
難波 妙
去る6月、ハンガリーとルーマニアを訪問し、ウクライナ人道支援活動に携わる現地協力団体の関係者から直接話を聞きました。活動の便宜上、ウクライナの団体とは、隣国の国境地帯での面会となりました。今回は、AMDAが支援する『メドスポット』(ハンガリー)、『City of Goodness』(ウクライナ)、『セントミッシェル小児総合リハビリセンター』(ウクライナ)の3つの団体からウクライナ国内における現在の状況を聞くことができました。
■ メドスポット(ハンガリー)
ウクライナ西部の避難所に向けて出発するメドスポットのチームを、ハンガリーの首都ブダペストで見送りました。メドスポットでは、救急車で定期的に同地域を訪れ、巡回診療を行っています。
同行するウクライナ出身の医師は、避難所で出会った50代の元兵士の男性について、家族を支えた自身の父親の姿を重ねながら話してくれました。男性は戦争で負傷した後、糖尿病を患い、足趾を切断。妻とはすでに離別しており、子どもも亡くなった可能性があると告げられていました。本人にとっては、“再び戦場へ戻ることが唯一の生き方”でしたが、それも叶わなくなってしまったということです。話をしてくれた医師は、「戦争は人の身体だけでなく、家族や社会とのつながり、生きる意味さえも奪ってしまう」と、無念さを滲ませました。
メドスポットのシュパニィク理事長は、「元の住居が破壊され、戻れる場所もなく、薬を買う資金もない避難者は、次第に生きる希望を失っていく」と危惧していました。

■ City of Goodness(ウクライナ)
ウクライナ西部を拠点とする医療団体『City of Goodness』では、戦禍はもとより、DVや貧困等から逃れてきた女性や子どもたちを受け入れています。その中核施設であり、小児用ホスピスを兼ねる『Butterfly House』には、113人の子どもたちが暮らしています。
今回、創設者のマルタさんが、子どもたちが描いた絵を携え、徒歩で国境を越えて、ルーマニア側まで会いにきてくださいました。同施設の子どもたちの多くは、戦争で親を失ったり、虐待や家庭崩壊が理由で保護されたりした子どもたちです。そのうちの約3割が終末期医療を受けています。
同日も、前線地域から新たに子どもたちが避難してくる予定で、「彼らの誰もが私たちの“butterfly”であり、出迎える際にも、『おかえり』と声をかけている」とのことでした。空爆の激化で子どもの存在が見えなくなっている現状を憂い、戦闘が終結したとしても、子どもたちに関する問題が後回しにされる懸念から、子ども一人ひとりの尊厳を大切にしている様子が伝わってきました。

■ セントミッシェル小児総合リハビリセンター(ウクライナ)
AMDAが同じくウクライナ西部で支援しているのが、セントミッシェル小児総合リハビリセンターです。今回、AMDAと活動を始めた当初から懇意にしている代表者らと再会し、無事を喜びました。
医療やリハビリの域を超え、AMDAの支援が、子どもたちが日常を取り戻す機会を創出していることに触れ、「“何かしたい”という気持ちを子供たち自身も形にしてくれる」と、彼らからの贈り物の写真を見せてくださいました。このような謝意の表れが、職員にとっては大きな励みになっているようです。
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AMDAが提携するもう一つの医療施設『ダイナスティメディカルセンター』は、ウクライナ北東部の前線の都市ハルキウにあるため、今回は面会を見送りました。
各団体が日本の支援者の皆さんに宛てたメッセージをAMDAのSNSで紹介しています。現地からの声が届くよう心から願っています。