新型コロナ感染症対策専門家としてパプアニューギニアに岡山大学病院医師を派遣   – AMDA(アムダ)
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新型コロナ感染症対策専門家としてパプアニューギニアに岡山大学病院医師を派遣  


WHOのフォーカルポイントであるAMDAから、12月下旬より今年2月中旬まで、岡山大学病院 萩谷英大医師をパプアニューギニアに派遣。現在、新型コロナ感染症対策専門家として現地で活動されています。
現地からのレポートが届きましたので、掲載いたします。

【2022年1月10日 現地活動記録】
皆さん、こんにちは。岡山大学病院の萩谷英大です。現在、WHO(WPRO:WHO西太平洋地域)がすすめる各国のコロナ対策支援に参加するためにパプアニューギニアに滞在しています。Global Outbreak Alert and Response Network、通称GOARNで知られている感染対策専門家派遣の枠組みによる海外派遣です。GOARNからの海外派遣にはフォーカルポイント(所属機関)が必要ですが、この度はAMDAにフォーカルポイントとなっていただき派遣が実現しており、大変感謝しております。

12月28日に現地入りして現在約2週間が経過しましたが、その間、何ができたかというと・・・残念ながらまだ大きな仕事はできていません。コロナ対策だろうが何だろうが、ニューイヤー期間中は仕事はしっかり休むというのが現地のやり方のようで、1月の2週目になって、ようやく全体が仕事モードに切り替わっている印象です。

私が所属するWHOのInfection Control and Prevention (以下IPC)部門は、1名のWHO正規スタッフ(オーストラリア人)、1名のWHO長期コンサルタント(インド系マレーシア人)、1名のWHO短期コンサルタント(チュニジア人)で構成されています。WHO正規スタッフはオーストラリアからリモートワーク(?)をしており、現地不在にしています。長期コンサルタントと短期コンサルタントは、私がパプアニューギニアに到着した次の日に3時間ほど会って軽い申し送りをした後に、いずれも契約満期のためそれぞれの国に帰ってしまいました。帰国後もメールやウェブ会議ではサポートしてくれる形になっていますが、現地のIPC部門は私一人残されて、この先どうしていこうかと暗中模索の状態で年を越し、現在に至っています。嘆いてばかりいても物事は前に進みませんので、申し送りで教えてもらったNational Department of Health(日本で言うところの厚生労働省)の感染対策部門の責任者と相談を進め、まずは首都ポートモレスビーの主要医療機関の感染対策の現状を評価することを短期目標にしています。長期的には地方都市にも足を延ばして、そこでの感染対策状況の評価およびフィードバックをする予定にしています。

そもそもパプアニューギニアにおける新型コロナウイルスの流行状況はどうなっているのでしょうか。表向きはあまり多くの感染者が報告されている国ではありませんが、日本のような法制度に則った報告システムがないため、充分な検査が行えていない、検査が行われていてもそれが報告としてあがってきていない、など陽性者数が過小評価されていることは間違いありません。加えて、ワクチン接種率は全人口の2%以下とWHO西太平洋地域で最低接種率と言われています。ワクチンの在庫はたくさんありますが、宗教・信念・噂・など、様々な要素・リテラシーの問題がワクチン接種率向上を妨げているようです。

今週からようやく現地医療機関の視察・指導に行くことができる状況となりました。IPCの専門家として、現状評価と課題確認、改善点の提案など、現地の感染対策レベルが改善するよう積極的に働きかけていきたいと思います。

【派遣者情報】
萩谷 英大(はぎや ひではる)医師 / 岡山大学病院 総合内科・総合診療科 (医局長)・

岡山大学学術研究院医歯薬学域 瀬戸内(まるがめ)総合診療医学講座