「相互扶助モデル地区」inブッダガヤ – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

「相互扶助モデル地区」inブッダガヤ


先月10日、インドのビハール州ブッダガヤ。多くの貧しい妊産婦が受診しているAMDAピースクリニックが設置されたシュリプール村を訪問し、「相互扶助モデル地区」としての支援を決定した。カースト制度の最下層とされた部族。114世帯2000人。男性の職業は日雇い、女性は零細農業。栄養失調で頬が欠けた女性は歯が出ているように見える。政府が貧困改善に提供した耕作用地は水利施設がないため未使用のままだ。

「30万円あれば、水利ポンプと村人の寺院のどちらを優先するか」の問いに小さくても寺院との答え。更に私が感動した事例がある。ピースクリニックに勤務していた45歳の女性、ベーダ氏がアーユルベーダ治療のマッサージを生かして独立。並行してボランティアとして身寄りのない15〜20人のお年寄りの面倒をみている。「たくましいベーダ」の敬称のもとに多様な人たちに協力を要請。その行動には鬼子母神的な迫力がある。

その手づくりの施設が昨年、洪水で崩壊した。新たな施設建設の場所として3エーカーの土地をこの貧しい村が喜んで提供した。なお、ベーダ氏は100人の老人と100人の子どもによる「相互扶助」複合施設の設立を夢見て猛ばく進中だ。

ビハール州の社会福祉政策も貧弱そのもの。ただし、直感的に、この村には村ぐるみの住民行動ができる団結力があると判断した。

AMDA-シュリプール村プライマリヘルスケア推進3カ年計画を決定。村人の団結力の象徴としての寺院建立、貧困脱却として水利施設の整備による稲作や野菜作りの拡大、乳牛飼育による牛乳の販売収入、アーユルベーダ薬草園による収入、養鶏による動物性たんぱく質の摂取。ベーダ氏の悲願である、「相互扶助」複合施設設立支援。ピースクリニックによる母と子の健康教育等である。

プライマリヘルスケアは「貧困における健康増進」で、3原則は?住民参加?知識の普及?経済的社会的要因の改善――である。いくら知識の普及をしても食べられなければ意味がない。食べるための貧困脱却。経済的社会的要因の改善策として資本を提供する小規模融資が1998年から世界基準として普及している。インド政府も必要な法律を制定しているが、絶対的貧困層までにその恩恵がなかなか届かない現状がある。

先月14日。AMDAとマガダ大学ガヤカレッジとのMOUを検討。内容はコミュニティ健康教育と日本語教育の普及である。ガヤカレッジは44年設立。生徒数は約2万人。イスラム学長は教育向上に燃える53歳。ガヤ地域貧困層支援にも力を入れる。5年前に岡山を訪れている。なお、マガダ大学は学生数が50万人の権威ある国立大学である。

全ては岡山にある宗教法人太生山一心寺(中島妙江住職)の女性信徒様の2000万円のご寄付から始まった。「アジアの人たちの命を救ってください」と。仏教の聖地であるブッダガヤ中心地域では仏教寺院付属医療機関しか認められず、四苦八苦してブッダガヤ一心寺分院付属のピースクリニックとして誕生。中島妙江上人の今なお続くご理解とご尽力にこの紙面を借りて改めて感謝したい。なお、AMDA-シュリプール村3カ年計画は次世代を担うAMSAや多くの学生たちの海外研修の貴重な場としても活用する予定である。皆様方のご理解とご支援をいただければこの上ない喜びである。