AMDA国際医療情報センター
理事長 小林 米幸
新年あけましておめでとうございます。昨年の今頃、外国人医療を取り巻く現在の状況を誰が想像できたでしよう。オリンピックを控え、外国人観光客が激増していることや、メディカル ツーリズムに注目する大規模医療機関が増え、これらの動きをマスコミが取り上げ、日本医師会や政治的解決を求めて政界に訴える動きがめまぐるしくなりました。さらに少子高齢化に伴う労働力の低下に伴い、日本に受け人れる外国人労働者や技能実習生を大幅に増加するという政策を現政権が明らかにしてから、外国人の医療をどうすべきかという議論は一層、激しくなったと思います。
ただ、これらの議論の中心は外国人観光客やメディカル ツーリズムでやってくる外国人であって、我々の隣人として我が国にすでに居住する在留外国人ではなかったとの印象でした。すでに260万にものぼるこれらの在留外国人の健康を守ることも極めて大切なはずです。日本医師会の内部推薦を得て選挙を戦い参議院議員を務めている自見はな子先生を昨年の早い時期に私は中西副理事長とともに訪ね、訪日外国人の医療のトラブルを解決するだけではなく在留外国人の医療を守ることがいかに大切かということをお話してきました。ご自身が小児科医である同先生には事の重大さを十分にご理解いただけたものと思っています。日本医師会代議員会においては地域別に質問が限られており、私自身の外国人医療に関する質問は関東甲信越ブロックとしての質問から最終段階で落ちてしまいました。しかし、東京都医師会から外国人医療に関連する質問があり、関連発言という形で質問することができました。日本医師会の全国からやってきた代議員の先生方に外国人医療の問題点を知っていただくことができたと感じます。
昨年の後半になり、日本医師会の外国人医療対策委員会の委員を仰せつかり、また厚労省の訪日外国人への医療の提供に関する検討会の構成員も仰せつかり、自身の意見をもっと大きな舞台に反映させていただくことができるかもしれないまたとない機会をいただきました。現在、この2つの会は1カ月から2カ月に一回という極めて速いスピードで会議が進められています。また日本医師会では医療通訳に関連する団体を集めての話し合いを企画しており、その企画段階での話し合いにも参加させていただきました。この会議は日本医師会第一回医療通訳団体等連絡協議会として1月22日に開催されます。
現在、多方面で話し合われている外国人医療ですが、気になることが一つあります。それは話し合いの内容が受け人れ側の日本の医療機関や医師をはじめとする医療従事者に対する言葉の支援をどうするかというところだけに力点が置かれているような気がするということです。確かにこちらも大切なことではありますが、外国人からの医療・医事相談に対応し、一方、日本の医療機関や医療従事者からの外国人医療に関する相談にも応じることも極めて大切です。これによって互いの不信感を払しょくすることができることはAMDA国際医療情報センター28年の活動が物語っているからです。この1年、医療通訳だけではなく、外国人や受け入れる日本の医療機関側のさまざまな相談に応じることが互いのトラブルの減少につながることを理解していただくべく、努力を続けたいと思います。本年も引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。