NPO法人TMAT / 湘南鎌倉総合病院 副院長 医師 河内 順
(派遣期間:平成30年11月23日~平成30年12月1日)
(派遣場所:バングラデシュ、コックスバザール)
11月末にNPO TMATの隊員として、由緒あるNGOであるAMDAの活動に参加させていただく機会を頂き、ここに報告をさせていただきます。難民キャンブの詳細については多くの方が情感あふれるレポートを書かれており、今更私が語ることもないでしょうから、今回は我々が活動の重点をおく緊急時の災害医療支援との違いで感じたことを述べさせていただきます。
まずは、活動終了時期の難しさです。自然災害は自然と復興に向かっていき、通常は数週間で医療ニーズは減少消失します。難民問題は政治問題ですから、早期の解決は見込めず、数年、場合によっては数十年の単位で解決される問題であり、ここに数週間の支援をしてもその意味は疑問です。長く援助を行う必要があり、そのための組織の体力・財力が必要と感じました。難民にinterviewをしても、治安の問題からミャンマーには戻りたくないと言っていました。
二番目は空気の問題です。自然災害の復興に対しては現場も行政も国民感情、マスコミ報道、全てが、程度の差こそあれ同じベクトルを向きます。これに対して難民問題は政治が絡んでくるため、非常に難しい。またバングラディシュが彼らを歓迎するかというとそうとは言い切れず、むしろ軍隊が検問を厳重において域外への流出を取り締まっており、100万の難民が国内に散った場合の潜在的な危機感があるのではないかと思います。しかし、逆の視点から考えると、もし彼らがミャンマーにいたままであれば活動は成り立たないでしょう。政治的には彼らが国境を越えたおかげで、ミャンマー政府に気を使うことなく活動が出来るのだと考えました。
三番目は状況の安定性です。キャンプにいるということは最低限の衣食住は確保されていると考えられ、我々もスタッフの衣食住に関しても活動の内容に関しても安定したものになると思いました。災害支援活動では状況・ニーズが日替わりで変わるため、計画が立てづらい。それに比べると、予定も立ちやすく、スタッフの募集もしやすいのではと考えました。
以上、きわめて実務的な論点ではありますが、活動を通じて感じたことを述べさせていただきました。AMDAの本部スタッフの方、またAMDA バングラディシュの方々には大変お世話になりました。現地・日本のスタッフの熱い想いを感じ続けながら、難民支援に関して短期間に多くの体験をさせていただきました。今後この経験を我々の活動に生かしていくことが、参加したスタッフとしての責任と考えています。今後ともよろしくお願い申し上げます。