
AMDAはウクライナ国内外の団体・医療機関と協力して、人道危機による影響を受け困難な状況に置かれている住民とコミュニティーに支援を届けるため、活動を継続しています。
協力医療機関の1つは、ロシア国境に近い、ウクライナ北東部の主要都市ハルキウにある『ダイナスティメディカルセンター』です。耳鼻咽喉科を専門とする同センターは、地方からハルキウに集まってくる患者も受け入れており、中には治療代の支払いが困難なケースもあります。AMDAは、医療資材や医薬品などを提供することで、同センターが治療を必要とする患者へ支援を続けられるようサポートしています。この報告期間中も、毎月10件前後の手術と30件前後の診察およびCT、超音波検査、血液検査などが無料で行われ、AMDAが支援した抗がん剤、抗生剤、鎮痛薬などの薬のほか、注射器、気管内チューブ、紙ナプキン、ニトリル手袋などの医療資材も活用されました。
2025年5月には、同センターのディレクターとオンライン会議を行い、活動報告を受けました。ハルキウ周辺地域では、5月に入ってから連夜、ドローンによる大規模な攻撃を受けており、まるでホラー映画のような状況があると言います。一方、中心部への直接的な被害は少なく、被害が出たとしても建物やインフラへの損傷は素早く修理されるそうです。割れた窓ガラスなどは、翌日には取り換えられていて、住民の対応力の高さがうかがえます。
厳しい状況ではありますが、ハルキウや周辺地域出身の避難民の多くが、海外やウクライナ西部の避難先から地元に戻り始めています。この理由について、ディレクターは「ここは私たちの故郷です。どんな状況でも戻ってくるのは当然のことです」と説明されました。また、ハルキウ中心部は、攻撃から人命や既存の設備を守る防御インフラが整備されているため、周辺地域からも人が集まってくる、と現状を共有くださいました。
続いて、AMDAが提供した抗がん剤による治療を受けている2人の患者さんの状況について報告いただきました。患者さんのご家族の1人が、途中会議に参加され、ウクライナ語で、「涙が出てくるのは悲しみではなく感謝の涙。AMDAの継続的支援があったからこそ、夫は今もこうして生きていられます。心から感謝しています。AMDAの支援者には言葉で言い尽くせない思いがあります。」と話されました。また、同センターのディクレタ―は「AMDAの支援は医師としての使命を支えてくれる“灯”です。市民・患者だけでなく、医療者である私たち自身にとっての希望でもあります。」と語りました。AMDAは今後も、支援を続けていきます。


