2008年度年次報告 緊急支援活動
ミャンマー・サイクロン被害に対する緊急支援活動
外国のNGOとして初めて日本人医療スタッフも加わり診療 |
活動国・地域:ミャンマー連邦ヤンゴン管区クンジャンゴン市
期間:2008年5月5日から6月16日
2008年5月2日から3日にかけて、大型サイクロン「ナーギス」がミャンマー連邦南部を通過しました。ミャンマー政府によると、死者84、537人、行方不明者53、836人、被災者全体の数は240万人に上る大きな被害となりました。AMDAは、被害の大きさに加え、1995年から同国にて保健・医療活動を継続していることから、直ちに支援活動を開始しました。
活動は、同国で保健医療活動を実施しているグループ団体、AMDA社会開発機構が中心となり、地域住民と協働しながら実施。ミャンマー政府保健省、クンジャンゴン市保健局との協議の後、甚大な被害を受けたクンジャンゴン市(ヤンゴンから約70キロ南に位置)で活動することに決定しました。地域住民と協働する形で実施する巡回診療、感染症予防を目的とした石鹸・水フィルター・浄化剤などの衛生用品配布と保健衛生教育、調理器具や衣服などの生活支援物資の配布、クンジャンゴン市総合病院への医療消耗品の供与を実施しました。
巡回診療には、海外NGOとして初となる日本からの派遣医療チームも参加しました。活動結果として、クンジャンゴン市の人口の約3分の1に診療機会を提供し、6、110人を診療、115人の児童への検診も実施しました。その他、約6、000人に感染症予防教育を実施し、同時に石けんも配布しました。約300人には水フィルター・浄水剤を、家財一式を失った50世帯には鍋やお皿などの生活用品セットを配布しました。
<稗益者の声>
「日本のお医者さんと話せてよかった。この村で何かあったのかを知ってもらえてよかった」(診療を受けた高齢の被災者より)
<派達者の声>
「私は今まで、本当に困っている人に出会えていなかったのではないか、と思います。彼ら(サイクロン被災者)にこそ、救援の手は差し伸べられるべきだと思います。わずかではありますが、差し伸べる手になり得たこと…非常に感謝しています」(岡山大学医療教育統合開発センター医学教育部門助教/岡山大学病院救急科 寺戸医師より)
<派遣者・参加者>
医師:
細村幹夫(埼玉県・医療法人康麗会 越谷誠和病院)、
寺戸通久(岡山大学医療教育統合開発センター助教/岡山大学病院救急科)、
スェスェ・タン(岡山大学医歯薬総合研究科生物科学講座博士課程)
看護師:
小堀他淳子(医療法人アスカ会)
調整員:
谷口敬一郎(本部職員)
事業責任者:
鈴木俊介(AMDA社会開発機構理事長/AMDA理事)
事業統括:
竹久佳恵(AMDA社会開発機構)
調整員:
畑山ゆかり(AMDA社会開発機構)
AMDAミャンマー(20人)、ミャンマー保健省(3人)、クンジャンゴン市保健局チーム(5人)
<協力機関>
ミャンマー政府保健省、世界保健機関、岡山大学他
中国四川省地震被害に対する緊急医療支援活動
岡山大学汪達紘医師は 被災者の心理カウンセリングに従事 |
活動国・地域:中華人民共和国四川省徳陽市、綿陽市、成都市他
期間:2008年5月12日〜6月30日、2008年8月23日〜年10月23日
2008年5月12日、中国四川省の中心都市、成都の西北西90キロに位置するブンセン県付近でマグニチュード8.0の地震が発生しました。国連人道問題調整事務所によると、5月30日時点で死者68、858人、負傷者366、596人、行方不明者18、618人の甚大な被害が発生しました。
AMDAは、5月12日被災情報収集後、同月14日から6月30日まで、台湾支部を中心とした医療チーム(医療職27人、調整員他8人)を派遣し、被災者への診療、医薬品の配布、心理カウンセラーの養成を行いました。活動中診察した患者数は、2、418人。心理療法に関する活動に参加したのは、452人でした。
8月23日から27日は四川省綿陽市で被災者への健康診断を実施。家族を失った子どもや家屋損壊のため親戚宅での生活を強いられている人への診療も行いました。9月1日から9月8日には、地震の復興支援として、また、8月30日に発生した地震(四川省攀枝花市)の緊急救援として、血圧計と血糖値測定器各170式を12の医療施設に供与しました。
<協力団体からの声>
「今回初めてAMDAの救援チームと一緒に活動を行い、良い経験となりました。四川省の被災者救援のために遠くから来られた皆様に心から感謝します。これからもお互いの交流が深まることを期待しています」(四川省中西医結合医院 王副院長・総合外科 宗主任より)
<派遣者・参加者>
医師:汪達紘(岡山大学大学院医歯薬総合研究科公衆衛生学分野助教)
調整員:ニティアン・ヴィーラバグ(本部職員)
医師・看護師・調整員他31人
<協力機関>
四川大学華西病院、四川省中医薬科学院、四川省中西医結合医院、岡山大学、日中青年交流協会他
ネパール・インド洪水緊急医療支援活動
被災者が避難生活をおくるキャンプでの診療 |
活動国・地域:ネパール連邦民主共和国スンサリ郡他、
インド共和国ビハール州
期間:2008年8月21日〜10月1日
2008年8月18日、モンスーンの長雨により、ネパール・コシ川のダムが決壊しました。下流に位置するネパール・スンサリ郡/サプタリ郡及びインド・ビハール州で大洪水が発生しました。インド政府の発表によると、ビハール州では9月17日までに死者208人、484万人以上が避難生活を余儀なくされる被害が発生しました。一方、ネパールでは、10月3日までに7万人が被災しました。
インド・ビハール州の被災者に対して、AMDAは、9月10日から21日まで多国籍医師団(インド支部7人、ネパール支部2人、岡山本部1人)を派遣し、保健所での診療と、避難所16ヵ所で巡回診療を行いました。道路や橋の崩壊、移動車両の故障などにより支援活動に支障がでるなか、2、578人の被災者を診療しました。主な症例は、呼吸器疾患、下痢、筋肉痛でした。
ネパール・スンサリ郡の被災者に対しては、ネパール支部が、8月21日から9月16日まで避難キャンプに仮設診療所を開設し、支部から派遣された延べ36人の医療スタッフが1、813人の患者を診療しました。主な症例は、急性咽頭炎、発熱、下痢・赤痢、気管支炎、寄生虫感染でした。また、カイラリ郡の被災者に対しては、9月26日から10月1日までネパール支部の医療スタッフ6人が巡回診療を実施し、1、034人を診療しました。
<派適者の声>
「ビハール州で過ごした10日間、人びとを癒し、患者と気持ちを分かち合いました。大変痛ましい人生がそこにありました。」(AMDAネパール支部ラジェンドラ内科医より)
<派遣者> 調整員:藤本明子(本部職員)
インド支部(7人)・ネパール支部(38人)
<協力機関> インド・マニパール・カスツルバ医科大学他
ホンジュラス洪水被害に対する緊急支援活動
被災者の血圧を測る渡辺事業統括/看護師 |
活動国・地域:ホンジュラス共和国エルパライソ県
期間:2008年10月27日〜29日
2008年10月16日、熱帯低気圧16号がホンジュラス北部に上陸し、豪雨による河川の氾濫、洪水、土砂崩れによる被害が発生しました。ホンジュラス緊急事態対処常設委員会は、10月24日時点で、死者30人、避難者5万5千人、被災者67万6千人と被害状況を発表しました。
AMDAは、10月24日、同国で社会開発事業を実施し、首都テグシガルパに事務所を置くグループ団体、AMDA社会開発機構の渡辺事業統括を調査のため派遣しました。調査を実施したダンリ市では、死者3人、2、300人以上が被災し、679人が避難生活を送っていました。
保健省エルパライソ県保健地域事務所の要請により、AMDAの緊急医療支援チームは、10月27日から29日の3日間、同県ダンリ市内の被災地で巡回診療を行いました。27日はビジャ・リカ村の公民館で161人、28日はラ・リマ・デ・エスクァパ村の小学校で143人を診療しました。29日には、オホ・デ・アグア・マタサノ村で家庭訪問を実施し、51人を診療しました。3日間の診療患者数は355人で、主な疾患は、寄生虫症、急性呼吸器感染症、貧血でした。診療に加えて、巡回診療用に購入した医薬品在庫をエルパライソ県保健事務所とアクセス不可能なトロヘス市緊急事態対処常設委員会へ供与しました。
<協力機関からの声>
「緊急事態の発生により、地方行政、軍隊、保健省、市民団体が協力体制をとり、事態の把握、災害復興へ取り組んでいる中、AMDAが迅速に医療活動を開始したことに対し感謝いたします。」(エルパライソ県保健地域事務所カルミンダ・ソサ医師より)
<活動参加者>
事業統括/看護師:渡辺咲子(AMDA社会開発機構)
医師・看護師他11人
<協力機関>
保健省エルパライソ県保健地域事務所
パキスタン西部地震被害に対する緊急支援活動
アフガニスタン・カンダハルでの巡回診療 |
活動国・地城:パキスタン・イスラム共和国バロチスタン州、
アフガニスタン・イスラム共和国カンダハル州
期間:2008年11月9日〜12日、11月22日〜12月3日
2008年10月29日早朝、パキスタン・イスラム共和国西部バロチスタン州でマグニチュード6.4の地震が発生し、パキスタン政府によると、11月7日時点で死者166人、負傷者370人の被害が発生しました。
AMDAは、パキスタンの被災者支援として、パキスタン支部から外科医4人を中心とする医療チームを、被害の大きかったジアラット地区に派遣しました。チームは、11月9日から12日まで滞在し、地元当局によって設置された避難所内のテントクリニックで約75人の患者を診療しました。災害後に顕著な、鬱や興奮、不眠の症状が多くみられました。また、医薬品を地元保健局に寄贈しました。
アフガニスタンの被災者に対しては、アフガニスタン支部の医療チームを、11月22日から12月3日まで派遣し、パキスタンとの国境沿いに位置するアフガニスタンカンダハル州で巡回診療を実施しました。6日間に、392人(男性147人・女性245人)を診療しました。主な疾患は、感冒、急性呼吸器疾患、下部尿路感染症、下痢でした。
<派遣者>
調整員 ニティアン・ヴィーラバグ(本部職員)
パキスタン支部
アフガニスタン支部
<協力機関>
パキスタン・バカイ医科大学病院、アフガニスタン・アフガン保健・開発サービス(AHDS)他