フィリピンマヨン山噴火被災者医療支援活動~活動に参加したビコール大学医学部生からのレポート~ – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
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国連経済社会理事会総合協議資格NGO

フィリピンマヨン山噴火被災者医療支援活動~活動に参加したビコール大学医学部生からのレポート~

中段真ん中に写るエレンさん

~活動に参加したビコール大学医学部生ディビナグレース・エレンさんからのレポート~



塵で覆われた携帯電話スクリーンを指で操作しながらふと顔をあげると、夜の闇の中、マヨン山の美しい曲線に沿ってどんどん広がり流れ落ちる赤い筋が私の目に入りました。しばらくしてその携帯に、すでに5日間休校していた大学から、やっと明日から講義が再開され普段の生活に戻るであろうという知らせが入りました。



活発な火山活動が続く中、避難者の多くにとっては、仕事や学校が翌週に再開され、不便な生活から解放されるという知らせは信じ難い様子でした。一方、ダラガ(Daraga)町の近郊の2地区の人々は、状況がようやく安定し、近々帰宅できるというニュースに心を躍らせましたが、結果的には、元の生活に戻るには彼らが待ち望んでいた以上に時間を要することになりました。今回の噴火で生活の糧や家を失った避難者は、政府による日々の支援はあるものの、無力感を感じていました。政府からの支援も十分でなく、以前の生活よりも厳しい環境の下で生活する人々は、避難生活が長期化すればするほど、健康状態に大きな影響が出始めました。

 

マヨン火山

AMDAフィリピン支部長と打ち合わせをする
ビコール大学学生

このような状況を受けて、2018年2月10日、AMDAフィリピン支部長であるナバロ医師がビコール大学医学部と協力して、アルバイ州コトモン・カマリグ地区にあるコトモン(Cotmon)高校にある避難所でAMDAマヨン山噴火被災者医療支援活動を行うこととなり、地域の緊急時などに社会貢献活動に取り組む次世代の医師たちとともに私も参加する決心をしました。名声とは無関係なこの支援活動への参加は、知識や技術の習得のみならず大きな意味をもつ活動となりました。

この活動には、AMDAフィリピン、ビコール大学医学部に加えて、AMDAインターナショナル、AMSAフィリピン、Salamat Dok, Asian Mobile Medical Services, フィリピン産業医会ビコール支部とケソン支部、ビコール大学医学部などから医師、看護師やボランティア総勢約80名が参加し、266世帯1071名を診察しました。最も多かったのが風邪症状を訴える人たちで48名、咳のみの症状が15名、腹部の痛みは11名、下痢8名と続きました。診療活動に加え、被災者への健康教育、AMSAフィリピン、アルバイ州医師会、トヨタ・バイオス・フェアビュークラブ、チームDapoy、マカティ医療センターなどの協力により医療・生活支援物資も配布しました。

薬の準備をするビコール大学学生

被災者に説明をするビコール大学学生

コトモン高校校長と協力して2週間以上滞在している避難者に寄り添い、ニーズに対応していたノセド地区長は、「医師が駆けつけ、診察してくれて、まるで特別診療所にいるような気持ちになりました。思いもかけないことで、大きな安堵感とともに心から感謝しています。」と当時の気持ちを語ってくださいました。

医療支援活動中に診察を受けた避難者のマニュエルさん(52歳女性)は、「支援してくれて私はとても幸せです。やっと必要な薬を手に入れることができました。」とおっしゃいました。マニュエルさんのような育ちざかりの子どもたちをもつ母親は、食事から十分な栄養素が取れない子どもたちのために、支援物資の栄養補助食品を受け取っていました。活動を見ていたビアンカさん(13歳女性)は、「私も今回支援来てくださったチームメンバーのように他の人の役に立ちたいと思いました。将来は医師になり、多くの人々を助けられたらと思います。」と話してくれました。

今回の活動を通じて私は、時間や空間を超えて被災者にとって大切なことは、医療従事者という立場やその知識と技術だけではなく、もちろん医師であるというプライドでもなく、助けを必要としている人々のところに駆けつけ、思いやりをもって寄り添うという行為が人々の心を打つということを身をもって知ることができました。