岡山市立富山公民館とのご縁は、2020年2月に岡山市も主催となって開催されたSDGsフォーラムの分科会がきっかけです。その後、災害時への具体的な備えを急がれているということで「気候変動で激化する災害に備えて考えておきたいこと。~あなたの『大切な人』を守れますか?~」というテーマで、避難所の実際、感染対策、住民の方に期待する役割についてお話させて頂きました。
気候変動の影響で水災害が増えており、日本国内でも広域の被災により早期に全容をつかみにくいケースが増えています。加えて、新型コロナウイルスの影響で、避難場所が分散していることも、全容が把握しにくくなっているひとつの要因だと思います。直近の、令和元年7月豪雨の際の熊本県においても、被災者が指定避難所への避難を選ばず小規模の自主避難や車中泊を選択する方、早めに親戚の家へ移られたり、新たな住居を見つけ早期に転居されていく方もいらっしゃいました。ただ、分散して避難というのは簡単にいかないのが現実ですし、公民館のような指定避難所でも感染対策をしっかり行うことで少しでも快適に過ごせるよう工夫することができます。そのためには住民さんの参加が大切です。私自身も、被災地での活動で初めて伺う地域が多く、住民さんには現場で本当に助けて頂いております。
平時の準備の中にも新しい工夫・知恵に果敢に挑むこと、試してみて改善すること、実際の災害時にはそれまでの準備を基礎として積極的に外部の助けを受ける、そして平時の自分たちの準備を最大限生かすことが「誰ひとり取り残さない」コツなのかなと感じています。
以下、内容をご紹介いたします。
〇「困った時はお互い様」の精神
アムダの考え方をご紹介させて頂きました。
〇受援の考え方
災害時は、人や物、環境が限られ、需要と供給のバランスが崩れてしまいます。行政職員の方、住民さんご自身も被災されている中で、次々とやってくる物資、支援、情報に追われるのは大変なことです。支援を受けるにも多大な労力が必要です。労力が必要だから、自分たちで頑張るといっても1週間程度が限度で、身体的にも精神的にも疲弊してしまいます。外部支援を得る可能性を踏まえ、まず「助けを求めてよいこと」を認識し、「誰にどのようにお願いするか?」という想定をして準備されるとよいことをお伝えしました。
〇どのような準備をしていてくださると助かるか
急性期は人や物が不足するといわれますが、逆に過剰となり場所の確保や調整に追われることもよくあります。被災地の職員さんや住民の方も目の前のことで精一杯で「休まず頑張ってしまう、頑張らざるを得ない」状況になります。無理なく避難所運営をスムーズに行うためには、指揮命令系統の整理、上手に役割分担を行い交代できること、目に見える形で情報共有できるよう工夫する、これらを考えておくことが、災害時の混乱を和らげる一助とはなるのではと思います。
〇情報共有の行い方
需要と供給のバランスが刻一刻と変わる中で、「風通しの良い、効率の良い情報共有はどのようにすればよいか?」「交代で休めるようにする工夫は?」とご質問を頂きました。災害発生後、早期に住民さんの代表も入った代表者ミーティングの実施で暫定的に決めて実施していく、決定したことは目に見える形で書いて掲示していく、状況が変化しやすいので、適宜柔軟に変えていく、変わったら適宜放送など使いしっかり周知していくなどお伝えしました。
〇誰ひとり置き去りにならないように
住民さんからご質問もありましたが、大規模災害が起きると現実的には福祉避難所が整うには時間が必要です。
急性期には、避難所の中でサポートが必要な方の「福祉避難スペース」を設置するなどして対応する必要がある、気になる方は早めに福祉サービスに繋ぐ、等、これまでの被災地で工夫されていた事例をお伝えしました。
コロナ禍ゆえに、以前にもまして男女参画の視点、多種多様な人の様々な立場、選択肢を考える必要があると思います。感染対策に気をつけながらできること、気をつけながらも、「困った時はお互い様」の精神で協力して取り組んでいければと思います。講演後にも地域での災害対策への熱い思いを語って下さった富山公民館館長の澁谷様、担当の中山様、またご参加頂き地域の実情とともに色々質問くださいました住民の皆様、この度は貴重な機会を頂きましてありがとうございました。今後のアムダでの活動準備にも生かしていきたいと思います。
富山公民館でご担当下さった中山様より、コメントと参加者のご感想をお送り頂きましたのでご紹介いたします。
岡山市市民協働局市民協働企画総務課
2021年2月12日、岡山市男女共同参画大学「さんかくカレッジ」の第2回目をAMDAの橋本さんに富山公民館で講演をお願いしました。災害が多発している今、災害時に誰も置き去りにしないために、災害時にどう備えるのか、避難所運営はどうしたらよいのか、地域防災の在り方はどうあるべきなのかが緊急課題となっているため、過去の災害からみえてきた問題をジェンダーの視点でとらえて災害の現場で何が起きているのかを地域の皆さんに学んでもらうことができました。今回の講演からAMDAの「相互扶助」=困ったときはお互い様の精神が日頃から人間関係を優先して人と人を繋ぎ、多様な立場を考えながら誰も置き去りにならないための人間関係を日頃から準備し築くことの重要性を学ぶきっかけとなりました。
【受講された地域の方からの感想の一部をご紹介します。】
◆70代 女性
AMDAのことをあまり知りませんでしたので、今日参加させていただきよくわかりました。
「相互扶助」はとても大切な事と感じました。災害時の対処の仕方が少し分かったような気がしました。
◆70代 男性
現場主義の経験者(AMDA)の講義は深い。説明は現実味があり有意義であった。災害が起こったとき、避難所など地域の人たちの連携が大切だと感じた。要支援者は誰が対応するか予め決めておきたいと考える。
講演の様子
(令和元年7月豪雨)