国際医療貢献と「GPSPバンク」構想 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

国際医療貢献と「GPSPバンク」構想


10月11日、岡山国際交流センター国際会議場で第3回国際医療貢献フォーラムを岡山県と共催で開催した。足羽憲治副知事の挨拶で開始。最初に日本バングラデシュ友好病院 理事長でAMDAバングラデシュ支部長のサーダー・ A・ナイーム医師による「これからの医療協力に求めるもの」と題しての基調講演。続いて「アジアの医療水準の実情とこれからの医療協力にもとめられるもの事例」について医療機関を代表して、岡山大学医学部心臓血管外科教授佐野俊二氏と社会福祉法人旭川荘理事板野美佐子氏が発表。NGOを代表して、私とAMDA社会開発機構理事長鈴木俊介氏が発表。経営の立場から、帝人ナカシマメディカル株式会社代表取締役会長中島義雄氏、IHD協同組合理事長小林眞弘氏そして瀬戸健診管理研究所SHL丸亀健診クリニック院長麻田ヒデミ氏の発表。教育機関を代表して、岡山県立大学保健福祉学部准教授實金栄氏と岡山県立大学特別研究員シュレスタジョシ・アルチャナ氏の発表。休息後に、「求められる医療協力における産学金官連携の可能性」(「金」は金融)と「国際医療貢献フォーラムのプラットフォーム化の提案」について討議が行われた。ナイーム医師、佐藤拓史医師、則安俊昭岡山県保健福祉部医療推進課課長等の真摯なコメント。座長の岡山大学心臓血管外科教授佐野俊二氏の会議の統括コメントに続いてAMDAボランティアセンター長小池彰和氏の閉会の挨拶で終了した。

AMDAは1984年に設立されてから継続して国際医療協力に携わってきた。この30数年間で国内外に大きな変化がある。1)世界の富の東漸によりアジアの国々の経済向上。2)アジアの国々の医療技術の向上と医療体制の拡充。3)アジアの国々は医療技術のみならず高齢化による介護技術も必要。4)有償支援の必要性。5)金融システムの未発達。

アジアの医療技術に関する衝撃的な出来事があった。2015年5月に発生したネパール大地震被災者の救援医療活動に関して、ネパールの医療を支えるトリブバン大学教育病院(実質的な医学部と附属病院)が日米欧からの医療チームの支援の申し出を拒否。350名の骨折患者の手術をネパール人医師たちだけで実施。彼らの中には日本の文部科学省奨学金を受けて博士課程留学した教授陣がたくさんいた。基調講演をしたナイーム医師からも「文科省奨学金で博士号取得後に母国に貢献するのは10%前後。多くは欧米で医師として働く。日本にとっても母国にとっても損失。解決策は帰国後の技術支援の継続と有償資金支援プログラムである」と。彼らが日本で学んだ技術をアジア諸国に移転する時代の到来である。

佐野俊二代表世話人から国際医療貢献フォーラムのプラットフォーム化の提案がされた。目的は、岡山県国際貢献推進条例にもとづいた、行政、NGO/NPO、教育機関,企業そして公益団体等の相互交流と相互協力の具現化。単独の国際医療貢献に加えて複合体としての国際医療貢献の具現化であり、岡山から全国への発信である。更に、今やアジアの医療機関は無償支援に加えて有償支援を必要としている。有償支援の仕組みづくりを金融庁所管のNPOバンクか金融業務を行う営利団体(合同会社あるいは株式会社)のいずれかの法人形態として実現化したい。GPSP(世界平和パートナーシップ)参加団体をパートナーとする「GPSPバンク」構想である。

なお、佐野俊二教授にフィリピンのグシ平和賞が11月25日に授与される予定。ベトナムをはじめとする世界の国々に対する医療貢献の実績への評価である。大いに喜びたい。