4年ぶりにネパールAMDAダマック病院で内視鏡研修を再開   – AMDA(アムダ)
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4年ぶりにネパールAMDAダマック病院で内視鏡研修を再開  

ネパール事業担当 アルチャナ ジョシ


AMDAネパール支部が運営するAMDAダマック病院はネパール東部、ジャーパ郡ダマック市にあり、第二次医療施設として、2021年度は、66620人の外来患者があり、5586件の分娩を受け入れた地域の中核病院です。集中治療に対応する設備は日本からの支援を受けています。しかしながら、内視鏡技術は、まだまだ普及していません。AMDAは、2018年2月から、上部消化管内視鏡検査の技術的な指導、病変診断などの研修を行っています。2018年、2019年は、佐藤拓史医師(AMDA 理事)がダマック病院で実技指導を行いました。その後、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け現地での研修を実施することが難しくなったため、2021年はオンラインでの研修となりました。

ネパールの新型コロナウイルス感染も落ち着き、現地での研修が可能になったため、今年3月7日から13日まで、4年ぶりに佐藤医師による実技指導を実施しました。研修ではAMDA ダマック病院で内視鏡を担当するディワス医師(2016年に約3か月岡山済生会総合病院で研修終了)とともに地元ダマック地域の内視鏡医も参加し、麻酔を使用しない下部消化管内視鏡の研修を行いました。最初は日本から持参した大腸内視鏡シミュレーターを用いてのトレーニングを行い、その後は佐藤医師の指導の下で、全大腸内視鏡19人、上部内視鏡13人の患者の検査・治療を行いました。今回はダマック以外の地域からも患者さんが診察を希望され、大腸カメラ検査を受けました。20代から80代の患者さん32人(男性:15人、女性:17人)から、直腸癌、上行結腸癌、S状結腸捻転、クローン病、ポリープなどの病気が見つかりました。

今回の検査を受けた患者さんの中には、ほかの病院でも大腸カメラの検査を受けた経験があり、「今まで受けた内視鏡に比べて全然苦しくなくてよかった」との声も聞かれました。S状結腸捻転の患者さんは腹部の痛みを訴えていましたが、大腸カメラの治療を受けて痛みがなくなり、嬉しさのあまりに涙を流していました。「大腸カメラの検査はとても苦しいと聞いており、今まで何度も受けるのを取りやめていました。今回、日本からの医師の指導の下で検査を受けました。検査を受けてよかった。」と施術の感想を述べました。「麻酔をして検査を受けるつもりで来院しましたが、麻酔はしないと聞いて最初は不安でした。しかし、麻酔がなくても検査ができて丁寧に診ていただき、本当によかったです。日本の優れた技術を現地の医師に教えていただき、うれしです」と患者さんが感謝の気持ちを込めて話をされていました。ネパールでは首都のカトマンズ以外の地方で、まだ大腸内視鏡検査は普及していません。地方の病院での内視鏡検査・治療を地元の医師自らが出来るようになることで、その地域のたくさんの命が救われることになります。とても重要な意義深い研修であると実感しました。

研修の最終日にダマック市長ラム氏をお招きし、病院長はじめ多くの医師や看護師も参加した研修報告会を行いました。ディワス医師は研修中に大腸カメラの検査・治療を受けた患者の人数や検査の所見などについて詳しく説明し、佐藤医師からは内視鏡による早期がんやポリープなどの切除の可能性と、その治療を行うための設備の必要性について説明がありました。病院のスタッフや患者さんは、地元で治療できるようになることを最も望んでいます。そのために、佐藤医師による継続的な研修が求められました。ディワス医師は、自分が学んだ技術を後輩の医師に教え、AMDA ダマック病院がネパールの内視鏡の最先端の技術を持つ病院になれるように皆で力を合わせていく必要があることを強調しました。ラマ市長からは「日本の優れた技術をダマックの医師たちに教えていただき感謝します。ダマック市内で内視鏡の検査・治療を受けることができればほかの地域からの患者がダマックに来てくれます。これはダマック市にとって誇りになると思います。」と市長自ら検査を受けたいと話をしました。


2018年~現在まで約2500人以上の患者さんが同病院で上部消化管内視鏡検査を受けられました。その中で、75人の患者さんに癌が見つかりました。患者さんの中には、既に手遅れで若くして命を落とされた方もいらっしゃいました。しかし、早期に癌が見つかった人は、現在、首都カトマンズにあるがんセンターで治療を受けています。病院関係者は、「ダマック市や周辺の患者は、AMDAダマック病院で検査を受けられるようになったため、多くの患者が検査を受け、自分の健康に関する意識が変わりつつある」と最近の変容について語りました。ディワス医師が内視鏡検査を始めて以来、内視鏡検査の補助をしてきた看護師は、「ディワス医師は佐藤医師からとても優れた技術を受け継いでおり、患者に負担をかけずに検査をするため、口コミで検査を受ける患者が増加しています。内視鏡で見つかった末期がんの患者さんが、その後、命を落とされたと聞いたときにはとても悲しかったです。
早めにそして定期的に検査を受ける患者が増えることを願うばかりです」と話をしました。また、上部内視鏡のカメラを使用してから約5年になりますが、ネパールではカメラの洗浄機はなく、基本的に看護師が手で洗浄しており、スコープの劣化が進んでいます。内視鏡の検査・治療の拡大に伴い、医師の研修の継続に加え、看護師の研修や洗浄機の導入なども今後解決すべき課題です。

尚、今回の技術指導で使用した大腸内視鏡のスコープは、台湾IHAから寄贈されたものです。この場を借りて改めて台湾IHAのご協力に感謝申し上げます。台湾IHAから「寄贈し大腸カメラが地元の病院で活用されていると聞き、より内視鏡技術が向上されることを願っています」とメッセージをいただきました。


3月15日に佐藤拓史医師、AMDA ダマック病院の元病院長のナビン医師とAMDA 職員アルチャナが在ネパール日本大使館を訪れ、特命全権大使 菊田豊大使に面会しました。佐藤医師からはAMDA ダマック病院で始まった内視鏡研修の経緯や今回の研修について説明し、ナビン医師からは、在ネパール日本大使館の支援で建てられたICUでコロナ禍の中500人以上の患者が治療をうけ、今も多くの患者が使用していることを報告し、日本国民からのご寄付が現地でとても役に立っていると感謝を伝えました。菊田大使は、「日本国民からの大事な寄付が現地の方によって大いに生かされていることがとても嬉しいです。」と話されました。

AMDAは、これからもダマックの内視鏡技術向上にむけた研修を継続して行ってまいります。