フィリピン台風30号被災者に対する緊急医療支援(2014/1発行ジャーナル1月冬号掲載) – AMDA(アムダ)
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特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

フィリピン台風30号被災者に対する緊急医療支援(2014/1発行ジャーナル1月冬号掲載)

フィリピン台風30号被災者に対する緊急医療支援


高潮に襲われた町(パナイ島)

2013年最大級の勢力を持つ台風30号(ヨランダ:Yolanda)が、2013年11月8日、フィリピン南部の島々に上陸しました。この台風による被害としては、死者6,183人、行方不明者1,785人、負傷者28,626人。被災者は約1607万人、約342万世帯。家屋の被害は114万件を越えています。(フィリピン国家災害対策本部2014年1月8日発表)
この状況を受けてAMDAでは、緊急医療支援活動の実施を決定。11月10日には、第1次として日本から医療スタッフを派遣しました。現地の状況を鑑み、支援の必要性が高いことから、次いでAMDA支部にも呼びかけ、2013年12月末までに、8か国、のべ25人のスタッフを被災地に派遣し、マニラを拠点にしながら5つの島で医療支援活動を中心とした様々な活動を日本医師会、フィリピン医師会、フィリピン軍、PRRM(現地NGO)の協力を得ながら実施することができました。
いまだ支援のニーズがあることから今後も、支援活動を継続する予定です。

 

第1次ミッション ボホール島マリボホック 11/11-13


文具を受け取る子どもたち(ホポール島)

ボホール島は、10月15日に発生したマグニチュード7.1の地震で甚大な被害が発生し、震災後も余震が続いており、テントで雨風をしのぐ避難生活を送る住民が多数いる状態でした。AMDAでは、地震後の緊急支援活動を実施したことから、台風による被害が広がっていることを懸念し、最初の活動地としてボホール島での活動を開始しました。
幸いなことにボホール島では、台風の直接的被害は少なかったものの、ほとんどの学校が地震や台風のため屋外での授業を余儀なくされており、ストレスを抱える子どもたちがも出てきていました。そこで、マリボホック市内のプレスクールと小学生たち約2,850人に対し、ノートや鉛筆、ペン、クレヨンの文房具の配布を実施しました。

 

第2次ミッション ネグロス島カディスほか 11/16

ネグロス島は、島内のほとんどの地域で、停電が続いており、物資の供給もストップしていることから物の価格も上がっていました。しかしながら、空港や港が機能していることから、さまざまな団体や政府からの支援物資が届いており、水や食料などは行きわたっている様子が見られたことから、ネグロス島への現段階での支援活動は見送り、視察にとどめました。

 

第3次ミッション パナイ島カルレスほか 11/17-21


メンタルプログラムで絵を描く子どもたち(パナイ島)

パナイ島の北東部の地域は、ネグロス島の地域よりも明らかに被害が大きく、停電も続いている状況がみられました。医療支援は入っておらず、体調を崩している人が多く、支援物資のニーズも高かったことから、カルレス町カビラオベキュノ地区、サンジョニッショ町スア地区で巡回診療を行い、のべ265人の診察を行いました。上気道感染、頭痛などの痛みを訴える方や、高血圧の患者が多くみられました。またカルレス町カビラオ・グランデ地区とサンジョニッショ町スア地区では、300世帯に対して衛生用品などの支援物資の配布を行いました。

さらに、子どもたちへのメンタルプログラムとして絵を描くことを通じて、体験した恐怖などを表出させるセラピーを実施することができました。

 

第4次ミッション レイテ島オルモック〜タクロバン 11/17-21

レイテ島のオルモック北部カナンガ町からタクロバン近郊のモヨガ町など、移動しながらニーズの多い地域で巡回診療を実施しました。台風の影響で医療機関がほとんど機能していないことから、多くの患者が詰めかけ、受診待ちの列が途切れることはありませんでした。3か所で、のべ約460人の診療を実施。呼吸器の症状ほか外傷や皮膚疾患、下痢などが多く見られました。また特徴的なものとして、瓦礫や枯れ木類が片付けのためにあちこちで燃やされている焚き火による子供の火傷も目立りました。またシラミが流行していました。

 

第5次ミッション レイテ島パランポン周辺 11/26-28


カンビノイ地区での巡回診療の様子(レイテ島)

パランポン町長の要望により医療支援の必要な町内のサンピ―ドロ地区、カンコスメ地区、カンビノイ地区で巡回医療支援活動を実施しました。上気道感染症、高血圧、下痢、不眠などの症状が多く、のべ740人の診療を行いました。また地元のヘルスセンターに薬の寄贈を行いました。

 

第6次ミッション レイテ島タクロバン近郊 11/27


巡回診療に詰めかけた人々の行列(レイテ島)

タクロバン市の中心部は支援が集中しているため、タクロバン郊外、南部の町での支援活動を実施。パロ町、ダラン町で支援物資を配布し、トロッサ町サンロケ地区は巡回診療を実施しました。202人の受診者数のうち77人が子供。栄養不足を訴える人が多くいました。また、台風前に大腿部からの下肢切断を受けた女性も、台風の影響で医師不在のため抜糸が出来ず、創感染も起こしており、抜糸と創洗浄を実施しました。

 

第7次ミッション サマール島ヘルナーニほか 11/28-30

タクロバン市を出発して、サマール島へ陸路で移動。沿岸部をボロンガン市を目指しました。途中のサントニーニョ町、バセイ町、ヘルナーニ町、マラブ町、キナパンダン町などで、トラック3台分の支援物資の配布を実施しました。被災後、初めての支援という地域も多く、トラックが止まると、多くの住民が集まってきました。さらにボロンガン市では、巡回医療支援活動を実施し、約150人を診察しました。さらに復路でも、往路と同様に物資支援の配布を実施しました。

 

第8次ミッション レイテ島カナンガほか 12/5-7


被災後の町でも子どもたちの笑顔は明るい(レイテ島)

第4次ミッションで訪問した地域へのフォローアップを兼ねて、フィリピンで最大の祝日であるクリスマスに向けた物資支援を実施しました。子どもたちへは文具やお菓子、さらに地区単位で、バスケットボールとゴールを寄贈しました。

 

第9次ミッション ボホール島マリボホック 12/8-10

第8次ミッションと同様に、フォローアップを兼ねて、フィリピンで最大の祝日であるクリスマスに向けた物資支援を実施しました。マリボホック町内の21校の小学校にはそれぞれ、バレーボール1個とセパタクローのボール1個を、小学6年生以下の学童や園児には、お菓子を詰め合わせたクリスマスプレゼントを約3,300人分用意し、手渡すことができました。

 

第10次ミッション パナイ島エスタンシアほか 12/13-16


多くの患者が詰めかけた巡回診療の様子(パナイ島)

カピス町近くの集落とエスタンシア町で巡回診療を行いました。地元のボランティア医療スタッフなども参加してくださり、のべ1089人を診察することができました。患者からは、多くの感謝の言葉が寄せられました。また食糧支援物資として、お米や缶詰などを袋詰めしたものを270世帯に配布しました。さらに、316人の子どもたちへのミニクリスマスプレゼントを手渡すこともできました。

 

第11次ミッション サマール島バセイほか 12/21-24


活動を共にした医療チームスタッフで(サマール島)

レイテ島オルモック市、サマール島バセイ町、マラブット町で巡回医療支援活動を実施し、のべ584人を診察することができました。また訪問診療も実施することができました。さらに、重篤な外傷を負う患者をタクロバン市内の病院へ搬送し、経過についてもフォローを行っています。

 

第12次ミッション 12/20-24

ソーラーライト(Kopernik寄贈)を3つの島で配布しました。サマール島ギポロス町ギゴサ地区では96個、セブ島サンタフェ市の3地区(オコイ地区バリドビド地区、バリカバン地区)で215個、パナイ島カリノグ町バタート地区で108個の計419個を配布しました。

 

AMDAの医療支援活動に参加したフィリピンの看護師からのメッセージ

こんにちは。私はレイテ島とサマール島での医療支援活動に参加させていただいた看護師です。台風被害から立ち直ろうとする私たちの国の被災者のために献身的な医療保健支援を実施してくださっているAMDAに深い敬意を表します。また今回参加した支援活動や、AMDAのホームページを通じて、AMDAの提唱している「相互扶助」の理念に共感しました。今回、AMDAが私たちの国の被災者のためにしてくださったことは、私たちの心に深く刻みこまれています。近い将来必ず、今度は私たちが「相互扶助」の精神で、恩返ししたいと思います。心からの感謝をこめて・・・。

 

フィリピン医師会から感謝状

フィリピン医師会から、今回の緊急医療支援活動に対して、日本医師会とAMDAに対して感謝状を頂きました。福山医師会から医師1名、看護師1名がAMDAのスタッフとして、国境を越えて緊急医療支援活動にあたった初めての例となりました。