AMDAは、インドの中でも貧困率の高いビハール州ブッダガヤで母子保健事業を継続的に行っています。そのブッダガヤ周辺にはいくつもの村があり、失業率が高く、たとえ職があっても日雇い労働のため収入が安定しないので、皆、厳しい経済状況の中で生活しています。
昨年2018年10月、ブッダガヤの中心部から約6km離れたブッダガヤ地区マティヤニ(Mathiyani)村ダンプール(Danpur)では乾季になると、村にある公共の井戸水が枯れて、周辺の村まで井戸水を汲みに行かなければならず困っているという情報を、ブッダガヤ地区で学校を運営する団体「エコレス・デ・ラ・テレ」の事務局長であるラジェッシュ氏から伺いました。この村は、AMDA関連団体である日本インド友好医療センター信託財団がある場所から一番近い村です。
11月にラジェッシュ氏、AMDAピースクリニック元職員で、新たに「ヴェーダ・マザーテレサ・福祉信託財団」を立ち上げたヴェーダ氏、AMDA菅波代表と一緒にダンプールを訪れると、乳牛として飼っている牛数匹が木に繋がれており、煉瓦や土壁でできた1階建ての小さな家々が10数軒立ち並んでいて、村周辺には田畑が広がっていました。既に集まっていた村人たちに話を伺うと、多くは土地を所有していないため、小作料(収穫量の半分)を支払って地主から土地を借りて耕作をしたり、建設業などの日雇い労働をして生計を立てていることが分かりました。洗濯、食器洗い、シャワー(水浴)、飲料水などに使用する井戸水は欠かせませんが、生活に余裕がないため村人自身で新たな井戸を建設することが難しい状況でした。
村の田畑
村訪問
ダンプールに住む村人から井戸建設の要望を受け、AMDAが推進する世界平和パートナーシップ(Global Partnership for Sustainable Peace: GPSP)*における生活向上事業として井戸建設支援を決定。井戸の建設予定地は、使用済の水を排水できるよう、川沿いに決まりました。使用した生活用水が水溜まりになれば、マラリアやデング熱など蚊媒介感染症の発生源になりかねないためです。ラジェッシュ氏とヴェーダ氏の運営する現地団体と協力して井戸建設を進めることになりました。この井戸は、ダンプールに住む25世帯135人の他、周辺の村人も使用する可能性があります。
村の人との話し合い
村の人々の集まり
井戸の建設にあたり、どのように維持管理していくかについても話し合った結果、村のリーダーを中心に村人が井戸の管理維持をしていくことを確認しました。今回建設する井戸は、生活用水、農業用水どちらにも使用できます。生活用水は無料で提供し、農業用水に関しては、収穫した作物を売って収入を得ることもできるため、井戸水の使用料を徴収して、村のリーダーが管理することになりました。修繕が必要になった際の費用はあらかじめ徴収した使用料で賄っていく持続性のある支援です。
代表して村のリーダーであるイスワル・マンジ氏は、「10年前には乾季でも十分な水位があった井戸も、現在では雨季に十分な雨量がないため、乾季には井戸が枯れてしまいます。飲料水の確保でさえ、問題になることがあるのです。そのような中、新たな井戸建設の話があり、私を含め村人はとても喜んでいます。ご支援いただき、ありがとうございます。」と話しました。
村のリーダー
井戸の建設予定地
「インドの恵まれない人達にきれいな水を届けたい」という気持ちから、インドでの井戸建設支援を申し出てくださった株式会社 新通故会長ご令室 樋口様、同様の気持ちで樋口様をご紹介いただき、継続的に調整してくださっている株式会社 新通エスピー青山隆一様に感謝申し上げます。
*GPSPとは、「開かれた相互扶助」のコンセプトの下、多様性の共存、即ち世界平和を目標に、4分野(平和構築、健康支援、教育、生活向上)の事業が集まったプラットフォーム。