2016年3月9日から3日間、フィリピン首都のマニラ郊外にあるDAP(フィリピン開発アカデミー)の研修センターで第1回GPSP(世界平和パートナーシップ)世話人会議(英語名では「カウンシル」となった)が開かれた。GPSPの目的は、「オープン相互扶助」を世界平和に向けて啓蒙普及をする社会運動との大前提のもと、平和構築▽生活支援▽教育支援▽健康増進―の4分野についての活動方針が熱心に討議された。
フィリピン側の参加者はDAP上級副学長であるメルカド氏の貴重な人脈を総動員した、そうそうたる多彩なメンバーだった。大学学長経験者や、軍と警察の高官、国会議員、自治体組長、NGO理事長、医師、小規模融資金融機関経験者、DAPスタッフら。創設者としての私と、実務者としてのメルカド氏が共同理事長に承認された。GPSPカウンシルは3年ごとに任期更新制で、再任可。定例会議は年2回ある。GPSPの事務所はクアランプールに、GPSP事務局機能はマニラのDAP内に設置され、16年はアジア規模で準備を進め、17年から正式に稼働する予定だ。14年11月にAMDA設立30周年祝賀会で発表されたGPSP構想が、いよいよ具現化する時が来た。
平和構築の分野で1998年にAMDAが経験した、すべてのアフガニスタンの子どもたちにワクチン接種を終了するまで戦闘行為を中止する「ワクチン停戦」のために、アフガニスタンからタリバン公共福祉大臣アッバス氏と北部同盟から外務副大臣アブドゥラ氏を岡山に招へいしたプログラムを紹介した。タリバン政権には、パキスタンにいる200万人のアフガン難民帰還のために医療と教育施設の整備を推進することで、北部同盟地域の被災者救援活動で、それぞれ信頼を得ていた。加えて日本政府との連携を説明した。信頼形成こそ平和構築の要だと。
期せずして参加者からは、「ミンダナオ島の平和構築へのチャレンジをすべきだ」「遅れているイスラム教徒地区の医療整備による信頼形成を」「平和構築と健康増進分野だけでなく、宗教者との連携も不可欠」「インドネシア元副大統領のカラ氏がミンダナオ島和平に多大の関心を持っている」といった意見が出た。インドネシア側とフィリピン側との2ケ国間協力の可能性が浮上し、GPSPの役割の具現化として楽しみである。
健康増進分野では、災害医療拠点のみならず、日常的な情報や技術の交流も行う友好病院ネットワークの拡充することに。貧困地域における健康増進のためのプライマリヘルスケアと巡回診療や、先端医療技術の移転などが方針となった。日本が誇る内視鏡腹腔技術に高い要望があり、心疾患カテーテル手術にも期待が集まる。生活支援分野では、貧困対策としての小規模融資は各国で既に実績があり、有機農業にも将来性がある。教育分野では、GPSPキッズへの教育機会の提供や意欲と能力のある子どもたちへの奨学金設立に加えて、日本人には思いもつかないようなダイナミックな構想が披露された。心配無用、必ず実現させるとのことだった。
94年からの岡山における社会運動で「西のジュネーブ、東の岡山」を掲げ、世界平和に向けて人権と相互扶助の連携に努めてきた。「開かれた相互扶助」を命題とするGPSPネットワークは「西のジュネーブ」に対する「東の岡山」の切り札となるのではないか。GPSPの健康増進分野と「岡山・日本から世界に医療発信」を掲げる仮称「国際医療貢献プラットフォーム」との協力関係の構築にも意義がある。関係者の方々の一層のご理解とご支援をいただければ望外の喜びである。