2013年度年次報告 中長期継続事業(2014/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2013年度年次報告 中長期継続事業(2014/7発行)

2013年度年次報告 中長期継続事業

AMDAフードプログラム


野土路農場の収穫祭

◇実施場所 岡山県真庭郡新庄村
◇実施期間 2012年4月1日〜現在
◇従事者 アロイシウス・シタミ AMDA本部職員(AFP担当)/柴田 宙樹 AMDA本部職員(AFP担当)

◇事業内容
本事業は「食は命の源」をコンセプトにアジアに有機農業を啓蒙・普及することを目的とした事業で、真庭郡新庄村野土路地区にAMDA農場を設置し、あひるを使った農薬を使わない有機稲作栽培を中心とした農業を実施している。これは、新庄村が2010年に掲げた「アジア有機農業プラットフォーム推進条例」に基づき、連携を行っている。

2013年からは新庄村と連携し、インドネシアスラウェシ島マリノ村から2名の農業研修生を招へい。4月から9月までの約6か月の滞在で、稲作の田植えから稲刈りまで、有機農業だけでなく、加工品の技術指導や村民との文化交流を図った。

更に2014年2月にはインドネシアスラウェシ島マリノ村にAMDAスタッフ1名および新庄村ボランティアスタッフ1名を派遣。堆肥の作り方や燻炭の作り方など、現地に合った方法での有機農業実践に向けた指導と、研修生がマリノ村で実践している有機農業圃場での指導を行った。

またAMDA野土路農場で2013年度に収穫した「AMDA有機米・コシヒカリ」を、新庄村の特産品と併せてAMDAの支部がある18駐日外国公館へ届けることができた。

◇2013年度の主な工程
2013/4/19 インドネシア農業研修生受け入れ、
2013/6/1 田植え、6/12 あひるの進水式、
2013/9/28 米の収穫、
2013/9/30 インドネシア農業研修生研修終了、
2014/2/15〜2014/2/21 インドネシアマリノ村農業技術指導者派遣

◇現地協力機関
新庄村
アジア有機農業連携活動推進協議会
AMDAインドネシア支部

スリランカ・白内障手術プロジェクト


無料白内障手術の様子

◇実施場所 スリランカ民主社会主義共和国北部州ムッライッティーヴー県
◇実施期間 2013年7月14日〜2013年7月31日
◇派遣者 ニティアン・ヴィーラヴァーグ 調整員 AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 台湾IHA (International Health and Action)の眼科外科医、看護師、調整員。ムッライッティーヴー総合病院の外科医3人と支援スタッフ約30人

◇事業内容
2013年7月14日から31日の日程で、AMDAと台湾IHAの合同医療支援事業として「無料白内障手術プロジェクト」が実施された。台湾IHAとの合同医療支援事業の実施は、2011年8月にスリランカ北部州ジャフナ県で行われたミッションに続き2回目。今回は同じ北部州の北東沿岸に位置するムッライッティーヴー県で行われた。ムッライッティーヴー県は2009年まで続いた内戦で甚大な被害を受けた地域で、約10万人の人口のほとんどは漁業と農業で生計を立てている。スリランカには、白内障治療を必要とする高齢者の方が多くいるが、そのほとんどは、手術を受ける環境が整備されていない農村部に住んでいる。

健診を含む準備は7月14日から行われ、手術は7月28日から31日の間にムッライッティーヴー総合病院で実施された。眼科外科医、看護師、調整員で構成された台湾IHAの医療チームと地元外科医3人は、およそ30人にものぼるスリランカのボランティアスタッフに支えられ、約190件の手術を行った。超音波水晶乳化吸入機しか使用できない状況下で手術を遂行しただけでなく、典型的な嚢外白内障摘出術(ECCE)が適用となる多くの白内障患者の症例にも対応した。

AMDAからは本部職員を派遣し、本事業の実現に向けた調整業務及び資金的支援などを行った。多くの地元関係団体、関係者の協力により成功を収めた本プロジェクトは、地元の人々と地方政府関係者からも高い評価を受けている。

◇現地協力機関
ムッライッティーヴー総合病院
AMDAスリランカ支部

2013年スリランカ医療和平プログラム?(スポーツ・文化・宗教交流)


サッカーを行う男子学生ら

◇実施場所 スリランカ民主社会主義共和国コロンボ、北中部州アヌラダプーラ県
◇実施期間 2013年8月23日〜8月25日
◇派遣者 菅波茂 医師 AMDAグループ代表/ニティアン・ヴィーラヴァーグ 調整員 AMDA本部職員/樋口裕介 調整員 AMDA本部インターン

◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 佼成学園女子中学高等学校、スリランカの学校(Borelesgamuwa Maha Vidyalaya, Hindu College, Khairiya Balika Maha Vidyalaya, Prince of Wales College, Princess of Wales College, Ramanathan Hindu Ladies College, Vijayaba Maha Vidyalaya)全8校、生徒・引率者ら計148人

◇事業内容
AMDAは、スリランカの内戦停戦中の2003年から3年間「スリランカ医療和平プログラム」を実施し、異なる3つの民族に対して巡回診療や保健教育を行った。

2011年からは「スリランカ医療和平プログラム?」を開始し、異なる3つの民族に対する医療支援のほか、年に一回スポーツ・文化・宗教交流を実施している。

2013年8月23日から25日の日程で第3回目のスポーツ・文化・宗教交流が行われた。日本から佼成学園の中高生20人が参加し、地元コロンボにある7つの学校から4つの宗教(仏教、イスラム教、ヒンズー教、キリスト教)の学生が参加した。

宗教プログラムでは、4つの宗教について学生の代表がそれぞれ開会式でスピーチを行い、平和と調和の重要性を語った。そして参加者全員で、それぞれの宗教の宗教施設を訪れて信仰や習慣について理解を深めた。

スポーツ交流では、130人近い学生たちが混合でチームを作り、男子はサッカー、女子はネットボール、全員で長縄跳びやムカデリレーをして親交を深めた。文化交流では、学生たちが学校単位でダンスや歌などを披露した。

スポーツ・文化・宗教交流と並行して、AMDAはアヌラダプーラ県で医療活動を行い、412人を無料で診察した。この活動は、パナドゥラ地区医療部門統括者のパンダラ医師とAMDAスリランカ支部長のサマラゲ医師、AMDAグループ代表の菅波医師、パナドゥラ地区ライオンズクラブの医師たちによって行われた。妊婦健診、糖尿病や白内障患者のスクリーニング、歯科検診を行った。妊婦健診では支援物資を配布して大変喜ばれた。

◇受益者の声
「来年も本プログラムに参加し、再会したい」
「来年もぜひ開催してほしい!」

◇現地協力機関
スリランカ言語・社会統合省、
スリランカ教育スポーツ省、
世界宗教者平和会議スリランカ委員会、
アヌラダプーラ県、
パナドゥラ地区ライオンズクラブ

インド AMDAピースクリニック

◇実施場所 インド ビハール州 ブッダガヤ
◇実施期間 2009年11月〜現在継続中
◇派遣者 菅波 茂 医師・AMDAグループ代表/ 難波 妙 AMDA国際部部長/ニティアン・ヴィーラヴァーグAMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 セラピスト1名、アシスタント3名


AMDAピースクリニック開院5周年式典

◇事業内容
2009年末の開院以来、AMDAピース・クリニックでは、地元コミュニティーを対象にインドの伝統医学アユルヴェーダで治療を行ってきた。単なる疾病の治療に留まらないアユルヴェーダは、何世紀にも渡って蓄積されてきたヒーリング科学の集大成といえる。アムダ・ピースクリニックでは個人の心身の均衡を整え、免疫力の改善や心身のバランスを高めることで病気を予防することを主眼としている。

クリニックでは1名のセラピストを中心に、3名のアシスタントが国内はもとより、外国人巡礼者や旅行者にアユルヴェーダの治療を行っている。今年は、ブッダガヤで起きた爆破事件などの影響もあり、来院数は減少したものの150人が来院。社会貢献事業としては、関節リウマチ、皮膚疾患、腰痛症等の症状の地元の患者を対象に無料診療を行い、必要な患者に対しては、薬、服、食べ物等を提供した。また、寝たきりで動けなく、貧困のため医療を受けられない患者に対しては、7日間の訪問治療を行った。ほかにもお年寄りが暮らすブッダガヤにある施設を2回訪問し、お年寄りに対して無料診療、薬、服、食べ物等を提供している。

2013年10月26日には、ピースクリニックの開院から5周年を迎え、日本からご参加頂いた日蓮宗のご住職とともに記念式典が執り行われた。式典では、地元の人々によりよい医療の提供ができる病院になるよう参加者一同で祈願した。式典後は、運営関係者全員のミーティングをもち、今後の運営方針の確認や地元への更なる医療貢献の必要性について共通理解を深めた。

◇派遣者の声
この地域の人達のために何か力になりたいという医療者としてできることをさらに追及していきたい。(運営財団関係者)

◇現地協力機関
AMDA インド支部、
AMDA ピースクリニック、
日蓮宗太生山一心寺ブッダガヤ分院

インド白内障手術事業


白内障手術のための検査の様子

◇実施場所 インド マハーラーシュトラ州ナグプール県
◇実施期間 2014年2月15日〜2014年2月25日
◇派遣者 ニティアン・ヴィーラヴァーグ 調整員 AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 宗教法人パンニャ・メッタ・サンガ(PMS)、マハトメ眼科医院の医師・看護師ら

◇事業内容
AMDAは、インドの宗教法人パンニャ・メッタ・サンガと天台宗一隅を照らす運動総本部と共同で、インド中部のナグプール県で、貧困層を対象に白内障無料手術事業を実施した。

2013年2月15日にナグプールの医師・看護師ら10人が、ナグプールから南東90kmにあるポーニにあるパンニャ・メッタ・サンガの仏教実践施設「禅定林(ぜんじょうりん)」を訪れて、白内障の検査を行った。受診者191人のうち74人が白内障と診断された。

2月23日に、大型バスで患者らをポーニからナグプールのマハトメ眼科医院に移送し、手術前の検査を行った。手術は2月24日に行われ、入院して一日経過観察を行った後、一同は2月25日に帰宅した。

◇現地協力機関
パンニャ・メッタ・サンガ(1982年にインド政府から認定されたインドの宗教法人)、
ナグプール県のマハトメ眼科医院

インド・ラダック地方歯科巡回診療事業


歯科巡回診療の様子

◇実施場所 インド ジャンムー・カシミール州東部ラダック地方
◇実施期間 2013年7月30日〜2013年8月26日
◇派遣者 斉藤景子 歯科医師 岡山大学病院
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 インド・マニパール大学の医師・歯科医師、ヨーロッパ歯学生協議会の歯科医師、歯学生、歯科従事者

◇事業内容
本事業はAMDAインド支部長が所属するインドのマニパール大学とヨーロッパ歯学生協議会が企画実施した事業で、今回の実施は2012年8月に引き続き2回目になる。AMDA本部からは歯科医師1名が参加した。

斉藤歯科医師は、マニパール大学の医師・歯科医師とヨーロッパ歯学生協議会の歯科医師、歯学生、歯科医療従事者ら35人と共に医療チームを組み、インドのジャンムー・カシミール州東部にあるラダック地域の学校を巡回した。活動場所のラダック地方は高山地帯で孤立した場所にあるため、医療従事者も少なく、住民は貧困層が多い。そのため、口腔内の衛生状態が悪い子どもが多かった。医療チームは、ラダック地方のへき地にある3つの学校で仮設診療所を設営し、子どもたちに無料で診察、治療、口腔衛生指導を行った。口腔衛生指導では、歯を磨く事の大切さ、齲歯や歯槽膿漏の病気について説明し、少しでも口腔内に興味が湧くような話をした。3つの学校で約1,500人の子どもに検診と口腔衛生指導を行い、約1000本の歯科治療を行った。

斉藤歯科医師はラダック地方での活動の後、8月中旬からマニパール大学の公衆衛生歯学科の歯科巡回診療活動に同行し、8月26日に帰国した。

◇派遣者の声
今回のインドでの活動は、AMDAの大きなサポートのおかげで、とても有意義なものとなりました。私はまだまだ知識も技術も未熟ですが、国際歯科保健、特に途上国の子ども達の口の中を良くするサポートをしたいと思う気持ちがかねてから強く、今回の体験は大きなステップになりました。

◇現地協力機関
ヨーロッパ歯学生協議会(European Dental Students Association)、
インド共和国カルナタカ州マンガロール マニパール大学

モンゴル検眼事業


子どもの弱視治療セミナー

◇実施場所 モンゴル ウランバートル市
◇実施期間 2013年9月8日〜13日
◇派遣者 高裕子 視能訓練士専任教員 川崎医療福祉大学准教授、菅波由佳 調整員 AMDA参与、難波妙 調整員 AMDA国際部部長
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 モンゴル眼科協会、City Optic, AMDAモンゴル支部、アイリスツアーズ

◇事業内容
2013年9月、2年目の岡山県国際貢献ローカル・トゥ・ローカル技術移転事業として、モンゴル眼科協会協力の下、川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科視能矯正専攻 准教授、高裕子先生のセミナーが モンゴル・ウランバートル市で、子どもの弱視治療をテーマとして開催された。本年は日本視能訓練士協会の協力を得て低視力分野の第一人者である守田芳江視能訓練士にもご指導頂いた。

AMDAは、モンゴルの全人口の1/3が18歳以下であることに着目し、若年層の眼科治療の技術向上に貢献することは、医療分野のみならず、子どもたちの教育支援にもつながると確信し、2010年から眼科検診啓発とともに、検眼技術向上のセミナーを眼科医、眼鏡技術関係者対象に行っている。視力は生後3カ月から8歳くらいまで発達するため、幼児期に重大な異常を発見し、適切な治療を受けることが大切。高准教授によるセミナーは2012年度に引き続き2回目。モンゴル眼科協会の医師36名が参加し、5日間に渡る講義、実習、グループディスカッション、さらには実際の診療が行われた。

2012年7月の関係者国際会議で、小児眼科に関する世界的組織の動向として「入学前眼科視覚健診の重要性を啓発し、その具体的な方法を世界標準で作成する」ことが決定された。また「低視力者に対する援助を促進し、生活の質の向上を図る」ことも提言された。今回のセミナーにおける講義と実習のテーマは、この世界動向と合致していたためモンゴル国小児眼科分野に世界標準の視点を導入することができた。しかしながら、学校教育現場や保護者への眼科健診の必要性の認識はまだ低いため、本セミナーの滞在時にはテレビに出演を通じて、その啓発を図った。

◇受益者の声
「通常は個別に活動している眼科医達がセミナーのために集まり、自国の将来を考える機会を得たことで、モンゴル小児眼科の環境を向上させていく案を自らで導き出すことができた。」(受講した眼科医)
「日本の先生に診て頂き、今後の治療への確信がもてた。本当に感謝している。」(弱視の子どもの保護者)

◇現地協力機関
モンゴル眼科協会、
City Optic、アイリス ツアー、
AMDAモンゴル支部、
日本モンゴル友好病院

カンボジア HIV/AIDSプロジェクト マラリア予防プロジェクト


世界エイズデーのイベントの様子

◇実施場所 カンボジア プノンペン、コンポンスプー州
◇実施期間 2013年4月〜2014年3月 通年継続
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成 AMDAカンボジア支部、州立保健局、各地域のヘルスセンター、地域の医療ボランティア

◇事業内容
AMDAカンボジア支部はエイズ予防プロジェクトでは“エイズゼロキャンペーン―新たなエイズ感染者ゼロ、エイズ患者に対する差別ゼロ、エイズ関連死亡者ゼロ―”をスローガンに、IEC(Information, Education and Communication)手法を用いたエイズ撲滅キャンペーンと世界エイズデー(12月1日)のイベントを行った。

撲滅キャンペーンでは、性感染症予防のためのTシャツとパンフレットを準備し、プノンペンの5大学と3高校、コンポンスプー州の3高校に配布した。世界エイズデーのイベントではエイズへの理解を深めるのに有効な人形劇や歌の上演、クイズ大会等を開催した。これらのイベントはエイズ患者への介入や支援にとても効果的で、カンボジア政府の打ち出している「2020年までにカンボジアからエイズをなくす」という目標達成の大きな後押しとなっている。

マラリア予防プロジェクトでは、コンポンスプー州の地域医療ボランティアに向けて地域での予防システム構築を目指した教育プログラムが実施された。疫学研究に沿った基本的なマラリア知識、蚊帳の使用方法と注意点、不正医薬品の危険性と取り扱い等について住民参加型のプログラムが3日間に渡り開催された。州内5地域から225人の地域医療ボランティアが参加した。また、地域啓発活動では移民、難民を中心とした地域住民のマラリア患者の有無の追跡に重点を置き、新たなマラリア患者を出さないことを徹底した。保健局スタッフと研修を受けた地域医療ボランティアが主体となって具体的な予防教育プログラムを毎月計画し、マンツーマンの保健指導を実践した。今年度は150村で1136回のプログラムが開催され、合計18777人に啓発活動を行うことができた。保健局スタッフが現場巡回回数を増やし、信頼性の高い情報収集とデータ管理の体制を強化したことで、この成果が得られた。

◇派遣者の声
クイズ大会では多くの学生がエイズについての基本知識を持っていることが明らかになった。学生がこれらの知識を家族や友達と共有してくれることでエイズ予防につながると信じたい。(AMDAカンボジアスタッフ)

バングラデシュ マハムニ母子寮支援事業


マハムニ母子寮の子どもたち

◇実施場所 バングラデシュ チッタゴン管区コックスバザール県マハムニ村
◇実施期間 2013年4月1日〜2014年3月31日

◇事業内容
AMDAが提唱する多様性の共存を可能にする「オープン相互扶助」の考えに基づき、バングラデシュ・チッタゴン管区で宗教を超え民族が平和的に共存していくための支援事業を行っている。イスラム教徒が大半を占めるバングラデシュにおいて少数派の仏教徒が住んでいるチッタゴン丘陵地域マハムニ村にある母子寮に住む、寮生122名に対して、マハムニ母子寮関西連絡所を通じ、栄養給食費として支援活動を行った。