5月末にスリランカを襲ったモンスーンによる大雨で、スリランカ南西部では洪水や地滑りの被害が発生した。AMDAスリランカは洪水発生翌日から活動を実施し、6月7日に日本から現地入りしたAMDA調整員と看護師は、AMDAスリランカとともに10日まで救援活動を行った。
9日、現地コミュニティナース(保健師)とスリランカ最大の都市コロンボから南東約100キロに位置するラトナプラ(Ratnapura)県パラドーラ(Paradola)村の視察をしたAMDA看護師はまず、月2回妊婦健診が行われているクリニックを訪れた。洪水被害のため、クリニックは停電していたが妊婦健診は現地の医師と看護師により通常通り行われており、クリニックを訪れた妊婦は無事定期健診を受けることができ安心した表情を浮かべていた。住民によると、この地域は毎年のように洪水に襲われる場所で、今回も地域のリーダーの呼びかけで事前に多くの人が安全な場所まで避難することができたものの、土砂災害により死者が出てしまった、と話していた。6月8日に避難所から帰宅したばかりの人もいるが、現地は雨も落ち着いてきており、皆、家の片付けや修復に追われていた。
10日には、AMDA、AMDAスリランカ、現地協力団体であるガミニコスタ(Gamini Costa)財団とともに、コロンボから南に約40キロに位置するカルタラ(Kalutara)県パラデゥワ(Paraduwa)村にて医療・物資支援活動を行った。この村では人口の約70%にあたる850名が被災し、先週、避難先から自宅に戻ってきたばかりであった。現地医師2名、看護師1名、医学生2名、ボランティア9名とともに患者90名を診察し、無料で医薬品の提供を行った。多かった症状は皮膚症状、上気道感染症、筋肉痛、関節痛であった。受診した被災者からは、病院まで距離が遠く子どもを病院に連れていくことができなかったが、今回、自宅の近くで医療活動をしてもらえてありがたい、という言葉が聞かれた。物資支援に関しては、被災した50世帯に対して蚊帳を配布。学用品が洪水で流された小学生200名に通学用鞄、鉛筆、消しゴム、カッターナイフ、物差し、クレヨン、チョーク、筆箱を含む文房具セット、水筒、弁当箱を配布した。物資を受け取った小学生は、嬉しそうに鞄を背負ったり、文房具をお互いに見比べたりしていた。
その後、カルタラ県クラゴダ(Kooragoda)村に移動し、医療活動と物資支援を行った。25名を診療し、そのほとんどが皮膚症状と筋肉痛、関節痛を訴えた。被災した小学生10名に対しては文房具セットと水筒、弁当箱を配布した。洪水の際、村全体が浸水し、山に逃げた住民たちは水が引いた後、自宅に戻ってきたものの、自宅にあったものは水に浸かり使用できない状態であった。市街地から離れているクラゴダ村に入ったのはAMDAが初めてであり、診療を受けた住民からは握手をしながら感謝の言葉をいただいた。
AMDA看護師は活動翌日の現地時間11日午前10時30分にスリランカ・コロンボを出発し、マレーシア・クアラルンプール経由で日本時間12日午前9時20分に日本に帰国した。