AMDAカンボジア支部長リティ医師(後列中央)と
サッカー少年たち
2013年6月8日から3日間、カンボジアを訪問した。プノンペン市内を流れるメコン川に面したスラムにある小さく貧弱な学校を視察した。「River Kids」という地元のNGOが運営している。シンガポールの信託財団「レモンの木」が資金援助をしている。出資者は名古屋の篤志家である。スラムでは川岸に建てられたトタン屋根と壁の高床式の粗末な家が危なっかしい木の回廊でつながっている。家々には水道や便所はない。雨季には川の水が押し寄せる。まず日本人には耐えられない環境である。訪問した日は卒業式だった。卒業証書とプレゼントを受け取った子どもたちはうれしそうだった。スラムの貧困から脱出できる夢と希望をいだいた瞬間だった。
AMDAのカンボジアでの活動は、1992年のカンボジア帰還難民緊急医療支援事業から始まった。その後タケオ州でアジア開発銀行とカンボジア政府によるプライマリーヘルスケア3カ年事業を実施主体として担当した。現在はコンポンスプー州でグローバルファンド基金のマラリア対策事業とコンポントム他2州で150万人を対象にドイツ開発銀行の性と生殖に関する健康推進事業を実施している。一方、スラムの子どもたちが麻薬に手を出さないようにサッカーチームを育成している。AMDAカンボジア支部長のリティ医師にお願いした。「River Kids」のサッカーチームと交流試合を実施することを。ちなみに、このNGOは今年2名をブラジルに送り出すとのことだった。
世界には学校教育をまともに受けられない子どもたちがいる。孤児、障害児、スラムの子、被災地の子、そして山岳民族の子たちである。貧困と密接な関係がある。教育は貧困から脱出の有効な方法である。親も知っている。
教育には知的教育と感性教育がある。感性教育の一環として芸術教育がある。AMDAの芸術の定義は「芸術とは魂のコミュニケーション」である。民族、宗教、性別、年齢の違いなど軽く凌駕する。AMDAは過去において災害後遺症の心理的治療や紛争当事者の相互理解推進に芸術の効用を用いてきた。感性豊かな子どもたちには特に有効だった。
「ワールド アートキッズ フェスティバル」を夢想している。株式会社林原が2008年から林原国際芸術祭“希望の星”「モナリザを描く」展で自閉症など障害のある子どもたちが描いたモナリザの絵をフランスやシンガポールなど世界各地で展覧した。大好評だった。AMDAは過去30年間の活動において孤児、障害児、スラムの子、被災地の子そして山岳民族の子たちと接点がある。そして世界30ケ国の支部と50以上の姉妹団体がある。林原“希望の星”のメッセージは「障害は進化」である。AMDAのメッセージは「芸術とは魂のコミュニケーション」である。世界の30〜100ケ所、1ケ所で30〜100名くらい。同一テーマで子どもたちが描いた絵を積極的に展覧する。突出した感性と才能。貧困からの脱出も可能である。同時に「自分たちは見放されていない」というメッセージを受け取る時に、子どもたちが抱く夢と希望が多様性の共存への第一歩である他者への尊敬へと昇華されると確信している。