ロヒンギャ難民医療支援活動13: 第2次医療チーム派遣、押谷看護師からの帰国報告 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

ロヒンギャ難民医療支援活動13: 第2次医療チーム派遣、押谷看護師からの帰国報告

【派遣期間】

2018年2月1日~2月13日



【支援活動参加の経緯】

昨年11月に、「AMDA緊急救援(ER)ネットワーク」登録者対象に、ロヒンギャ難民医療支援活動参加の募集があった。8月にロヒンギャ難民問題が日本でも報道されていたが、日が経つにつれ報道が少なくなり、自分自身で現状を見に行きどのような支援ができるかを提言できればと思い応募して参加となった。



【関わった活動内容】

ロヒンギャ難民キャンプ内にある日本バングラデシュ友好病院が運営する診療所にてAMDAバングラデシュの現地スタッフと国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)から参加した医師2名と診療、難民の方へのインタビュー、10月からの疾患別患者集計、診療所環境改善への助言を行なった。








患者数は1日に120人から130人訪れる。男性、女性、子供の受診数はおおよそ均等に分かれている。主な訴えは、胃痛・発熱・風邪症状でそれに対して薬の処方を行なっている。時折、他の支援施設への紹介や、逆に医薬品を持ち合わせていない施設からの紹介がある。診療所の環境としては、朝から患者が押し寄せ、待合もなく床に座っている状態が続いている。野次馬も多く、プライバシーの保護については早急に必要と感じたため、提案するが、診療所改築については現在政府からの承認待ちで、来月には診療所スペースを拡大し、女性や子供に対してのプライバシーが確保できる予定である。待合に椅子も用意される予定で、さらに患者に優しい診療所に改善していける予定である。



UNRWAの医師は彼ら自身がパレスチナ難民であり、自分たちも難民としての生活をしながら、海外で学ぶ機会を得て医師となり、UNRWAで多くの人を支援してきた。彼らとともに、難民キャンプの現状、疾患別データをもとに話し合った。詳しいデータ分析はこれからしていく予定であるが、UNRWAの医師のデータ分析ではこれから生活習慣病も増えてくる傾向にあるため、生活習慣病をターゲットにした診療所も必要になってくると思われる。また彼らの実体験があるからこそわかったことであるが、難民たちの不安や身体的、精神的な症状を訴えている患者が少ない。もう少し聞き出すことができる環境が必要であると感じた。



不衛生な状況での生活のため皮膚疾患が増えてきている。衛生面の改善も急務である。ゴミの問題は第1次派遣された米田医師も提言しているように、この国全体の大きな問題であると考えられる。注射器や他の医療資機材でさえ、普通に道端に破棄されており、これら医療廃棄物からの感染や子供が注射器を誤って拾ってしまった場合のリスクが非常に怖いと感じた。しかしながらこの問題は短期間で解決できるものではなく、長期的に教育していく必要がある。医療者としては医療廃棄物の管理は早急に必要である。



【難民の生活環境】

キャンプはおおよそ100世帯くらいで居住区画が分かれている。それぞれにリーダーが存在している。居住区画では週一回、ミーティングが行われ区画で活動するNGOや他の団体が集まり現在の状況や今後の課題について話し合われている。また、キャンプ内での支援団体の活動把握も2〜3日ごとに行われ、政府に申請している内容と違いがないかチェックされていた。以前は学校がなかったようであるが、今は一時的な教育施設が作られていた。授業は1日のうちで9時から2時間ごと4回の授業が受けられるようになっていた。すべての子どもが学校に行けているわけではないが今後少しずつ増えていくことを願う。



今後政府は、ロヒンギャ難民キャンプを20の区画に分け、安全性を確保しそれぞれのサービスに届きやすいようにしていくようである。しかし残念ながら現状では支援が行き届いていないため、キャンプ内にて物乞いをする人も見受けた。雨季になると低い位置にある家は浸水の恐れもある。感染症の蔓延の懸念もあり一刻も早くこの環境が改善されることを願う。



【難民の方の声】

現在の問題を伺うと、やはり下水道の問題が一番に上がってきた。居住スペースの周囲が汚水にまみれてしまうため清潔が保つことが難しかった。これから雨季になり悪化することを懸念していた。










診療所に訪れる難民の方に今の生活について心境を伺った。劣悪な環境に置かれているため環境改善への不満があるだろうと予測していた。しかし彼らから返ってくる答えは、誰かに襲われるという恐怖から解放され、家族と安全に暮らせる環境がここにあることが、ここバングラデシュに避難してきてよかったと言っていた。日本では想像できないほど劣悪な環境の難民キャンプでも、今の彼らにとっては、家族と共に安心して暮らせる必要な場所だった。また、このような思いが聞けたのは、今回一緒に参加したUNRWAの先生がいたからだ。私は何故、自分の予測している答えが返ってこないのかがわからなくなり、UNRWAの医師に伺った。彼らから、「人が生きていく上では安全が第一。安全が確保されてから生活の問題や環境の問題が出てくる。」と教えていただいた。普段何気なくある安全がこれほど人々の生活に影響を及ぼすことになると初めて気がついた。そんな恐ろしい目に遭いながら、それでも彼らは、ミャンマーの安全性が確保されれば故郷に戻りたいと切に願っていた。そんな彼らのためにも、診療だけでなく、衛生環境改善への手助けさらには教育支援が行き届き、彼らが故郷のミャンマーに帰った時に、自立して新しい生活を築けるような支援ができればと思った。



【参加して】

今回、初めて調整員の方がいない派遣を経験した。今まで調整員の方がしてくださっていたことがいかに大変かを知ることができいい機会となった。



今までの派遣ではホテル滞在だったが、今回は現地スタッフと生活を共にすることでバングラデシュの習慣や言葉、生活スタイルを知ることができたことはとても良い経験となった。今回の派遣は、災害派遣とは異なり、長期的な支援になると伺っている。これから健康教育等を行なっていく必要性が増えてくると思う。