2020年3月末から7月末にかけて、AMDAインドネシア支部は現地のボランティアと協力し、マカッサルにあるサヤンブンダ総合病院において、新型コロナウィルスへの対応を行う救急部門を立ち上げ、対応に当たりました。この取り組みが地域コミュニティーの一助となるよう、病院の訪問者に対してスクリーニングを行うなどして、感染の蔓延防止に努めました。
活動の柱となったのは、いわゆる「プレホスピタルケア」とよばれるコンセプトです。日本語で、「病院前救護」と訳されますが、これは病院外での救急活動のことを指します。日本では、病院の外で重篤な病気を発症したり、ケガをしたりした患者を、救急救命士や医師、看護師などから成るチームが病院まで搬送することを指しますが、今回のインドネシアのケースでは、そのような側面に加えて、移動診療や移動PCR検査、病院の建物の外での対応など、広域的な意味での”病院前救護”を行った形となります。
2020年に世界を襲った新型コロナウィルスは、インドネシアにも波及。パンデミック発生当初、ジョコ・ウィドド大統領は、感染者の早期発見を目的として、大規模な感染検査を即刻行うよう命じました。その目的はいわずもがなインドネシア国内における個人間の感染リスクを抑えることでした。
病院の門に設置された減菌チャンバー
受付の様子
活動目的:
1. リファーされる患者数の増加を抑える
2. コロナ患者ではない一般患者へのサービスに専念できるよう、コロナ対応で増大する一次医療施設の負担を軽減
3. 今回立ち上げたコロナ専門の救急部門にコロナ患者を集約。一般患者とコロナ患者を混ざらないようにすることで、接触感染のリスクを減らす
4. 予防や治療、リハビリまで含む包括的なプレホスピタルケアサービスを提供
5. マカッサルの病院と地方自治体との間で共有される情報やデータの分析を簡素化
即日抗体検査の様子1
即日抗体検査の様子2
屋外テントでの感染予防指導
具体的な活動内容:
具体的な取り組みとして、同救急部門では以下のような対応を行いました。
1. 滅菌チャンバーの設置
2. 患者登録
3. 診察室と距離をあけて配置された待合室
4. 新型コロナウィルスについての知識の流布、および手洗い指導
5. 相談医および専門医が常駐
6. 血液検査、抗体検査、放射線診断、薬局サービス
7. 14日間の患者モニタリングサービス
8. 救急車の出動
9. 南スラウェシ州政府へのデータ入力業務
10. 移動スワブPCR検査と移動診療
放射線検査の様子
相談医や専門医による診察
14日間の患者モニタリングでは、スタッフが綿密なケアを提供
【2008年に日本より寄付された救急車について】
移動スワブPCR検査と
移動診療の様子
尚、移動診療および移動PCR検査に利用されている救急車は2008年に岡山大学の協力によりAMDAインドネシア支部へと寄付されたものです。当時岡山大学の学長としてご尽力頂いた現・中国学園大学の千葉喬三先生より頂戴したコメントを以下に掲載します。
千葉喬三先生
「AMDAのレポートに掲載されている救急車の記事を拝見しました。救急車寄贈という異色のプロジェクトに、岡山大学が関わらせて頂いたことに、当時(2008年)の学長として感慨を覚えています。人類がコロナウイルスとの対決に勝利する為、従前にも増して、国・民族等の属性を越えた連携が求められる今日、力づけられる記事です。同時に、AMDAが早くからこのような先進的な活動をされてきたことに改めて敬意を表する次第です。」
受益者数:
今回の活動が行われた2020年3月25日から7月30日までの約4ヶ月間、1,824名の方に診察・治療を行いました。患者の統計をグラフ化した場合、以下のような内訳となりました。