2013年6月中旬、インド北部ウッタラカンド州(Uttarakhand)において豪雨による洪水が発生し、首都デリーを含む広域での深刻な被害を引き起こしている。
7月2日までに洪水や地滑りのあと、10万人以上の人が助けを求めヒマラヤへ避難し800人以上が犠牲となっている。現在、少なくとも3,500人以上の行方不明者がでているが、国家災害管理局（NDMA）はさらに11,000人以上が行方不明になっている可能性があると述べている。（以上　BBC-NEWS INDIA）

この状況を受け、インドに6月3日から出張中のAMDA本部職員、ニティアン・ヴィーラヴァーグ調整員は、洪水発生直後の20日より、AMDAインド支部や現地の協力者との連絡調整を開始し、被害状況の把握に務めてきた。

発生から10日以上が経過したが、未だ混乱状態が続いており、正確な情報が得られない中、現地の医療ニーズは高まることが想定されることから、ヴィーラヴァーグ調査員は、26日 に被災地の周辺地域まで移動し、現地調査に入った。

ヴィーラヴァーグ調整員は、27日にAMDAインド支部長の紹介で被災地ウッタラカンド州を中心に活動しているローカルNGO“WESAF（Water・Earth・Sky・Air and Fire-Five Major Elements of the World）”と合流、支援活動の可能性について検討した。

同日までに政府は死者560人と報告しているが、地元ニュースでは死者は3万から5万人に上るとの報告があり被害者の数は増え続けている。

当初、ジョシマス地区（Joshimath）で任務を行う予定であったが道路は寸断されており、移動手段の確保も不可能であることがわかった。しかし大雨による道路被害がでる前に、WESAFは薬や食べ物のための資金を送っておりAMDAはその費用をカバーすることに同意し20,000ルピーを提供。道路の開通後、地元医師とともに避難所 を追跡調査していくことに同意した。

一方で、治安部隊のシャストラシーマバル（SSB）軍と共に被災地に入れる事になったヴィーラバーグ調整員は、スリナガール（Sri Nagar）に向かうものの、崖の崩落や落石により危険な道路状況であり、日に日に道路の状態は悪くなっており、さらに大雨が降ると道が封鎖してしまうと予測されたので、調査を中断した。

この調査により、インド政府は外部からの支援を受け入れておらず、現地入りできるのは政府のヘリコプターのみで、現地のNPO・NGOでさえ、被災地に入ることは難しい状況であること、また、現段階では政府の支援で被災地のみでなく被害を受けていない地区にも支援が届いている状態であるため緊急支援の必要性も低いことが判明した。

しかし今後、状況が悪化していくと政府の支援だけでは行き届かなくなることも予測されるため、状況を継続的に注視し、現地の必要に応じて支援活動を実施する予定である。

■AMDA派遣者プロフィール
ニティアン・ヴィーラヴァーグ:AMDA本部　国際部　緊急救援担当課長/調整員
 

■これまでのインドでの活動
インド西部大地震被災民緊急救援リハビリテーションプロジェクト（1993年）
インドサイクロン緊急医療支援活動（1996年）
インドサイクロン緊急医療支援活動（1999年）
インド西部大地震被災者に対する緊急救援活動（2001年）
スマトラ沖地震・津波被害に対す緊急救援活動（2004年3か国で実施）
インドビハール州洪水被害に対する緊急救援活動（2009年）
インドピースクリニック運営（2009年から現在）

※なお、2009年に発生したネパールのコシ川を原因とする洪水では下流域に位置するネパールとインドの多数の村で大きな被害が出た。ネパールとインド国 境付近の村に被害が広がったため、言葉の問題などから、AMDAインド支部、AMDAネパール支部と合同で支援活動を実施した。

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