理事長 鈴木 俊介
謹んで新年のお喜びを申し上げます。
ただ今年に限って申し上げると、お祝いムード、楽観ムードはいささかも感じられません。令和3年(2021年)は、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、昨年のこの時期には想像もしなかった苦難と不透明感を連れてやって来ました。
この間、新型コロナウイルスへの感染により亡くなられた方々に対し謹んで哀悼の意を表します。そして今、病室のベッドで命をつなぎとめておられる方、退院はされたものの、後遺症に苦しんでおられる方を案じています。医療・介護従事者の方々の献身的なケアのご提供に心より感謝申し上げます。見えない敵と向き合う日々の緊張とストレスはいかばかりかとお察しします。また、希望と落胆の間で疲弊されている旅行業界の方々、飲食業やサービス業の方々、十分な公的支援を得ることができない多くの方々に思いを馳せるとともに、改めて、この感染症がもたらした社会的影響の大きさと深刻さに驚いています。
さらに、こうした影響は世界規模で止むことなく拡大しており、悲痛な叫びは生活保障や健康保険などの公的制度が整備されていない途上国において、今後もさらに大きくなると予想されます。ワクチンの開発に一筋の光を見出すことはできますが、ワクチンの有効性、長期的な安全性、接種機会へのアクセスなどに課題が残っていると理解しています。一方で、ワクチンを接種された人が死亡するなどの悪い知らせや、ワクチンは実は殺人兵器だ、などというデマが流される可能性、またたった一つのそうしたデマがSNSなどを通じて拡散されることにより大きな社会的問題が引き起こされる可能性も否定できません。今最も大切なことは、感染対策を継続する力、真実を見抜く力、軽率、安易な行動を律する力、人を信じる力、感謝する力、尊敬する力、許す力であると思います。つまり、知性と人間力が試されていると考えます。
そして当法人にとっては、事業国における仲間、関係者とともに、困難に立ち向かい、事業を継続運営する団体力も試されています。昨年の3月から、人が集まる、移動する、そして接触する活動は、極めて大きな負の影響を受けました。幸い、すべての邦人職員が日本に帰国しなければならない状況には至りませんでしたが、ほとんどの事業国、特に人口密度の高い都市周辺地域において、日本とは比較できないほどの厳しい外出制限や一定規模の集会禁止措置などが施行され、現行事業の円滑な推進に支障が生じました。それでも、現地当局との度重なる協議を通じて、また特別な許可を取得して、対象となる住民と「命を守る」多くの活動を継続し、成果を上げることができました。当初の計画にはなかった、ホンジュラスにおけるハリケーン被災者への支援活動も含め、困難な環境下における多様な活動の推進に努め、受益者一人ひとりへ成果を届ける取り組みに注力頂いたすべての関係者に敬意と感謝を表します。
最後になりますが、支援者の皆様から頂戴した旧年中のご理解とご協力に対して改めて、心より感謝申し上げますとともに、皆様方とご家族の方々の一層のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。引き続き、当法人ならびにAMDAグループの2021年の活動にご協力賜りますようお願い申し上げます。