AMDAでは近い将来発生が予想される南海トラフ災害に向けて、事前準備を進めています。
甚大な被害が心配される徳島県と高知県の9市町に支援チームの派遣を予定しており、予め支援協力を表明してくださっている医療機関と基礎自治体のマッチングを行っています。医療機関の方々とともに、支援に入る予定の基礎自治体を訪れ、事前に市町の状況や行政の方と顔合わせをすることによって、具体的な支援活動のイメージが湧きます。
2016年12月9日、諸國眞太郎クリニック(岡山県岡山市)の諸國眞太郎先生が徳島県牟岐町を訪問しました。諸國眞太郎先生は、東日本大震災時にJMATとして発災後2週目に宮城県石巻市で活動されていました。その時に、毎朝ミーティングをするなど、チームが一つになるための取り組みが一番重要だと思われたそうです。そういった経験をもとに、今回は牟岐町の医療立ち上げとして発災時から活動に参加してくださる予定です。
岡山から瀬戸大橋を渡り高松自動車道の高松西ICで高速道路を降りて、国道193号の一般道で徳島県内に入った一行は、最初に後方支援拠点となる徳島県美馬市のホウエツ病院を訪れました。林秀樹院長から、ホウエツ病院内部や自衛隊機も離発着可能なヘリポートをご案内いただき、四国の重要な後方支援拠点であることを確認しました。
続いて徳島市内から2時間かけて牟岐町へ向かいました。
牟岐町の医療面での関係機関として、地域災害拠点病院である海部病院を訪れました。現在の海部病院は、海に近い立地で南海トラフ災害による津波被害が懸念されており、抜本的な津波対策として津波被害の及ばない高台への移転をすすめています。当日は、牟岐町民の方々とともに、徳島大学から海部病院に研修に来ている医学生の皆様の実習報告会と坂東院長による新海部病院や地域医療についてのお話を聞きました。お話によって、町が現在抱えている医療に関する問題点やそのための取り組みや、牟岐町全体のことが掴めました。また、災害時のコーディネートを担当される浦岡秀幸副院長にもお会いすることができました。
その後、牟岐町役場を訪問し、大森博文副町長から津波避難マップを用いて説明を受けました。牟岐川に掛かる橋が寸断された場合には、避難所との行き来をどうするかなどの課題が挙がりました。
防災担当の新田貴文主事に牟岐町の指定避難所や町を案内していただきました。
来年4月に完成予定の新海部病院を訪れ、南海トラフ災害発生時にはここが医療や行政の拠点となることを確認しました。高台に位置する新海部病院は免震対応がなされており、また屋上にヘリポートや他県からもたくさんの救急車を受け入れることのできる想定であることお話いただきました。
引き続き、町の交通網を確かめるとともに、牟岐町内で指定されている避難所の牟岐小学校・中学校、老人保健施設「和楽」、特別養護老人ホーム「緑風荘」を訪れました。
同行いただいた牟岐町の職員の方より、町全体で南海トラフ災害に向けて真摯に取り組まれており、避難訓練時には津波避難タワーにのぼる訓練などを町民全体で取り組んでいるというお話を伺いました。
事前交流を終えて諸國先生は「牟岐町を訪れて、実際に立ち上げを担当するにあたり、岡山で漠然と考えるより緊迫感を感じた。町民の皆様との心の触れ合いも大切にした支援活動にも力を注ぎたい」と意欲的に語っていました。
行政の方々や医療機関の方々とともに使命感をもって事前にこうした準備を進めることで、たくさんの命が救えると考えます。