2012年度年次報告 海外支部主体事業(2013/10発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2012年度年次報告 海外支部主体事業(2013/10発行)

2012年度年次報告 海外支部主体事業

ネパール東部ダマックにおける医療支援事業


リフェラルヘルスセンター

ブータン難民と地元住民の双方を医療支援対象とした事業として、1992年から、メチ県ジャパ郡ダマックでAMDAネパール支部を実施主体として継続している。現在事業は、小児科病棟やHIV/性感染症予防事業、難民キャンプ内ヘルスケア事業、人材育成など他分野にわたる。

ネパール子ども病院事業(正式名称:シッダールタ母子専門病院)


ネパール子ども病院

1998年11月、阪神淡路大震災後の日本とネパールの多くの支援者の方々の協力により設立された首都以外で唯一の母子専門病院。設計については安藤忠雄建築事務所がボランティアで協力。ネパール南西部タライ平野に位置するルパンデヒ郡ブトワル市に設置。高い医療サービス提供が定評で、地元からだけでなく100km以上離れた地域から訪れる患者もいる。年間分娩数は3,000件を超える。

診察科:
小児科、新生児科、産婦人科、女性内科
病床数:
141床(小児科、新生児科、産婦人科)
スタッフ数
146名(医師19名、看護スタッフ56名、検査スタッフ9名、薬局スタッフ8名、ヘルパー28名、事務スタッフ26名)

2011年8月より新たな周産期病棟(2階建)の建設を開始し、2012年11月に完成した。新病棟では、陣痛室、分娩室、産褥室、手術室、家族計画カウンセリング室、新生児集中治療室などを備え、妊娠・出産から新生児ケアを総合的に管理できるよう配慮している。2013年3月14日にはAMDAネパール支部、病院関係者を中心に開所式典が開催された。事業管理についてはAMDAグループの「AMDA社会開発機構」が担当している。

バングラデシュ ABCプロジェクト AMDA Bank Complex


マイクロクレジットの会合を行う村の女性達

1999年、AMDA本部による資金援助を元に始まり、AMDAバングラデシュ支部が主体で実施するものである。特に、女性達が小規模融資(マイクロクレジット)の利用を通して経済的に自立し、家族の健康を守り、医療サービスにアクセス出来るようになる事を目指している。医療のほか、子どもの教育や、漁業や農業を主とした職業技術指導などに力を入れ、包括的な家族の生活向上に取り組んでいる。

発足から3年間に1,700人程度だった利用者は、現在、ガザリア地区の24の村落において、470グループ、計2,347人に増加し、マイクロクレジットの貸付サービスの受益者は1,394人に上った。

2012年は630,275米ドル相当のローンが返済され、そのうち75,170米ドル相当が利息収入であった。サービス利用者の貯金の総額も、10年前に比べ、倍になっているが、1件当たりの貸付希望額が増加傾向にある為、全ての利用希望者に対応できていない現状がある。

健康・医療支援については看護助手の養成や、若い女性対象の保健教育、栄養と食のプログラムを定期的に開催し、知識の浸透を図っている。職業訓練に参加した受益者は、専門技術を身に付け、現金収入を得ることができるようになっている。

AMDAインドネシア支部 口唇口蓋裂無料手術


インドネシア医師による口唇口蓋裂手術

◇実施場所 インドネシア 南スラウェシ州 マカッサル市、パロポ市
◇実施期間 2012年10月20日〜21日、11月23日〜25日

◇事業内容

AMDAインドネシア支部はスラウェシ島マカッサル市のイブン・シーナ・マカッサル病院、サヤン・ラカット病院、パポロ市のサウェリガディン病院と協力し、口唇口蓋裂無料手術を行った。

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)は、先天的な病気で日本人を含む黄色人種における発生率が高く、出生児500〜600人に一人とも言われている。乳児の母乳の摂取に影響があるだけでなく、顎や言語の正常な発達も妨げるため、生後10週間から3ヶ月までに治療することが望ましい。しかし、インドネシアでは、知識の不足や外科的治療を受けるための金銭的問題から、放置される例も多く、外観的な差別により就職や結婚において決定的に不利な状況に置かれていた。そこで本事業の実施に至った。

第1回目は2012年10月20日〜21日(マカッサル市)、第2回目は2012年11月23日〜25日(パロポ市)で行われ、AMDAインドネシア支部の医師を含む、医師、歯科医師、看護師、手術助手により実施された。

第1回目の2日間で手術を受けたのは20歳以下の口唇裂患者16名と口蓋裂患者17名の合計33名、第2回目の3日間では1歳から7歳までの小児40名と10代から20代の大人9名の合計49名。手術後には術後治療も行った。今後も、手術を受けた患者に対し、歯科口腔外科、児童心理、言語療法、栄養面からも総合的にサポートすると共に、さらに手術を必要とする人のために、活動の計画を考えている。

◇受益者の声
この手術により子どもの未来が少し開けた気がしてとても嬉しい。心から感謝したい。

◇現地協力機関
AMDAインドネシア支部
イブン・シーナ・マカッサル病院
サウェリガディン病院、ペンビーナ財団
口蓋口唇裂センター
ハサヌディン大学医学部麻酔科
インドネシア歯科協会
口腔外科インドネシア協会
AMSAインドネシア

AMDAバングラデシュ支部 ラム村緊急医療支援活動


焼かれた寺院跡地での診療活動

◇実施場所 バングラデシュ チッタゴン管区コックスバザール県ラム村
◇実施期間 2012年10月18日〜19日

◇事業内容

2012年9月30日、仏教徒が多く住むバングラデシュ東南部のラム地域のラム村を含む複数の村で、焼き討ちや略奪の被害が相次いだ。多くの人が村外への避難を余儀なくされるほか、村では仏教寺院のほとんどが焼き討ちに遭い、人々は平和な生活を一瞬にして奪われた。この非常事態に対し、AMDAバングラデシュ支部と日本バングラデシュ友好病院が合同で医療チームを結成し、ラム村で緊急医療支援活動を実施した。

緊急医療チームは10時間をかけてラム村に移動し、2012年10月18日と19日の2日間、地方自治体や地元仏教寺院の協力のもと、無料診療などを中心とした活動を行うことができた。活動にあたった医療チームは、医師15人、看護師などの医療スタッフ5人結成され、計20人で1,000人以上の患者を診療した。襲撃により飛び散った破片などで外傷を負った患者、襲撃の恐怖や今後の不安を抱え、喪失感やうつ的な症状を訴える患者が多く見られた。さらに、糖尿病患者のための血液検査や一般的な健康診断も行い、必要に応じて医師により薬が処方された。

襲撃後、ラム村には、政府による医療支援は入っておらず、また、村から4km離れた場所に病院はあるものの、その地域の安全が確保されていないことや、交通手段がないことなどから、ラム村の人々は、病院の利用が難しく、今回の活動は大変歓迎された。

◇現地協力機関
AMDAバングラデシュ
日本バングラデシュ友好病院
地方自治体
地元仏教団体

AMDAグループ フレンドシップホスピタル


日本モンゴル友好病院開所式

日本モンゴル国交樹立40周年の本年8月26日、AMDAモンゴル支部長のオユンチメグ医師が、日本モンゴル友好病院(Japan Mongolia Friendship Hospital)を開院した。構想から12年の年月を経て、モンゴル、ウランバートルのダンバダルジィア地区に、内科、眼科、歯科、小児科、婦人科などとともに30床の入院施設を備えた病院で、AMDAでは開所に至るまでの支援を行ってきた。

開所式には、地元の関係者、AMSAモンゴル等が参加し、馬頭琴の演奏や歌が花を添えた。オユンチメグ医師は、「この開院を参加者とともによろこび、今後、高齢者が多いこの地域の医療に役に立ちたい」と抱負をのべた。

なお、同病院はAMDAグループの日本バングラデシュ友好病院(1993年設立)、日本アフガニスタン友好病院(2009年)に次ぐ、3つ目のAMDAフレンドシップホスピタルとなる。