スリランカ紛争復興支援スポーツ&アート交流プログラム(2011/12発行ダイジェストNo.37掲載) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

スリランカ紛争復興支援スポーツ&アート交流プログラム(2011/12発行ダイジェストNo.37掲載)

2011年度 AMDA紛争復興支援事業
スリランカ紛争復興支援スポーツ&アート交流プログラム

スリランカ 紛争の歴史と実施の経緯

スリランカは日本の四国程度の小さな島国です。しかし、異なる宗教を信仰する異なる民族「シンハラ人」「タミル人」「イスラムタミル人」の間で、26年ものあいだ内戦状態が続きました。2002年から2007年の間は停戦合意がなされ平和が訪れたように見えました。AMDAはこの間(03〜06年)、スリランカ医療和平事業を3地域で実施しました。が、その後停戦合意は破られ再び内戦状態となり2009年に終結しました。特に最後まで戦闘区域となったタミル人居住地域である北部では内戦の爪痕が大きく残り、未だインフラや教育を受けられる環境が整っているとは言い難い状態です。お互いの文化を知ることから相互扶助が始まります。その第一歩を踏み出すことは当事者だけでは難しいものです。和平構築に積極的にかかわった日本のAMDAから再び3グループの交流を呼びかけることにしました。同国では、医療和平事業の他、洪水緊急救援無料白内障手術(2011年)などを実施しています。

 

スリランカ スポーツ&アートプロジェクト実施概要


各男子サッカーチームメンバーら

ネットボールする女子生徒たち

生徒による民族舞踊

2011年9月24、25日にスリランカ北部の都市アヌラダプラにて、タミル人、シンハラ人、イスラムタミル人の3つの異なる民族、宗教の10歳から14歳の4校の学生がスポーツや芸術を通して交流を行い、総勢159人の学生が参加する大規模かつスリランカでは初めての試みとなりました。このプログラムによってスリランカでのスポーツと芸術による和平プログラムの第一歩が刻まれました。この大会はAMDA本部とAMDAスリランカ支部が中心となり、スリランカの国語及び社会総合省(Ministry of National Languages and Social Integration)などの協力を得て、開催が実現しました。9月24日には男子学生はサッカー、女子学生はネットボール(注)を行い、スポーツを通じて交流を深めました。また翌日25日にはアート大会を開催しました。学生らは、日本の支援者からの色鉛筆やクレヨンなどを使って、平和なスリランカを願って、それぞれの思いを表現したポスターを作成した。また同日には文化交流プログラムも行い、演劇、ダンスなどを通して交流を図りました。

今回招へいの対象となった学生は、内戦中に生まれ、その中で成長しているため、これまで他の民族、宗教、文化に触れる機会がありませんでした。実際に、今回参加した学生の大半にとって、自分たちとは異なる民族、宗教の子どもたちと触れ合うのは、これが初めてでした。初めは緊張し、笑顔が少なかった学生らも、スポーツや文化交流を通じて、次第に笑顔が和ぎ、初めて触れ合う異民族、異宗教の学生らの多様性を理解し、友情関係を構築することができました

注)ネットボールとは:バスケットボールによく似た女子のみのスポーツ

 

参加者の言葉より抜粋

  • お互いを理解し受け入れることは、特に紛争後の状況では、平和な国を実現するカギとなる。AMDAが行ったこのスリランカでのプログラムは子どもたちだけでなく、大人にとっても異文化、異民族間に友情と協調を構築するのに非常に重要なプログラムとなりました。(AMDAスリランカ支部長・サマラゲ医師)
  • 色々なことがあったけど、このような機会を作ってくれてありがとう。今まで生徒は他の民族と接することはなかったけど、生徒たちにとって良い経験になったと思う。僕ら教師にとっても本当に良い経験だった。(イスラムタミル人の学生を引率した教師)
  • 三民族の生徒それぞれがバスで去る際に、太鼓を叩きそれぞれの民族舞踊を踊りだしました。三民族の生徒が輪になって踊っている姿を見て、言葉は違ってもそれぞれが何かをこの数日間で感じたのだと思いました。『平和への一歩はお互いを知り合うことから始まる』ことを実感しました。(AMDAインターン 石崎 千里)

 

今後の展開(2012年初頭から実施予定)

このプログラムを通じてできた絆を、今後も継続していくために、AMDAでは「Sustainable communication computer Network among Sri Lanka and Japan:日本・スリランカ中学生eコミュニケーションと平和構築プログラム」を計画しています。

一過性の交流に終わるのではなく、継続可能なものにすべく、それぞれの学校にインターネットを配備し、Skypeなどのツールを使い、学校間、学生間の交流を行う予定です。さらには、インターネット上でアート大会などを企画し、言葉を超えての交流を行い、日本の学生、学校にも参加してもらうことで、相互扶助のネットワーク、強い絆を作っていきたいと願っています。

本年度実施した、スポーツ・アートプロジェクトについては来年以降、3年をめどに継続して開催し、順次対象校、対象者を増やし、相互扶助の精神に基づく絆を広げる構想です。