インドネシア・AMDAマリノ農場からの便り   – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

インドネシア・AMDAマリノ農場からの便り  

AMDA本部 近持 雄一郎


2014年からインドネシア・南スラウェシ州のマリノ村で有機農業に取り組んできたAMDAマリノ農場。日本から持ち帰った技術を地域に根付かせ、来年で開設10周年を迎えます。

AMDAマリノ農場の発端となったのは、AMDAがアジア地域における有機農業の普及を目的に2012年に開始した『AMDAフードプログラム』です。AMDAは岡山県北部にある新庄村に農場を開設後、アヒルを使った無農薬有機稲作栽培等を実践。ここに研修生として来日したインドネシア人農家2名が、その技術と 精神を故郷に伝えて現在に至ります。以来、AMDAフードプログラムが掲げる「食は命の源」の考え方は、マリノ村での有機農業事業に引き継がれており、既存の農業から有機農業に転換を図る現地農家が年々増えています。

現在、有機農業を行う農家は常時15軒ほどで、米、赤米、からし菜、キュウリ、レタス、白菜、パクチョイ、青梗菜などの作物を通年で栽培しています。新型コロナウィルスのパンデミックという大きな弊害はあったものの、極力普段通りの活動を行うべく邁進してきた篤農家達。定期的に生産者同士で意見交換を行うなど、知識と技術の向上に余念がありません。

もみ殻燻炭や自家製の肥料などを使い、これにインドネシアで伝統的に使われてきた手製の農具を用いて行う農業は、外部から得た知識と伝統農法が上手く組み合わさった良い例といえるでしょう。

そんな現地生産者の姿勢は、赤米の販路拡大や、日本のキュウリをはじめとする新たな作物の栽培にも見ることができます。またコロナ禍を鑑み、米の購入者が、マリノ産の米粉を使って肌にやさしいマスクの開発に乗り出すなど、意外な方面での連携も見られました。


米を天日干しにしている様子


白菜の収穫

農場の継続性という意味では今後の見通しも明るい一方で、目下の課題は、プロジェクトの事務方を兼任できる人材が不足している点です。現在、農作業や技術指導に従事しながら、日本側との調整や現地でのマーケティングに携わる専任スタッフがいない為、このような統括役を公募し、日本から現地に派遣するなどの道を模索する必要がありそうです。

開設から10年目を迎えるにあたり、マリノ農場の(あるいはAMDAフードプログラム全体の)次なる方向性を見据える時期に差し掛かっているといえるでしょう。

ローカルイニシアチブ(現地主導)による事業が地域に根を張り、早9年。日本の農村からインドネシアの農村へと広がっていったAMDAフードプログラムの今後の展開を見守って頂ければ幸いです。