世界各地で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症(2020/7発行ジャーナル夏号) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

世界各地で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症(2020/7発行ジャーナル夏号)

フィリピン 〜オンライン無料医療相談、医療機関への個人防護具の提供、ウェブセミナー〜

フィリピン担当:岩尾智子

 

オンライン無料医療相談


フィリピンでは、ルソン地域およびセブ地域を中心に課されていた「コミュニティ強化隔離措置」により不必要な外出が禁止されていました。これにより、いつもは大渋滞に悩まされるマニラも静まり返っていて、日常生活に必要不可欠な商店、医療機関以外は閉まっており、公共交通機関も止まっていました。自家用車がない人は医療機関へのアクセスも限られ、かかりつけの個人クリニックなどは閉鎖しているところもありました。現在、緩和傾向にあるものの、隔離措置は継続中です(6月10日時点)。

このような中、AMDAフィリピン支部はオンラインの健康相談を受け付けることで病院に患者が殺到するのを防ぐと同時に、医療面で不安を抱える人が取り残されることのないよう、3月23日から4月17日までオンライン無料医療相談を行い、相談件数はのべ973件となりました。

今回の健康相談への対応は、AMDAフィリピン支部、フィリピンの協力団体及びAMSA(アジア医学生連絡協議会)の学生、教職員ボランティアに加え、医師、薬剤師をはじめとした医療者、計105人にご協力いただきました。

医療機関を中心に個人防護具などの物資を提供


新型コロナウィルス感染症の影響により、フィリピン全土でも不足しているマスク、フェイスシールドを含む個人用防護具、エアロゾールボックス*、トイレ用品などを、4月中にAMDAフィリピン支部と繋がりのある医療機関を中心に、計18か所で物資を提供しました。提供したフェイスシールドは、AMDAフィリピン支部医師宅近くに住む近所の人や子どもたちからの協力を得て、400個を手作りしたものです。物資を受け取った方からは、「このような支援に感謝しています。この新型コロナウイルス感染症による危機の中で、最前線で戦う医療者のために使用します。」「ありがとうございます。これが落ち着いたら、今度はAMDAを助けたい。」とコメントをいただきました。

*個人用防護具が不足する中、挿管などの際に出るエアロゾール粒子から医療者を守るための透明な箱。

新型コロナウイルス感染症バヤニハン(タガログ語で 相互扶助)ウェブセミナー


新型コロナウイルス感染症に起因する危機的状況により様々な課題が浮き彫りになる中、医療だけでなく他分野の参加者にも医療の現状を伝え、今後これらの課題にどう取り組んでいくかを考えていただく場を提供することを目的に「バヤニハン(タガログ語で相互扶助)ウェブセミナー」が行われました。これは、AMDAフィリピン支部がAMSAフィリピンをはじめ地元の団体と協力して行うもので、5月30日から6月27日まで、毎週土曜日に行われました。医療の視点から5つの議題(「遠隔医療」「新たな基準に従った安全な職場」「新型コロナウイルス感染症に罹患した医師の経験」「先住民におけるメンタルヘルス」「予防接種」)、について各分野のスペシャリストからお話いただきました。セミナー参加者はのべ700人以上に上りました。

 

インド・AMDAピースクリニック妊産婦への 緊急食糧支援

インド担当:岩尾 智子

AMDAピースクリニック(APC)があるインド東部ビハール州ブッダガヤは、元々貧困率の高い地域です。特に街の中心部周辺に住む人たちは観光や建築関係の日雇い労働を主な収入源としており、新型コロナウイルス感染症の影響により収入は激減しています。

6月8日から再開したAPCが当院に登録している妊産婦に電話で調査を行った結果、収入が断たれたため、生活が困窮しており食糧にも困っている人が大変多いことが判りました。この状況を受けてAMDAは1週間に1度、APCに登録している妊産婦の家庭を対象に緊急食糧支援を実施しています。

 

AMDAアフガニスタン支部

国際部 近持 雄一郎

AMDAアフガニスタン支部は、同支部長が運営する日本アフガニスタン友好病院を中心に、地域に根差した活動を実施しています。2020年4月16日から6月15日現在、首都カブールを含むアフガニスタンの5大都市(カブール、カンダハール、ヘラート、ナンガルハール、バルク)では、コミュニティ隔離措置が取られており、人々の外出が制限されています。また医療機関の受診は、重症患者を除いて原則として禁止されている。この為、1日にして平均100人から150人の患者が訪れる同病院でも、患者数が60人から70人までに減り、コロナウイルスの感染が疑われる患者については最寄りの政府系病院に紹介しています。病院を受診する場合、通常は150アフガニから200アフガニ(約250円から300円)の診察料がかかるが、今回は特例として、支払いが難しい患者に対しては無料で診察を行い、価格が高騰しているマスク、石鹸および手袋を配布しています。同時に、アフガニスタン公衆衛生省発行のコロナ対策に関するビラを来院者に配布し、家庭でできる予防策を病院スタッフから伝えるようにしています。

 

AMDAインドネシア支部

国際部 近持 雄一郎

AMDAインドネシア支部は、2020年3月25日よりマカッサルにある小規模病院と協力して、コロナウイルスに感染の疑いがある患者に対しスクリーニングを実施。4月1日現在、3人の医師が同病院に来院する全ての外来患者に対し、毎日午前9時から午後3時までスクリーニングを行っています。その数は、1日あたり30人から最大で50人であり、症状が比較的軽い患者に対しては自宅待機とし、症状が重い患者に関しては、患者の隔離が可能で尚且つコロナ検査を実施している他の医療機関へと移送しています。これまでのところ重症患者の数は4人を数えました。3月2日以降、インドネシアではコロナウイルスの感染が拡大しており、3月31日の時点で感染者1,528人、死者136人、回復済81人となっている。政府は市民に対し、ソーシャルディスタンシングや外出の自粛、在宅勤務を推奨しています。

 

AMDAネパール支部

国際部 近持 雄一郎

AMDAネパール支部は、AMDA本部の依頼を受け、2020年2月5日、中国・北京にある北京日本倶楽部に向けてマスク16,000枚を輸送しました。一方、3月以降、ネパール支部は厳戒態勢の中、業務を継続。国内における感染者の増加を警戒し、3月20日、コロナ対応計画を発動。系列の三つの病院において、発熱に関する報告を義務化し、各病院にコロナ対応ヘルプデスクを設置しました。4月12日より、前出系列病院において、検温と移動歴の聞き取り等を行うことで全ての患者に対するスクリーニングを開始。陽性の疑いがある患者は、精密検査の為、他の医療機関へ移送する体制をとりました。AMDAネパール支部長アニル・ダス氏は、「本部からマスクの輸送依頼を受けた時、大半の感染は中国で発生していた。当初ネパールでは感染者がおらず、マスクは安価で購入でき、外国への郵送も可能だった。本部にはネパールのことをいつも一番に考えて頂き、いつもご支援をいただいている。今回は、AMDAファミリーの一員として、私達が迅速にできる協力をさせて頂いた。これからもAMDAとともに災害医療に携わることができればと思っている。」と語っています。