ウクライナと国境を接するハンガリー・ブダペストを拠点に活動するメドスポットは、2022年11月より毎月 1回2日かけて、ウクライナ西部ザカルパッチャ州の避難所を訪問し、巡回診療を行っています。AMDAは現地協力団体であるメドスポットが使用する医薬品と医療資材を中心に支援しています。
メドスポットの報告によると、400万人近くの人がウクライナ国内で避難を余儀なくされ、その多くは3年以上にわたり避難所に身を寄せています。活動を行うザカルパッチャ州は比較的安全な地域とされ、そこに暮らす避難者は分かっているだけで6万2,000人に上ります。メドスポットが2024年に行った調査で、同州に暮らす国内避難民の多くが経済的に困窮していることも明らかになりました。避難者の約4分の1は、世帯1人当たりの所得が、ウクライナにおける最貧困層(最下位10%)に属していると回答し、さらに約3分の1は全国一人当たりの所得中央値未満で生活しています。経済的な不安により、ザカルパッチャ州に身を寄せる国内避難民の多くが医療機関の受診を控えることで、治療の遅れ、慢性疾患の悪化、心理社会的ストレスの深刻化などに繋がることが懸念されます。このことから、メドスポットは避難所を定期的に巡回し、そこに暮らす人の診察・カウンセリング、医薬品の提供を継続しています。

メドスポットと一緒に活動を行うウクライナの団体代表者であるナタリー氏は、「先の見えない状況が人の心に大きな影を落としています。絶え間ない緊張とストレスにより、高血圧や糖尿病を発症する人がますます増えていて、日常的な会話でさえも、恐怖、痛み、喪失が話題の大部分を占めます。残虐行為を直接経験していない人も、他の方の話を聞くことで追体験する状況があります。その結果、多くの人が不眠に陥り、睡眠薬に頼ることに繋がっています。」と話しました。
さらに、この8月には、比較的安全とされているザカルパッチャ州に、ミサイルが着弾し十数名の負傷者が出ました。これをうけて、メドスポットは地元の病院と、トリアージ訓練を行うなど、緊急的な支援も行いました。

この事件後、巡回診療で、いつもとは違った様子をみせる避難民のかたもいらっしゃった、と報告がありました。3年以上にわたり避難所での生活を続ける80代女性は、以前、頭痛や軽度の高血圧で受診し、落ち着いた様子で過ごされていました。しかし、この攻撃後の診察では、血圧も上昇し、強い不安や抑うつ状態を呈するようになり、「私はこの地に平和と安全を求めてやって来たのに、もうここも安全ではない。あのミサイルの爆音で、かつての記憶がすべて蘇った。」と、以前、彼女が住んでいたドネツクの火災現場から救出された時のことを、この時初めて、診察した医師に語ったそうです。


不安定な状況が続くウクライナ国内避難者の方に対し、AMDAは今後もメドスポットと一緒に支援を継続してまいります。