ネパール復興障がい者支援報告15 ~今こそ福祉の街づくりのチャンス~ – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ネパール復興障がい者支援報告15 ~今こそ福祉の街づくりのチャンス~

誰もが住みよい街づくりを呼びかける

AMDA復興障がい者支援活動では、個々の障がいのある方の訪問活動を行っています。カトマンズ近郊だけでなく、遠隔地にもモバイルキャンプとして現地の障がい者団体とチームで巡回訪問を行っています。また訪問時に外に出てカウンセリングをしながら、近隣住民との「障がい理解」をテーマとしたお話し「IDOBATA GAFU Program」も行っています。



その傍ら、各地の行政機関に対しても障がい理解促進のため「バリアフリーキャンペーン」も行ってきました。「バリアフリーキャンペーン」というのは、障がい児・者、高齢者など様々な障がいがあっても、住み慣れた地域において等しく過ごすことができるようにと、一般市民や行政機関に対して「障がいは社会側の責任」として理解促進を勧めるキャンペーンです。AMDA復興障がい者支援では、現地の障がい者団体と協力して、これまでもたびたび行ってきました。1月にはネパール東部へのモバイルキャンプで、シラハ郡ラハン地区、ジャパ郡メチナガル地区、同郡バドラプル地区でも行い、2月はネパール東部の山間地域にあるダンクタ郡チャタレ地区、カトマンズ盆地内のラリトプール群ジャワラケルでも行いました。



特に2015年震災後の9月20日ネパールは新憲法を公布。これまで障がい者の(道路や建築物などの)バリアフリー化については各省庁に権限があり、各省庁に対してバリアフリー化を呼びかける必要がありましたが、新憲法ではその権限が、各郡に権限移譲(いわゆる地方分権)が進みます。より市民のニーズに合わせた行政になる可能性があるのです。そのため現地の障がい者団体との会議で「地方分権とはなにか?」について私よりお話しし、「権限の委譲がなにを意味しているのか?」というテーマについて考え、障がい者の声を地域に反映させる機会として「バリアフリーキャンペーン」に関して、何をどのようにアピールするのか検討を重ねてきました。

 

市民向けに配布のビラ

2月のラリトプール群でのバリアフリーキャンペーンでは、現地の障がい者団体『ILC(自立生活センター)「ラリトプール」』とAMDA障がい者支援プロジェクトとで開催しました。事前に行政機関に提出する提言書の文面、市民に配布するビラの文面等について検討して作成しました。その文面に書かれている主たるアピールは「障がい者も高齢者も、全ての人々が住みよい街ラリトプール」「障がい者は決してかわいそうな存在ではなく同じ人間である」「お金ではなくチャンスを」等といった内容です。行政機関には更に具体的な道路や建築物などの環境整備の内容も加えてあります。このビラを用意してラリトプールの街を障がい当事者ら50名程をともに役所まで歩き途中で街の人々にビラを配布しました。役所ではILCラリトプールのメンバーが担当者に提言書を読んで副市長に手渡すことができました。



ネパールは民主化され、震災後に新憲法公布。新しい政府、新しい行政システムで一歩ずつ前に進み始めています。AMDA復興障がい者支援プロジェクトでは、新たな国づくりが行われているこの時こそ、福祉の街づくりのチャンスだと考えています。「障がい」は社会側の責任でもあります。現地の障がい者団体と協力して、障がいがあっても誰もが住みよい福祉の街づくりをサポートしています。

理学療法士 西嶋 望