2017年1月19日、AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム事前交流として医療チームが徳島県美波町を訪れました。訪れたのは佐藤拓史医師(AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム運営委員会副委員長)、鈴記好博医師(徳島大学大学院総合診療医学分野、美波町国民健康保険美波病院所属、AMDA兵庫副理事)、福山医療センターの医師、調整員の2名です。AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム協力医療機関の美波町への事前訪問は初めてで、福山医療センターの自治体との事前交流は徳島県牟岐町に続いて2回目となります。福山医療センターは、南海トラフ災害が発災した場合徳島県の美波町、牟岐町に医療チームを組んで支援に入って頂く予定です。一行はまず美波町役場を訪れ、山路和秀副町長と面会しました。
美波町は、少子高齢化や人口減に直面し、海辺に面した町として南海トラフ地震による津波の脅威にさらされています。海岸沿いの平地に市街地が開けており市街地の多くが浸水想定区域となっています。最大津波高さは、阿部漁港付近の約18mで、町中心部である日和佐港では約10m、津波影響開始時間は、由岐漁港口で12分、日和佐港入口で10分です。町役場があり中心部となっている日和佐中心部は浸水想定区域が広く、大きな被害が懸念されています。美波町は地震の発生源に近く、大きな揺れが発生し津波の高さが大きく、かつ到達するまでの時間が極端に短いという災害特性があります。漁港近くに津波防災タワーが建てられているが、高さが不足することとなったため使用できない状況とのことであることも副町長自らご説明くださいました。
その後、美波町役場の職員の方にご同行頂き指定避難所や関係施設を回りました。日和佐地区の日和佐総合体育館、日和佐中学校、赤松地区、防災計画として建設中の医療保健センターを訪れました。赤松地区は、日和佐地区の高台に位置しています。旧小学校跡地にヘリポートが建設されており、現在敷地内に防災施設を建設中です。赤松町民グラウンドの体育館と隣接する美波町基幹集落センター、近隣の集会所等を外観から確認しました。
日和佐中学校グラウンド
赤松地区のヘリポートと建設中の防災施設
それから由岐地区へ移動し特別養護老人ホームねんりんを外観より見学、国民健康保険美波病院を訪れました。ここは平成28年3月、海から500m以内と近かった旧由岐病院と旧日和佐病院(現・日和佐診療所)の町立2病院を同時期に移転、高台移転し新病院として開院しました。
開院本田院長、鈴記先生、橋本事務長にご案内頂きました。美波町由岐地区は、南海トラフ災害が発生した場合、支所や小中学校等の公共施設を含む地域のほとんどが津波で浸水すると想定されており、地域住民の避難所となる施設がありません。そういった地域事情を考慮し美波病院は地震発生から1週間程度、病院の入口スペースを住民の避難所として開放することになっています。訪れた医療チームは病院内部の免震構造と施設内部の見学をしました。病院の外にアムダの使用可能な倉庫スペースを準備下さっていました。
特別養護老人ホームねんりん
美波病院にて
福山医療センター坪井医師は、「町全体の防災意識の高さを感じた。地元が一丸となって取り組まれている姿に感銘を受けた。被災が予測されている現場を実際に自分の目で見ることで、具体的な支援をイメージすることができた」と語りました。浮田調整員は、「美波町役場の方に防災に関する質問をしてもすぐに答えが返ってくることに驚きました。地元の方々と直にお話ができ、活動予定場所を確認することができて有意義だった」と語りました。
引き続きAMDAは、南海トラフ災害による被災が予測されている被災地パートナーと緊急支援にご協力くださる医療機関、スタッフとを事前に繋ぎ、実際に災害が発災した時により迅速な動きに繋がっていくよう準備を進めていきます。