2014年 岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業モンゴル国視能訓練技術移転プラン事業 実施報告
AMDAは2010年からモンゴルへ日本から専門家を派遣して子どもの目の健康に焦点をあてたセミナーや実習等の事業をおこなってきた。
モンゴルの全人口の1/3が18歳以下の子供であり、小児の弱視、斜視などは、検診システムが整っていないモンゴル国内において発見が遅れたり、放置されやすい現状がある。このような状況は、子どもの教育を受ける環境を阻害する恐れがある。このような状況を受け、モンゴル眼科医協会の要望に応えてスタートしたプログラムで今年で5年目となる。
また、世界的動向として、入学前眼科視覚健診の重要性を啓発し、その具体的な方法を世界標準で作成することが求められていることから、今回は、眼科医、並びに教育関係者、保護者を対象とした小児の視機能健診の効率的実践を実際の診療現場で実施した。
本年の事業は、モンゴル、ウランバートル市において9月8日から12日まで川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科、視能矯正専攻教授、高 裕子先生ならびに視能訓練士協会守田好江先生、モンゴル眼科協会、ウランバートル市内の眼鏡店City Opticの協力を得て、セミナーと実践にわけて実施された。
眼科学校健診の研修会には、ウランバートル市内の眼科医35名と40名の学校医が参加。その後、未熟児網膜症など、目に重大な問題を抱えた子ども28名の検査、さらには第58小学校に入学したばかりの1年生345名全員の眼科検診を日本モンゴル友好病院で行った。
眼科学校健診の結果、両眼とも0.7 以上は277 名で、8割の児童は学校教育に支障がない視力であったが、2 割は再検査の必要があった。
全体として強度近視で失明予備軍の児童 1名を含め、眼科医の治療が必要と思われた児童が 9 名、眼鏡検査が必要な児が35名 いることが分かった。
これら問題の児童についてモンゴル眼科協会の治療方針を学校医と共有、さらにはCity Opticから眼鏡の提供協力を行うことを決定。検査をうけた子どもの保護者からも日本の先生がこれほど丁寧に診てくれるとは感激だと、感謝された。
またこの検査結果については、モンゴル保健省、ウランバートル市保健局にデーターを共有。モンゴルHTテレビにモンゴル眼科協会会長と出演して、広く一般に眼科視覚検診の重要性を訴えた。
日本の専門家の帰国後、モンゴル眼科協会が初回の検査で問題のあった53名のうち46名の子どもたちに対して4日間にわたって再検査を行った。その結果、38名の子どもが眼鏡を作った。なおこの眼鏡のフレームは岡山後楽ライオンズより贈られたものである。このうち18名の子どもは、協力眼鏡店からレンズの無償提供も受けた。モンゴル眼科協会から、「すくなくともこの53名の子どもたちは、この検診がなければ、自分たちの目に問題があることを知ることはなかった。長年にわたるAMDAの協力に感謝している」とのコメントとともに眼鏡をもらった子どもや保護者から感謝のメッセージや絵が贈られた。