鎌倉第一中学校 防災教育の実施報告 – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

鎌倉第一中学校 防災教育の実施報告

プロジェクトオフィサー 橋本 千明


2016年4月熊本での様子

「災害時に、中学生にできることはなんでしょうか?」皆さんは、どんなことを思い浮かべますでしょうか。災害の起きていない平常時にこのようなご質問を受けたのは、初めてだったように思います。

神奈川県にある鎌倉第一中学校は、防災教育に力を入れています。今回は、日頃AMDAにご支援頂き、同中学校への防災教育に長年関わっておられる中外製薬株式会社様よりご紹介頂きまして、2021年2月21日に、橋本より中学校の皆さんへオンラインによる講義を行いました。

事前に学校の先生方と打ち合わせさせて頂き、「災害時の避難所の実態」「避難所における感染対策」「避難所で中学生に期待する役割、の3点の内容を軸にお話しました。

事前にまとめて頂きました質問は多岐にわたりました。関心は避難そのもの、避難所運営にとどまらず、新型コロナウイルスの影響もあり自分たちにできる感染対策についても多くの質問が出ました。
「コロナ禍において避難者の中に重症患者が出た場合、どのように対応すればよいか?」「コロナだけでなく、感染症にかかってしまった人が出たらどのように対処するのか?」「飛沫を防ぐために会話を減らしてもらう方法はあるのだろうか?」

中学生にできることとして、「私たちにできる運営とは具体的にどのようなものなのか?中学生がやれることで一番大人が助かるものは何か?」と忙しい大人へどのように配慮したらよいか、という質問がありました。

個人的に印象深い被災地での中学生の姿は、私自身、初めて派遣された2016年の熊本地震の時に出会った男の子です(写真右上)。前震に続き、誰も予期していなかった本震が深夜に発生しました。私もチームの皆と居合わせたのですが、避難先でほっと一息ついた矢先で本震に遭遇した避難者の方々は、2度の大地震に加え、昼夜続く余震、鳴りっぱなしの地震アラーム音に精神的にも大変落ち着かない日々だったのではないかと思います。
そのような中、避難所で初期の食料配布、食事を取りに来られない高齢者へのお届け、水汲みの手伝いなど、地元の小・中・高校生は自分たちができることに奔走していました。もしかしたら、奔走せざるを得なかったのかなと思います。

停電の中、「自分たちの地元だから、自分たちの学校だから」とヘッドライトをつけながら、食事を配って回っており、私たちにも「ごはん食べましたか」と声をかけてくれました。時には体調の優れない方をみつけチームへ声をかけて下さったり、避難所の混乱が落ち着いていく一助となっている姿に、私自身大変勇気づけられ、すごいなと思いました。直近の2021年7月の熊本における豪雨災害の活動においても、感染対策を行いながら中学生と段ボールベッドやパーテーションを組み立てたりさせて頂く機会もありました。

そんな経験をさせて頂いたことで、「例えば中学生ができることにこんなことがある、分からなかったら人に聞いてみて欲しい、聞いたら仲間に伝えて欲しい、状況が変わりやすいので大人だからといって完璧を求めすぎず、大らかな気持ちでいてくれると良い」などお伝えしました。

学生さんたちより後日、ご感想を頂きましたので、一部をご紹介させて頂きます。また、このような機会を頂きましたことを感謝申し上げます。

災害時にとる行動

お話を聞いて、災害が起きた時にとる適切な行動を学べた。先週の突然の地震のようにいきなり大きな地震が来るとこわくてすぐには動けなかったしどのような行動をとればいいのか分からなくなってしまうので、このお話を通してとるべき行動が学べてよかった。私はまだ子供だし大人の役に立たないことが多いけど、災害時には生きのびるために積極的に手伝いをしたいと思った。私の家にある防災用品でライトなどの大切な物が抜けたりしていないか確認して災害がいつ来てもすぐ行動できるようにしようと思った。

中学生にできること

コロナの中での避難活動は大変であると改めて感じた。避難先で感染してしまった時、誰でもとても不安な気持ちや申し訳なさがあり、ストレスを人一倍感じてしまうと思う。誰かが悪いわけではないので文句を言わずに、多くの人が協力して過ごすことのできる避難所を作っていける人になりたいと思った。不安を抱えている人の話を聞いたり、物資運搬の手伝いなど、私たち学生ができることは多くある。そのできる事をたくさん見つけて共助していくといった意識を持つことが大切である。鎌倉に住み、津波の被害が大きいことが予想されるからこそ、防災教育で得た知識を活かせるようにしたい。

自分たちでできる感染対策

感染予防をすることによって、衛生的にも向上することが分かりました。たとえば、手洗いをしっかりして手指消毒したり、マスクなどで飛沫を予防したりしているからです。でも、マスクを使用することができない人も周りにいるので、しっかり理解することが大切だと感じました。避難所では不特定多数の人と接触するので、自分で自分の身を守る事も必要だと感じました。みんながピリピリしている中でどうしても見過ごしてしまうこともあると思うので、こうした機会で細かいことや実体験、現状を知れる事は、すごく貴重だと思いました。災害が起こる事は予測できないけど、知識を付けとく必要があると感じました。

正解のない選択肢の中で、自ら考える

印象に残ったものは、災害時は正解のはっきりしていない選択が多いという事が分かった。例えば、コロナに感染しないため6日間車内で避難していた人が水不足や栄養不足による病気にかかってしまった、とあった。この人はコロナにかかりたくなくて避難所には行かないという選択をした。間違っているか正解なのかという事ではなく、その人のその時の判断が結果的にそうなってしまっただけで、避難所に行っていても何かのトラブルになっていたのかもしれない。小学校、中学校だと避難訓練をするが、大人になっていくにつれて少なくなっていく。その中で特別な緊張感の中での判断というのがとても難しいことなんだという事が分かった。

また、このコロナ渦の中なので、気を付けるべきこと注意しなければいけない事が増え、もっと難しい選択を災害時にしなければいけなくなる。普段の細かい日常からも自分で考え、行動することが大切だとわかった。