ウクライナ人道危機勃発から3年が経過し、戦闘が長期化する中、家庭の分裂、金銭的な困窮など様々な困難に直面し、精神的な疲労が深刻になっている方もいます。「家族が崩壊した」、「母親の私が一人で複数の子どもを育てている」、「夫は障害を持っていて働けない」、 「お金がまったくない」といった声が聞かれ、ウクライナではメンタルケアのニーズが非常に高くなっています。AMDA の現地協力団体の1つであるセントミッシェル小児総合リハビリセンターは、 ウクライナ国内でも比較的安全とされる西部ザカルパッチャ州ウジホロドにあります。障がいのある子どもにリハビリを行う同センターは、東部の戦闘地域から避難してくるリハビリが必要な子どもも受け入れています。その家族に同センターの宿泊施設を一時的に提供することで、家族が心理的に休息できる場所ともなっています。
2025 年 5 月に同センターのディレクターと行ったオンライン会議では、同センターで取り入れている乗馬療法を受けた子ども達に大きな変化が見られたと報告がありました。例えば、寝たきりで 動けなかった子どもが、30 回におよぶ乗馬療法を通じて、支え無しで一人座りができるようになった。ほかにも、問題行動があり、言葉を話すことができず、指示された言葉も理解できなかった子どもが、2年以上にわたり乗馬療法を受けることで、言葉を発するようになり、指示された内容も理解できるようになった上、感情をコントロールできるようになった、と伺いました。このように継続的なリハビリが非常に重要なことは明白ですが、同センターでは、これ以上の子どもの受け入れは厳しい状況です。一日最大60人まで対応できるものの、すでに12月末までの予約が埋まっていて、来年1月以降も空きがありません。限られた人数で運営していることに加え、1人の職員が見ることのできる子どもの数にも限界があるため、需要に供給が追い付けない状況が続いています。
高い需要に反して、同センターは存続の危機に瀕しています。政府から同センターに支給される給付金が25%程度にとどまっていることに加えて、高額な抗がん剤治療薬が継続的に必要な患者を2人支援していることも影響しています。これまで、AMDAの支援は、同 センターで使用する洗剤、石鹸、トイレットペーパーなど日用品の購入、光熱費や支援活動に使用する車のガソリン代の支払い、に充てられてきました。加えて、同センターは AMDA からの援助を、生活困窮者に無償で食事を提供する団体への食糧支援、深刻な病気により継続的な治療を必要とする患者への医薬品の提供、地元コミュニティー主催のイベントに必要な物品の購入や戦闘地域からの避難民と支援が必要な世帯への食糧や物資の提供などに活用してきました。しかし、ここ1か月半は、同センターを維持するため、多くの支援を中断せざる負えない状況に陥っています。
これを受け、AMDAは追加支援を決定しました。リハビリが必要な子どもとその家族を支えているセントミッシェル小児総合リハビリセンターの活動が継続できるよう、さらに、支援を待っている生活困窮者に支援が届くよう、AMDAは今後も活動を継続していきます。
