おかやま国際塾−モンゴル研修(2011/10発行ジャーナル10月秋号掲載) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

おかやま国際塾−モンゴル研修(2011/10発行ジャーナル10月秋号掲載)

おかやま国際塾−モンゴル研修

研修の概要

 


孤児院の歯科教育支援

ハラ川清掃

第1回「おかやま国際塾」は、県内の大学生にAMDAが提唱する「市民参加型人道支援外交」に基づいた国際貢献活動の企画、立案および実施のすべてに関わる機会を提供することによって、社会のグローバル化に対応できる人材を養成することを目的としています。パイロット事業として開始した今年は、9名(1名:国内研修のみ参加)の塾生を迎い入れ、7回の事前研修および8日間のモンゴル研修を実施しました(修了式:11月5日)。

事前研修では、4つの講義を受講(市民参加型人道支援外交実践論、国連法、NGO論、モンゴル医療支援)したうえで、塾生たち自身でホームステイ先の確保(AMSAモンゴルと直接交渉)、現地で行うプレゼンテーションの準備、モンゴルの歴史および文化の調査、サマーキャンプにおける子どもたちとの交流プログラムの立案などを行いました。

フィールド研修では、塾生たちはモンゴルの学生および現地の方々とすべての時間を共に過ごしました。塾生各々が積極的にモンゴルの学生と交流を図ることによって、文化の違いおよび学生としてできる国際貢献活動の役割について改めて考えたようでした。

【参加学生】
岡山大学:法学部5名、医学部2名、歯学部1名
川崎医療福祉大学:医療福祉学部1名(国内研修のみ)

【随行者】
AMDA:菅波茂代表、職員/難波妙、大政朋子
現地受け入れ:AMDAモンゴル支部、AMSA*モンゴル

*注:AMSA:アジア医学連絡協議会

月日 プログラム
8/23(火) 関西空港発
AMSAモンゴル学生との打ち合わせ(ウランバートル)
8/24(水) 駐モンゴル日本大使表敬訪問
AMSAモンゴルの学生と文化交流
孤児院にて歯科支援
8/25(木) Health Science University in Mongoliaにおいて
菅波奨学金授与式 学生間交流、東日本大震災活動報告(プレゼンテーション)
めがねの無料支援をうけた子どもの検診を見学
8/26(金) ASMPプロジェクト−ガンダン寺で慰霊祭
ハルハ川戦争従軍者(白内障手術をうけた患者)との交流
ロシアとの国境にある子ども支援施設のサマーキャンプに向けて出発
8/27(土) 子どもとの交流、健康診断、ハラ川清掃などのボランティア活動
遊牧民族のゲル訪問
8/28(日) 子どもたちおよび現地の方と交流後、ウランバートルへ
ゲルキャンプ「天の川」へ
8/29(月) 遊牧民族のゲル訪問および交流、乗馬体験
AMSAモンゴル学生とさよならパーティー(ウランバートル)
8/30(火) チンギスハン空港発

第1回『おかやま国際塾』モンゴルでの研修を終えて

岡山大学法学部3回生 東 青葉(報告書より抜粋)


筆者 右端

東日本大震災の報告 健康科学大学にて

今回私は第1回の『おかやま国際塾』の塾生として、モンゴルでの研修に参加しましたが、第1回ということもあり、なにもかもが1からのスタートでしたので大きな不安もありました。準備の段階では、塾生が様々な学部の様々な学年から集まっていたこともあり、打ち合わせの日程の調整に苦労しました。

また、英語のプレゼンの準備が直前になってばたばたしてしまったことも反省点です。早いうちからすることがわかっていて、資料集めなどをしようと話はしていたものの、それぞれの分担部分を全部1つにくっつけて練習するのが出発直前になってしまいました。

モンゴルで日本の大使がおっしゃっていたように、何事も敏速に行動することの重要性を非常に感じました。連絡についても、大使は「今日きた連絡については必ず今日中に返事をする。明日になったらもう意味がない。」と言われていましたが、まさにその通りで、たった1つの連絡事項でも共有する人数が多ければ多いほど全員が瞬時に反応して返信をしないと前へ進まないということが今回の研修では身にしみてわかりました。

今回のモンゴルでの研修を通して得られたことはたくさんありますが、特に強く感じたことは3つあります。

1つめは世界は広いということです。地理的な意味だけでなく、世界には自分の知らないことが山ほどあって、知らない風景、人々、文化があることを感じました。当然と言えば当然なのですが、たった飛行機で4時間離れた国には聞いたことのない言語を話す人々がいて、見たことのない風景や自然があって、味わったことのない食べ物があり、感じたことのない空間・家があり、どれもどれもが新鮮でした。この感覚は実際に五感で感じた人にしかわからないものだと思いましたし、だからこそもっと世界が知りたい、行ったことのない国へ、会ったことのない人々のもとへ、見たことのない自然の場所へ、大袈裟と思われるかもしれませんが、世界中全ての国へ行ってみたいと強く思いました。モンゴルの草原で星を眺めながらいろんなことを考えていると、なぜか涙が止まりませんでした。たくさんのことを考えて、感じて、そうやって人間は豊かになっていくのではないかと思います。自分という人間を豊かにしていくためには、知らない世界を知ること、感じることが私には必要だと感じました。

2つめは日本人は甘いということです。今回の研修の目的とは少し異なるかもしれませんが、AMSAモンゴルの学生、またモンゴルの子供たちと交流をして、自分たちがいかに子供かを思い知らされました。AMSAモンゴルの学生は私たちより年下の学生が多かったにも関わらず、どの子もとてもしっかりしていました。もちろん仕事をこなしたり、私たちをもてなしてくれたりといった面でも本当にすごいと思いましたが、何よりみんなの堂々とした態度が印象的でした。日本では学生は社会人より甘くみてもらえる、学生だから許されるというのが世間の考え方ですが、モンゴルの学生は例えばオユンナ先生に対しても、学生対社会人(大人)ではなく、1人の人対人として精神的に対等な関係にいるように感じました。まだ学生だからできない、学生だからわからないではなく、1人1人が自分の意思と責任を持って自立していると強く思いました。それは孤児院やサマーキャンプに行って出会った子供たちも同じでした。無邪気でかわいいのは日本の子供たちと変わりありませんでしたが、どの子からも“自分のことは自分でする”という姿勢が感じられました。育て方の違いは貧富の違いによっても起こることなのかもしれませんが、日本人は良く言えば大切に育てられているが、悪く言えば甘やかされすぎている、おだてられすぎているのではないかと思いました。モンゴルの子供たち、学生の生きる姿勢には見習うべき点が多くありました。

そして3つめに国際貢献についていえば、今回の研修でAMDAさんの活動を間近で見て、またその精神やネットワークなどを知って、改めてこういった国際的な支援、また互いに助け合うネットワークの大切さを感じましたし、実際にモンゴルに行って奨学金の授与式、またAMDA菅波奨学金から奨学金を授与された方が今度は自らが奨学金を出すという場に立ち会えて、本当に支援する気持ちの輪がつながって広がっていっていることを実感できました。政府や政府機関などの国のトップにお金が入り結局は下位の国民の人にまで行き届かない支援ではなく、人の生活する現場で迅速に柔軟に活動ができるのはNGOなどの非政府組織でこそであって、非常に重要な役目を果たしている、なくてはならないアクターだと思いました。しかし、私個人についていえば正直まだ第三者として見ていることしかできません。国際貢献の必要性もやりたいという気持ちもありますし、また具体的にどんなことができるのかも少しずつわかってきました。しかし、今は日々の自分の毎日を過ごすことが精一杯で、しょうもないことで悩んで乗り越えての繰り返しの毎日です。世界に目を向けて自ら行動していきたい理想はありますが、まだ実現できる能力も余裕もありません。それでも関心を持って世界を知ろうとする姿勢を続けていくこと、たとえ頭の中だけであっても考えて悩んで、こうしたい、こうなればいいのにと思うことに意味はあると信じていますので、日々の自分の毎日を精一杯生きる傍らでいつも世界に目を向けて知ろうとする貪欲さは持ち続けていたいと思っています。

約1カ月の国内研修とモンゴルでの1週間の研修は自分にとって非常に有意義で貴重な経験となりました。この経験を「よかった」で終わらさず、今後につなげていきたいと思います。AMDAのみなさんをはじめ、今回の研修に関わっていただいた多くの方々に感謝しています。本当にありがとうございました。