今回は1週間という短い滞在期間にも関わらず、慣れない日本で大阪、岩手、岡山と移動の多く緊張感あふれる旅でしたが、その分、多くの貴重な経験をすることができました。
岩手県大槌町の被災地では、震災後5年近くもなるのに、まだその被害の生々しい風景に触れました。また、震災当時、津波の悲惨な映像を撮り続けた岩手放送釜石支社の木下記者からは、強大な津波が一瞬にして自分が生まれ育った町を呑み込んでしまった時も、カメラマンとしてずっと撮影し続けたという話を伺いました。自然の力には逆らえません。しかし、後の世代にそれを伝えることは、防災教育の貴重な材料であり、記者としての大事な仕事であることを学びました。ネパールの地震のことも風化させないために、どのように取り組むかを考えさせられる機会となりました。
また、岩手放送局のニュース編集部長は東北大震災の後は1か月ほど放送局に泊まり込んで被災地へのスタッフの手配、番組の放送、スタッフの健康管理などに従事した話を聞き、報道局が被災者と支援者をつなぐ災害の時の重要な存在であることも再認識できました。
山陽放送の原社長からはメディアとしての映像の重要性と共に、災害時に起りえる停電やアンテナの破損などへの事前対策の必要性を学びました。災害時の正確な情報発信は、人々の不安の緩和、根拠のない噂の流布や暴動の防止につながります。ネパールでは普段から停電が多くテレビよりもラジオを聞く人が多いため、ラジオ放送の継続と充実にも力を入れる必要を感じました。
今回研修を受けた放送局では、今後起こるであろうと予測されている地震・津波に備えて、放送局内で毎月防災訓練を行っています。幸いなことに、山陽放送では実際に防災訓練を間近に見学させて頂くことができました。まるで実際に発災したかのような緊張感のある訓練を見て、日常的な訓練がいかに大切かを是非ネパールに伝えたいと強い使命感が湧きました。 この貴重な取材を通じて学んだ、災害時の報道としての大切な役割をネパールの報道関係者にも共有したいと思います。