷の処置や薬の処方を行った。夕刻にはチームを二手に分け、1チームは別の避難所である昭和小学校に移動し、11人を診察したほか、エコノミー症候群予防の体操を避難者に教えた。
活動開始以来活動する総社市や医療機関に加え、8日は岡山県薬剤師会吉備支部等の協力を得ながら、きびじアリーナ避難所に「AMDAきびじアリーナ救護所」を開設。医療チーム(医師4人、薬剤師14人、看護師7人、理学療法士1人、調整員7人)が午後6時までに計83人を診察、内2人は医療機関への救急搬送、38人は薬を処方した。
9日は総社市が、きびじアリーナで過ごす避難者の熱中症の可能性を懸念し、962人全員を市内の冷房設備がある他の避難所へ移動させることを決定。AMDAは移動に向け、同市と協働し避難者を世帯ごとに調査。医療介入の必要な方や要支援者の情報を収集し、各々の状況により移動先の避難所を決定、特に医療介入の必要な方をサンワーク総社に移動させた。同日夜には避難者のほぼ全員の移動を完了。
【災害亜急性期 (7月10日〜)】
1)サンワーク総社での活動 (7月10日〜8月15日)
医療介入の必要な避難者と家族をサンワーク総社に移動させた翌日10日より、AMDAから派遣された看護師あるいは保健師、調整員が日中常駐、避難する最大76人の方たちの見守りや声かけなどといった健康支援活動を行った。
2)台風12号特別対応 〜総社市内避難所を巡回医療相談〜 (7月29日)
7月29日に台風12号が西日本に接近、総社市では同日早朝に避難勧告が発令。600人以上の方が市内10ヵ所の避難所に避難した。AMDAは総社市、吉備医師会協力の下、AMDA医師2人と調整員1人が総社市保健師と一緒に丸一日かけて全避難所を巡回し、延べ28人の医療相談に対応した。
上記の活動に並行し、甚大な浸水被害を受けた倉敷市真備町においても支援活動を開始。
3)倉敷市真備町内避難所での活動
a) 倉敷市立岡田小学校 (7月11日〜8月15日)
AMDA災害鍼灸チームが中心となり鍼治療やあん摩マッサージ指圧師による施術、足浴などを避難者に提供、活動終了までに延べ964人に施術を行った。当初は自宅の片付けなどによる腰・肩・背中などの痛みを訴える方が多かったが、時間の経過とともに便秘や不眠などの訴えが増加。「鍼を受けた夜はよく眠れた。」といった声も聞かれた。鍼治療を受けるだけでなく、小学生から高齢者まで毎日話をしに来られる方も多く、「憩いの場」としても利用された。
b) 真備公民館薗分館 (7月21日〜8月31日)
真備町内の小規模多機能ホーム「ぶどうの家真備」は、壊滅的な被害を受け、入居者と職員は他の行先のない避難者の方と真備公民館薗分館で避難生活を余儀なくされた。高齢者も多く、施設スタッフが昼夜を通し見守りや介助が必要な方に対応していたが、疲労が目立ち始めていた。その状況を受け、AMDAは夜勤を中心に担当可能な看護師を派遣した。
4)まび記念病院支援活動 (7月18日〜28日)
倉敷市真備町内の基幹病院である医療法人和陽会まび記念病院は、1階部分がすべて浸水するなど甚大な浸水被害を受けた。地元の方々が一刻も早く医療を受けられるよう病院機能を再開させるべく、吉備医師会、まび記念病院、AMDAの3者が「健診車1台をまび記念病院駐車場に置き診療を再開する」「運営は吉備医師会が主導し他の被災した診療機関の医師も診療可能とする」「保険診療を行う」ことで協力体制を確認。AMDAは岡山県医療推進課、保健所、厚生労働省の許可を得、28日まで一般社団法人瀬戸健康管理研究所より健診車を借り受ける形で保険診療の再開に協力した。この健診車をまび記念病院の付属物とし、18日から3日間の試験的運用を経て診療を開始。この時、AMDAからも医療者及び調整員を派遣した。(同月23日からは吉備医師会とまび記念病院の運営。)
5)救護所での支援活動
(総社市内2カ所: 7月14日〜16日、真備公民館岡田分館: 8月5日〜12日)
総社市・倉敷市社会福祉協議会と協働し、被災者だけでなく、全国から復旧作業のお手伝いに参加したボランティアの方に対しても支援活動を実施。連日35度を超える猛暑の中で作業をされる方々の熱中症や作業中の負傷などに対応すべく、総社市内、倉敷市真備町内に設置された救護所に看護師などを派遣。延べ11日間の活動で77人の患者に対応した。水分補給やこまめな休憩の呼びかけや、スポーツドリンクなどの配布を行い、熱中症予防も行った。
災害の急性期を過ぎたため、真備公民館薗分館以外の緊急支援活動は8月15日をもって終了、薗分館も同月31日に終了した。
今回の活動には、AMDA緊急救援ネットワーク登録メンバーやAMDA災害鍼灸チーム、地元ボランティア他、岡山県、香川県、高知県、徳島県のAMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム協力自治体・医療機関より医療関係者や調整員が、岡山県下の大学・専門学校などからも多くの学生が参加、被災地やAMDA本部で活動した。また、モンゴル人医師2人が医療調整員として参加した。
*西日本豪雨災害活動の経過報告と感謝の集い (中止)
9月30日、本緊急支援活動について関係者、派遣者、その他ご協力いただいた方々にご報告及び「感謝の集い」を岡山県総社市で開催する予定で準備を進め、当日100人以上が出席予定だったが、台風24号の接近に伴い27日に中止を決定。
インドネシア・ロンボク島地震緊急医療支援活動
◇実施場所 インドネシア・ロンボク島
◇実施期間 2018年8月1日〜17日
◇派遣者
菅波茂/医師/AMDAインターナショナル代表
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 AMDA本部、AMDAインドネシア支部
◇受益者数 延べ228人
◇インドネシアからの参加者の声
「病院勤務ではできない非常に貴重な経験ができた。」
◇事業内容
7月29日、インドネシア・ロンボク島を震源とするマグニチュード(M)6.4の地震を受け、AMDAインドネシア支部は8月1日、医師2人、AMSA(アジア医学生連絡協議会)1人を含む医療チームを派遣、センバルン(Sembalun)村に入りニーズ調査の後、被災者に巡回診療を実施したほか、古着を提供するなどの支援を行った。
そして彼らが活動していた同月5日夜、同島でM7.0の地震が発生。発生直後、津波が来るかもしれないという噂で住民が混乱する場面があったが、医療チームは周辺の方々に安心感を与えるような声かけを行った。翌日からはマタラム(Mataram)州の病院へ向かい、同病院の外科手術に麻酔科医として参加、3日間で約30人の手術に携わった。
甚大な被害状況を受け、同支部は2次派遣を決定。手術協力等のニーズを考え、1次チームと交代で麻酔科医3人とAMSA 1人を7日に派遣した。2次チームの一部は病院での手術協力に参加した。麻酔医1人は参加した手術中にM6.2の余震が発生した。周りの職員が病院の外へ避難する中、自身は手術中で患者を一人置いていけない状況で、「病院が無事であるようにと祈るしかなかった。」と語った。そのほか、避難所での診療も実施。妊婦の緊急搬送にかかわり、AMDAチームが救急車に同乗し、無事病院で出産に至ったというケースもあった。
また、16日に菅波茂AMDAインターナショナル代表とアンディ・フスニ・タンラAMDAインドネシア支部長がチームと合流、食料や飲料などを現地自治体に支援した。
今回の地震により死者が460人以上、7,000人以上が負傷した。
インド連邦・ケララ州洪水被災者緊急支援活動
◇実施場所 インド連邦・ケララ州、カルナタカ州
◇実施期間 2018年8月25日〜9月8日
◇派遣者 (派遣順)
岩尾智子/看護師(米国資格)・調整員/AMDA本部職員、松永健太郎/調整員/元AMDA職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDA本部、AMDAインド支部、AMDAネパール支部、チェンガヌールロータリークラブ、セワ・バラティ (Sewa Bharati)
◇受益者数 医療支援:延べ566人、
調理器具・食器配布:198世帯、文具セット:50人
◇受益者の声
「ケララ州のこのあたりでは、『プッティ』と呼ばれる、この地方独特の小さな蒸しパンのような食べ物があるが、それを作る調理器具も洪水で流されたので、当分作れないと思っていた。しかし、AMDAからプッティを作る調理器具も支援してもらえてうれしい。プッティ、食べてみて。」
◇事業内容
8月初旬より降り続いた南西モンスーンによる豪雨により、インド連邦南端のケララ州と近隣州では100年に1度と言われる大規模洪水と地すべりが発生。特にケララ州内全14県が被災、死者が503人、540万人以上が被災した。
AMDAは8月25日から9月8日まで、インド、ネパール、日本のメンバー計11人からなる多国籍医療医師団を結成し、現地協力団体セワ・バラティとともにケララ州アルプザ県とカルナタカ州コダグ県で医療支援を実施。風邪の症状、皮膚の搔痒感、家の片付けによると思われる腰痛が主な症状で、加えてレプトスピラ症の発生がケララ州政府より発表されていたため、予防目的で抗生剤も処方された。
また、現地団体チェンガヌールロータリークラブのご協力の下、事前調査を実施、「洪水によりほとんどの世帯で食器が流された。」という現地情報を基に地元特有の調理器具などを4村198世帯に配布。住民の方々と一緒に支援物資を選んだため、ニーズに合致した物資の調達と配付を行うことができた。加えて高等学校に通う生徒のうち、被災した生徒50人に対して学校カバンとノート5冊を配布した。
この災害で多くの家が1階や2階まで浸水したが、被災者は地元警察や漁師を中心としたチームに救助され、近くの学校、宗教施設、公会堂などに避難することができた。救助活動に参加した漁師は「スマトラの津波に遭ったころは、自分がまだ小学生だったから何もできなかった。ただ、支援を受けたことは理解していた。自分の村でも津波で10人が亡くなるという悲しい思いをしたが、色々な方の支援で復興してきた。今回、自分たちに何かできると分かった時、是非人々を助けたいと思った。」と語った。
北海道胆振(いぶり)東部地震被災者緊急支援活動
◇実施場所 北海道厚真町
◇実施期間 2018年9月7日〜29日
◇派遣者 (派遣順)
大西彰/調整員/AMDA本部職員、三宅孝士/理学療法士・調整員/赤磐市職員(AMDA本部に出向中)、竹内洋二/調整員/AMDA支援農場グループ代表、木口良交/調整員/AMDA支援農場グループ、木口弘之/調整員/AMDA支援農場グループ、坪井勇/調整員/AMDA支援農場グループ、横田晃枝/調整員/AMDA支援農場グループ、山河城春/看護師/AMDA緊急救援ネットワーク登録メンバー、竹内美妃/看護師/AMDA緊急救援ネットワーク登録メンバー、鈴記好博/医療調整員・医師/徳島大学大学院総合診療医学分野、藤田美樹/看護師/AMDA緊急救援ネットワーク登録メンバー
◇受益者数 延べ880人以上
◇派遣者の声
「現地で活動する医療団体や自治体との情報共有、連携の重要性を感じた。自治体職員が疲労困憊する中、AMDAが見回り活動などで避難者の状況をよりよく理解し、関係者に繋げることが大事な活動となった。」
◇事業内容
9月6日未明、北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源とするマグニチュード(M)6.7の地震が発生、北海道で最大震度7を観測した。死者41人、北海道全域が停電し、6,000人弱の方が一時期避難生活を余儀なくされた。
この被害状況を受け、翌日被災者訪問及びニーズ調査のためにAMDA本部より調整員2人を派遣。また、これまでも被災地を「食」の面で支えてきたAMDA支援農場グループが、今回の地震の被災状況を受け、炊き出しチームとして支援者からのお米などを持参し7日夜に岡山を出発、車で9日未明に北海道入りした。甚大な被害を受けた厚真町の避難所の一つである厚真町スポーツセンターにてAMDA調整員2人と合流し、9日夕食から10日夕食まで炊き出しを延べ730人の被災者に提供した。2日目には炊き出しチームと調整員だけでなく避難者も調理に参加、翌日より炊き出しがないことを知ると「明日から私が作ろうかな。」という避難者の前向きな姿を窺うことができた。
その後、避難所対応をする保健師が疲弊している状況を受け、活動終了まで医療調整員1人、看護師3人が避難所となっていた厚真中央小学校にて夜間を中心に、最大150人の避難者の体調管理や見守りを実施した。避難されている方からは、地震発生から時間が経過しても未だに続く余震への恐怖などを訴える人も多かった。また、先祖代々から受け継いだ実家を失い喪失感を感じる高齢の避難者のお話や、家を失った方々がこれから新しい土地で町営の集団住宅に住まうことに不安を抱えているという話なども聞かれた。一方、派遣者たちは、家族を亡くした避難者、上記のような不安を抱えた避難者の話を聞くことにより精神的サポートとなったのでは、と話した。
AMDAは避難所運営を行う北海道庁及び厚真町職員にも落ち着きを取り戻しつつある状況、更に他県からの保健師及び職員も入ってきたことを確認の上、地元の理解をもって9月29日に本活動を終了した。
フィリピン災害被災者に対する支援活動
◇実施場所 フィリピン・ルソン島ベンゲット州、パンガシナン州、セブ島ナガ市
◇実施期間 2018年9月26日〜10月4日
◇派遣者
神倉裕太郎/調整員/AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDA本部、フィリピン大統領府、フィリピン空軍、フィリピン海軍
◇受益者数 延べ1,014世帯
◇受益者の声
・「まだ行方不明者がたくさんいて、まだまだ元の生活には戻れない。金採掘が盛んなこの地域ではあるが、土砂災害のため採掘が禁止されて仕事がなくなった。こんな支援をしてくれたのはAMDAが初めて。ありがとう。」
・「避難所生活がいつまで続くか分からなくて、多くの人が疲れている中、このような支援はありがたい。」
◇事業内容
9月15日に台風22号がフィリピン・ルソン島北部に上陸し、複数の地域で土砂崩れや洪水が発生、88人の死者、50万世帯200万人以上が被災した。その5日後には同国セブ島ナガ市でモンスーンによる豪雨から地すべりが発生、死者は72人、1,500世帯6,000人以上が被災し、当時市内10ヵ所の避難所で避難生活を余儀なくされている人たちもいた。当時フィリピン大統領府官房長官上級秘書であり海軍予備役であるメルカド氏含む複数の現地協力者より協力要請を受け、現地との調整の末、AMDA本部より調整員1人を派遣した。
9月26日夜にフィリピン入りした神倉調整員は翌日、支援活動についてメルカド氏と協議を行い、その後台風による被害の大きいルソン島ベンゲット州で食料及び医薬品支援を実施。支援に入った町の主要産業は鉱業、今回の土砂災害により採掘が禁止され、多くの方が職を失うなど、将来に不安を抱える状況下の中での支援に感謝の声をいただいた。同島パンガシナン州では、地元協力者のご提案により被災した家の修理に使用するための屋根板を支援。屋根が崩れたまま住んでいる家庭もあり、「これで家を修理できる。」と話された。
30日には甚大な地すべり被害に見舞われたセブ島ナガ市等へ移動。避難者がいつ自宅に戻れるかは目処が立っていない状況を受け、食料に加えて石鹸やトイレットペーパーなどの生活物資を配布した。
尚、この支援については物資調達から配布まで、大統領府職員やフィリピン空軍及びフィリピン海軍、地元協力者の協力を得ることで実施することができた。
*備考:2017年11月27日、フィリピンのマラカニアン宮殿にてフィリピン大統領府とAMDAは、フィリピン、日本、または他国における災害時の支援等を始めとする協力協定を締結。今回の活動もこの協力協定のもと実施した。
インドネシア・スラウェシ島地震被災者緊急支援活動
◇実施場所 インドネシア・スラウェシ島パル市
◇実施期間 2018年10月1日〜11月26日
◇派遣者 (派遣順)
米田恭子/看護師・調整員/AMDA緊急救援ネットワーク登録メンバー、岩元祐太/医師/AMDA緊急救援ネットワーク登録メンバー、山秀明/看護師/AMDA緊急救援ネットワーク登録メンバー
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDA本部、AMDAインドネシア支部、ハサヌディン大学、ムスリム大学、NPO法人TMAT、現地協力団体アルテリア
◇受益者数 延べ600人以上
◇受益者の声
「日本から来た医療者に診てもらえて、とても嬉しい。」
◇派遣者の声
「今回のインドネシアと日本の合同医療チームとしての活動にあたり、日本の高い医療の質を現地医療者に共有し、日本のチームも現地の医療者のやり方を参考に、より現地に即した診察・処置を行うなど、お互いの医療・看護技術の共有などが出来、非常に有益な機会にもなった。」
◇事業内容
9月28日に北スラウェシ島ミナハサ半島を中心に10回以上の地震が頻発、そのうち最大の地震はマグニチュード(M)7.4、結果として3メートルの津波が同半島パル市などを襲った。死者は2,256人、行方不明者1,309人、負傷者数4,612人、そして22万人以上の人が避難生活を余儀なくされる事態となった。
AMDAは地震発生直後から、AMDAインドネシア支部と緊急支援活動に向け調整を開始。被災地近くの空港の被害も大きく、航空機の離着陸が制限されていたため、10月1日、同支部より医師2人、調整員として医学生2人が第1次チームとしてパル市に向け船で出発、27時間かけ現地入りし、市内にある病院にて麻酔科医として整形外科手術に参加するなど医療支援を行った。
その後、AMDAも日本から医師1人、看護師2人を派遣することを決定。6日に日本を出発し、翌日にスラウェシ島マカッサル市に到着した3人はインドネシア支部長アンディ・フスニ・タンラ医師と協議を行った。その結果、看護師1人は同支部で調整、他2人は同日パル市に移動、AMDAインドネシア支部チームと合流した。合同チームは市内複数の村を訪問しニーズ調査を実施、村全体の建物が倒壊し居住者がいない村、橋が崩落している現場や液状化した村など、改めて地震・津波被害の大きさを目の当たりにした。その後、現地協力団体アルテリアの協力の下、市内にある病院で手術協力をするほか、複数の避難所を回り診療を実施。被災後病院に行けなかった負傷者を見つけ処置を行うことができた。
10日には、更に医師3人、調整員3人から成る第2次チームが浄水器、発電機、医薬品、水、テントなどを車に積み込んでインドネシア支部を出発。第1次チームと合流し、食料や物資の配布、更に避難所キャンプにトイレと調理場を設置するなど多岐にわたる支援を行った。日本からの医療チームは16日に帰国、その後AMDAインドネシア支部チームも被災地での悪天候などにより活動を中止した。
しかしながら、AMDAインドネシア支部は被災者のPTSD(心的外傷後ストレス障害)を危惧し、11月22日よりAMDAインドネシア支部長を始めとする第3次チーム13人を派遣、被災地内の学校やモスクなどで心のケアを中心に活動を行った。
尚、今回はNPO法人TMATと、2017年ハイチ・ハリケーン被災者緊急医療支援に続き、2度目となる合同医療支援活動を実施。TMATからの医療チームは10月4日に現地で現地医師及びAMDAチームと合流、負傷者の診療補助など医療支援活動を実施した。
ハイチ地震被災者支援活動
◇実施場所 ハイチ・グロスモーン
◇実施期間 2018年10月12日〜13日
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDAハイチ支部
◇受益者数 延べ200人
◇事業内容
現地時間10月6日午前8時11分、ハイチ北西部沖を震源とするマグニチュード(M)5.9の地震が発生。死者17人、427人が負傷した。また、7,783世帯の家屋が全壊あるいは一部損壊するなど被害も甚大であった。
AMDA本部は地震発生後からAMDAハイチ支部と連絡を取り情報収集と協議を行っていた。12日、同支部よりマック・ケビン・フレドリック支部長を含む7人が被害の大きかったグロスモーン(Gros Morne)に向け出発、翌日にはグロスモーン地域管理局と面会のうえ、被災者の方々200人に水や牛乳、パスタなどの食料品とおむつや生理用品、そして医薬品を配布した。今回の支援物資を喜んで受け取られていたが、被災者の中には、家が損壊してしまい夜は道路で睡眠をとっている人、毎日食べ物を手に入れることができず食料不足に悩む人なども見られた。
チームは同日、被災地内の病院を訪問し、多くの被災者は近隣の病院に既に搬送されたことを確認した。
スリランカ洪水被災者緊急支援活動
◇実施場所 スリランカ・キリノッチ県、ジャフナ県
◇実施期間 2018年12月24日〜2019年1月6日
◇派遣者
山秀明/看護師/AMDA緊急救援ネットワーク登録メンバー
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDA本部、AMDAスリランカ支部、セント・ジョン救急サービス (St. John Ambulance Sri Lanka)
◇受益者数 延べ615人
◇派遣者の声
「活動したキリノッチ県は、AMDA平和構築プログラムと関係のある地域で、1983年から26年間のスリランカ内戦により負傷した方もいる中で被災され、身体的、心理的にもダメージが大きいなど、事前の情報があったため、被災者へのケアにつながったことが良かった。」
◇事業内容
発達した低気圧の影響で12月19日から降り続いた大雨により、同月21日から22日にかけてスリランカ北部州にある5県で洪水が発生。死者2人、被災者は約12万人に上り、最大39か所の避難所に、多い時で約1万人が避難した。
24日にはAMDAスリランカ支部は洪水が発生した北部州のキリノッチに、協力団体であるセント・ジョン救急サービスとの第1次合同チームを派遣し情報収集を開始。現地の避難所を回り、ビスケットやインスタント麺、水などの食料や床用マットの物資を配布したほか、医療支援を行った。
また、AMDA本部も同支部より要請を受け、27日、日本から看護師1人を現地に派遣した。セント・ジョン救急サービスと第2次チームとしてキリノッチ県に入り、第1次チームのニーズ調査情報をもとに購入した蚊帳、靴、学用品、救急箱などの支援物資を配布した。この時、靴などはサイズと必要数量など、学用品も必要なものを授業開始日の前日までに揃えるなど、具体的なニーズを把握した上で必要な子どもたちに配布できたことにこの時派遣した山看護師は感銘を受けた。
1月2日からは、AMDA単独で地元保健所と協力して被災者健康相談などの支援活動を継続。更に5日には、同じく洪水被害のあったジャフナ県に移動し、一緒に活動を行ったセント・ジョン救急サービスのジャフナ支部や同県内にある孤児院を訪問、救急箱や学用品を配布した。
山看護師は帰国後、「死者数が2人だったことは、洪水発生直後から、スリランカ政府が住民を避難させ、避難後に徐々にダムの水を放水していったことなど洪水対応が的確だったためだと思う。病院も、洪水直後より巡回診療を開始するなど組織的な活動を実施し、普段から避難訓練を行うなど市民レベルでの意識の高さ、支援者・被災者間の距離の近さによるニーズ把握の正確さを感じた。」と感想を述べた。
インドネシア津波被災者緊急支援活動
◇実施場所 インドネシア・ジャワ島バンテン州
◇実施期間 2018年12月24日〜2019年1月2日
◇派遣者
神倉裕太郎/調整員/AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDA本部、AMDAインドネシア支部
◇受益者数 延べ1,084人 (医療支援: 89人、物資支援: 995人)
◇受益者の声
「かかりつけのクリニックが津波により被災、休診して困っていたが、今回診療してもらい非常に助かった。村まで来てくれて嬉しい。」
◇事業内容
12月22日にインドネシアのジャワ島及びスマトラ島にて津波が起き、400人以上が亡くなり、9,000人以上が負傷、16,000もの人たちが避難生活を余儀なくされる事態となった。この甚大な被害を鑑み、AMDAは緊急支援活動を開始。まず24日にはAMDAインドネシア支部から医師2人、看護師1人、医学生1人から成る医療チームを、津波被害の大きいジャワ島バンテン州に派遣、特に甚大な被害を受けた村々でニーズ調査を実施し、医師による健康診断及び食料支援を開始した。
同時にAMDA本部からも調整員1人の派遣を決定、26日に神倉調整員は日本を出発し、翌日被災地で活動するAMDAインドネシア支部チームと合流した。合流後は同州パンデグラン県に置かれていたバンテン州防災局の災害対策本部及びパンデグラン県の保健局を訪ね、地元自治体により必要な支援が行き届いていることを確認した。AMDAチームは同県の医療支援を統括する保健局の医療チームとして登録の上、海沿いの地域を中心に巡回診療を実施。この活動の中で、津波で流れてきたであろう瓦礫などで足を怪我されている方や高齢の方、かかりつけの病院が休診しているなどの理由からクリニックに行くのが困難な方々を診察、治療することができた。更に、深刻な疾患の疑いをもつ子どもを見つけ出し、近くの小児科のあるクリニックを紹介することもできた。
また、津波被害を直接受けなかった地域でも、日本でいうシャッター街のように商店がほとんど閉まっていて食べ物が手に入りにくい状況であったため、パンなどの食料や、蚊帳やオムツなどの生活物資も支援をした。
1日に被災地での活動を終え、チームは翌日AMDAインドネシア支部があるマカッサルに戻った。その後帰国した神倉調整員は、「支援中は笑顔で被災者に接し、子どもも笑えば親も笑い、被災者全体の気持ちも明るくなることに気付いた。」と心のケアの重要性も併せて報告した。