ネパール地震復興支援報告10 ~障がい者支援 貴重な現地パートナー~ – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ネパール地震復興支援報告10 ~障がい者支援 貴重な現地パートナー~

2015年4月25日に発生しましたネパール地震ですが、AMDAによるネパール復興障がい者支援は現在も継続しております。時間の経過とともにニーズも変化してきておりますので、その変化に合わせて調整を繰り返しながら行っております。

最近の傾向は、震災により障がい者となった方々は、バリアの多い大変な環境で不自由のままですが生活が固定化してきています。また震災によらない障がい者のニーズも増えてきております。そのため自立生活にむけた物資による支援より、教育的な支援の重要性が増してきています。ここネパールでは介護職種といった専門職による在宅支援体制はまだ確立されていないので、どうしてもご家族による介護は欠く事が出来ないのです。ネパールは家族や親類あるいは近隣住民による助け合い意識は以前からありましたし、経済的に誰か専門の人に介護を頼むことは難しいので、家族のサポート体制を充実化することが最も有効なようです。

そこで私たちの行う活動での訪問指導において、必ずメッセージでお伝えしている事は、「障がい」は病気と違うので、寝ていては良くなるどころか悪化する事。寝たきりとならない為には、閉じこもりを防ぐため起きて、座って、ベッドから離れる生活をする事。ご家族には介助方法についてなどをお伝えしています。しかし最も効果的なのは、パートナー団体であるCILカトマンズのピアカウンセラーの方々によるカウンセリングです。同じ障がい者の立場から寄り添うカウンセリングは相手の方々にとって自信と勇気に繋がっています。

2017年2月21日は、カブレパランチョーク郡のバダルガウンという山の斜面にある村に、CILカトマンズのメンバーを訪問しました。そこでは進行性筋ジストロフィー症の男性とそのご家族がいらっしゃいました。この日は同時に近隣に住む足を骨折し十分にリハビリテーションも受けられないでいらっしゃった女性と、知的障害とみられる男性についてもリハビリテーションや家族指導、カウンセリング等を行いました。

進行性筋ジストロフィー症の方のお宅は、幹線道路から凸凹道を500m程進み、更に道ではなくただの草むらの急傾斜を10m程降りないといけない場所でした。お住まいは、山の斜面に建てられた仮設住宅でした。当然ながら車いすでの外出はできません。それでも日々ベッドから離れて屋内のベンチに移動してお過ごしでした。訪問直後はお母様がいろいろとお話ししてくださいました。お母様はどれほど大変な療養生活なのか、これからへの不安など多くの悩みを涙とともにお話し下さいました。ご家族はお父様が1年前にお亡くなりになり、経済的な不安もありましたが、二人のお兄様が働いて支えてくれています。しかしお兄様がお二人とも働きに出ているだけに日中の介護はお母様とお嫁さんの女性しかないので、屋内の移動は大変な介護負担でした。そこで現地製造の車いすを屋内介護の負担軽減のためにお使いいただけておりました。

この日お会いした他のお二人の訪問指導対象者にも、ご本人に自宅で行うリハビリや、ご家族への介助や関わり方のポイントなどをお伝えしました。最後には3名の対象者とそのご家族そしてピアカウンセラーも加わり、共に近所に住む方々で互いに苦労話や工夫している事などコミュニケーションをお取りいただきました。

同行していただいたピアカウンセラーらと連携をもって関わったことで、大変中身の濃い訪問活動となりました。どなたも最初は不安な表情でいらっしゃいましたが、カウンセリングを進めつつ、具体的な生活の仕方などをお伝えしていくうちに次第に皆さん明るい表情でいろいろとご質問もしてくださいました。

今回特に同行いただいたCILカトマンズの事務局長のクリシュナ・ゴータムさんは、日本語も話すことができますし、日本で障がい者の自立生活トレーニングも受けた方ですので、対象となる方々に私がお話しする際、私の限られたネパール語でのお話しの意図をくみ取って説明のサポートをしてくださいました。私は理学療法士の立場から、そしてクリシュナさんは、同じ障がい当事者の立場から、その双方からお話ししていますと、どなたも納得して聞いてくださいます。その他のCILカトマンズのピアカウンセラーのスタッフの皆さんも、いつも私と連携して取り組んでくださり貴重なパートナーです。

このような貴重なパートナーとの活動は、個々の訪問活動が効果的となるだけでなく、私にとりましても、またパートナーであるCILカトマンズの皆さんにとりましても貴重な経験となっています。この障がい者支援活動が、将来のCILカトマンズ、そして全てのネパールの障がい者とご家族、更にはネパールの社会にとりましても、障がい者も住みよい社会の糧となるよう願って活動しております。

理学療法士 西嶋 望