世代間の継承、我、知らぬ間に – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

世代間の継承、我、知らぬ間に

月二回ほど、AMDAで四半世紀以上ボランティアをされているIさんが作業をしに私達のフロアーにやってきます。AMDAで最もボランティア歴が長いIさんは、AMDAの軌跡と変遷を目の当たりにしてきました。単純にその年月を考えると、当時生まれた子供が成人し、すでに社会で活躍している頃です。そんな彼女の話を聞きながら、最近個人的に思いを馳せたことについて書いてみたいと思います。

私が普段英語を教えている生徒が昨年の春からAMDA中学高校生会に入会しました。現在中学3年生です。彼が私のところに英語を習いに来たのは、今から十年以上も前のこと。当時おそらくまだ3、4歳だったように思います。内弁慶で教室に入れず、レッスンが始められないので、泣き叫ぶ本人をお母さんから引き離し、教室に強引に引きずり込んだのを昨日のことのように思い出します。

英語を教える傍ら、当時から私がAMDAで勤務していたことなど本人は知る由もなかったわけですが、昨年、ひょんな経緯で中高生会に誘ったところ、彼は短期間ですっかりAMDAに染まっていったのです。入会から数ヶ月後、早くもスリランカの平和構築交流に参加し、現地で民族や宗教の異なった同世代の子供達と交流しました。そして、その冬には、国際交流センターで行われた報告会で、在大阪スリランカ名誉総領事をはじめとする多くの方々の前でその成果を発表しました。

スリランカでは日本の文化を紹介するプレゼンテーションを行い、篠笛の演奏も披露したそうですが、事前準備の段階で本人がパソコンで作成したスライドを見せてもらったところ、大人顔負けの完成度に驚愕しました。普段、彼と私が顔をあわせるのは、週一回の英語のレッスンの時だけです。この十年余り、ずっと彼を見続けてきたつもりでしたが、思えばそれも教室の中だけでのことでした。そんな彼の知らなかった一面を見て、“教室に入ることができなかったあの子が、いつの間にかこんなに成長していたとは”と、感慨も一入でした。

先生という生業においては、卒業していく生徒を送り出すことは職業上の常です。教える方の身分は然して変わらずとも、生徒は毎年巣立っていき、先生は自動的に年を重ねていきます。

彼もこの後高校に進学することになりますが、高校を卒業したら、AMDAを巣立つ時が来るかもしれません。中学3年で中高生会に入会し、大学受験前まで活動したとしても、期間として考えればAMDAに在籍するのは三年余り。冒頭のIさんが四半世紀という時間をAMDAで過ごしてきたことに加え、自分がAMDAに携わってきた年月、そして最近入会した彼の年齢や経緯などを考えると、どこか自分の知らないところで世代間の継承が行われているような感覚を覚えます。

AMDAが産声を上げて三十年余り。今後もこのように自然な形で活動が引き継がれていくことを切に願う次第です。

近持 雄一郎