ネパール大震災から10年、未来への一歩― ベタンチョーク村での医療支援と防災啓発活動 ― – AMDA(アムダ)
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ネパール大震災から10年、未来への一歩― ベタンチョーク村での医療支援と防災啓発活動 ―

 2015年4月25日、ネパールは壊滅的な地震に見舞われ、広範囲にわたる人的・物的被害が発生しました。それから10年が経ち、被災地の人々の復興への努力とレジリエンス(回復力)を称えるとともに、将来の災害への備えを強化する目的で、AMDAネパール支部はベタンチョーク村、ならびに現地団体ロータスネパールと連携し、医療支援と防災啓発のためのイベントを開催しました。

 今回の活動地であるベタンチョーク村は山間部にあり、外部からのアクセスが難しい場所です。さらに、この地域は地理的・気候的に自然災害に脆弱で、特に近年は気候変動の影響により、豪雨、洪水、地滑りなどのリスクが増しています。2024年10月にも大雨による洪水と土砂崩れが発生し、住民の生活に大きな影響を与えました。こうした背景を受け、地域住民の防災意識を高めること、そして医療サービスが届きにくい人々の診療をすることが急務となっていました。

 イベント当日は、ベタンチョーク村の副村長や活動拠点となったブグデブ診療所がある第6区の区長をはじめ、AMDAネパール支部の医師や看護師、臨床技師、薬剤師、地域のボランティアが参加し、2回のセッションが行われました。 


 最初のセッションでは、防災に関する参加型のセミナーが開かれました。内容は地震や洪水、地滑りといった災害に対する備えについてで、特に昨年の災害の経験を踏まえて、洪水の早期警報、避難行動、地滑りへの備えといった実践的な情報が共有されました。また、家庭での緊急対応計画の立て方や、地域の人と助け合うための方法、応急手当の基本なども紹介され、参加者には分かりやすい資料が配布されました。
 
 続く2回目のセッションでは、医療支援としてヘルスキャンプが実施されました。合計79人の地域住民が受診し、うち38人の女性が子宮頸がん検査を含む婦人科健診を受けました。医師の判断により8人が超音波検査も受け、慢性疾患や感染症などが見つかりました。

 診察の結果、骨盤内炎症性疾患(PID)、上気道感染症(URTI)、胃酸の分泌異常などが確認されました。また、婦人科健診では子宮頸検査を受けた12名のうち1名が陽性反応となり、他にも尿路感染症(UTI)、膣分泌症候群(VDS)、慢性子宮頸管炎などが診られました。超音波検査の結果、1名は精密検査が必要とされ、2名が胆石と診断されました。

 参加者の多くは高齢者や女性で、普段は経済的な理由や医療機関が遠方であることから、病院にかかることが難しい人たちでした。今回の医療支援については「自分の健康状態を知ることができて安心した」「専門的な検査を受ける機会が持てた」といった感謝の声が多数寄せられました。また、精密検査や治療が必要とされた患者に対しては、ベタンチョーク村から一番近い病院の1つである、バネパ市のScheer Memorial Adventist Hospitalが今後のフォローアップ支援を行うことを約束しています。

 この活動は、地震から10年の節目にあたるものであり、地域に根ざした意味のある取り組みとなりました。今回の活動を通じて、地域のニーズと課題が改めて明らかになり、次なるステップへの指針が見えてきました。今後は、さらに遠隔地域にも同様のサービスを届けるための体制づくりや、継続的な防災教育の実施が期待されています。医療支援や災害への備え、健康リスクの早期発見といった要素を通じて、AMDAネパール支部とその現地パートナーは「より強く、より健康な地域社会」の実現に向け、今後も継続的に取り組んでいく方針です。