AMDAバングラデシュ支部活動視察(2)~ダウン症の子ども達の支援と啓蒙普及活動~ – AMDA(アムダ)
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国連経済社会理事会総合協議資格NGO

AMDAバングラデシュ支部活動視察(2)~ダウン症の子ども達の支援と啓蒙普及活動~

AMDAグループ代表 菅波 茂

ダウン症の子ども達と

私のもう一つのダッカにおける目的は、AMDAバングラデシュ支部の行っているダウン症の子ども達のケアーとその両親たちへの啓蒙普及活動の視察である。AMDAバングラデシュ支部のラザック事務局長が自宅を開放して、11年前から、そのプログラムを実施している。今や、その活動は全国規模となり、世界組織のバングラデシュ支部として認められ、注目されている。街頭キャンペーンもしている。数年前にダッカ大学コミュニケーション学部長であるハキム教授とも協定を結んでアカデミックな支援も得ている。

岡山には1957年に設立された全国的に有名な旭川荘という重症心身障碍児施設を有する社会福祉法人(理事長:末光茂)がある。当時、重症心身障碍児は母親の前世の因果により生まれると誤解されていた。戦後の生活が苦しい時代に母親にとっては厳しい2重苦であった。母と子の直接支援だけでなく、重症心身障碍児は、母親の前世の因縁ではなく、疾病であるという啓蒙普及活動が行われた。多くの母親が精神的苦痛から解放された。岡山県にあるハンセン病の患者が収容されていた長島愛生園や光明園でも同じであった。

昔、ハリウッド映画で有名な「ベンハー」を観た。ハンセン病に罹った主人公の家族がキリストの愛で治癒するというシーンがあった。世界各地のハンセン病患者の多くの施設がキリスト教関係者によって運営されている。すばらしい感動的な内容だったが、このストーリには、医学的にハンセン病は感染症であるという事実からは少々無理があった。

私はダウン症の子ども達の母親を前に短い講演をした。当然、母親たちはイスラム教徒である。「私は仏教徒です。仏教徒の立場から言えば次の2点が言えます。1点はダウン症の子ども達は神に許しを請うような盗み、殺人、強姦、嘘つきなどを絶対にしない人として高いレベルの心を持っています。2点はこの子たちは社会的生活を営むのには不利な障害を持って生まれるので、愛情豊かな女性を母として選んで生まれてきます。即ち、母親は選ばれた愛情豊かな女性なのです」と。更に、コックスバザールにあるロヒンギャ難民キャンプで経験したことを紹介した。「ロヒンギャ難民キャンプに開設しているAMDAクリニックの前の家に住んでいるダウン症の女の子が両手に1ケのお菓子を持っていました、その1ケをほかの子どもに分けてあげる光景を目撃しました。難民キャンプでは品物不足で、特にお菓子などを欲しがっていました。この女の子の行為には感銘しました」と。この講演の後に、母親たちが自信を持ってくれたような気がしたのは錯覚だろうか。


人生の喜びには3つある。1)自己実現、2)自己表現、そして3)自己昇華である。

1)自己実現とは意欲と能力があれば機会(お金かポジション)をもらって自己実現をすることである。逆に、意欲と能力があるのにもかかわらず機会が与えられないことは差別である。

2)自己表現とは歌、踊り、衣装、詩や俳句などの芸術活動で自己表現することである。

3)自己昇華とは人に親切をして喜ばれること。「有り難う」と言われることである。
 







バングラデシュ支部ではダウン症の子ども達に自己表現の喜びを教えている。子ども達が喜んで活発に踊っている姿は嬉しいものである。更に、自己実現の喜びをめざして、職業訓練の初歩的な教育をしている。大口で仕入れた食材料を小分けにする訓練である。