企業・団体の皆さまとのパートナーシップについて(2006/12発行ジャーナル12月号掲載) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

企業・団体の皆さまとのパートナーシップについて(2006/12発行ジャーナル12月号掲載)

業・団体の皆さまとのパートナーシップについて

AMDA広報室 奥谷 充代     
 CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)への関心が高まり、NGOやNPOとの連携、協働がより一層注目されています。
AMDAは1984年の設立以来、企業、財団、行政、教育分野の皆さまとさまざまなパートナーシップを結び、活動を実施してきました。緊急救援や海外で 実施しているプロジェクトへの資金援助だけではなく、ノウハウ・技術や特性を活かしたご支援をいただいています。これからもそれぞれの社会貢献活動に対す るご意向に沿った形で、連携、協働を行っていきたいと考えています。
今号では、CSRおよび企業の皆さまとの各種プログラムを紹介します。
日本と欧米では異なるCSRの考え方

CSRに関しては、いろいろな理論があります。その中の一つの定義は、「社会がビジネスに対して持つ倫理的、法的、商業的、公共的期待に一貫して見合う、またはそれを越える方法で事業を展開していくこと」です。
日本のCSR活動においては、下記が強調されています。
1)CSRの核=経済的な責任
a.法律の遵守:社会規範に従う
b.良質の商品、サービスの提供
c.利潤確保と税の納入
d.投資家への配当の確保
2)CSRの拡大解釈
e.活発な情報開示と説明責任、相互のコミュニケーション
f.環境にやさしい活動
g.顧客との誠実な関係、従業員のキャリアアップと支援
h.働きやすい職場環境
i.社会貢献

一方、欧米におけるCSRの方向性は、次のように言われています。
1)長い目で見た場合、自らの利になると判断された、法的遵守の範囲を超えた自発的な企業の行い
2)本質的に「持続可能な開発」の概念に通じている:企業は、経済、社会そして環境に対する影響を組み入れて企業活動を行う必要がある
3)企業活動の核をなす部分にオプションとして付け足すような性質のものではない:企業経営のあり方そのものである
4)バランスを取る活動である:企業は営業成績と倫理的基準、多様なステークホルダー(利害関係者)を満足させなくてはならない。しかも圧力はあらゆる方面からかけられる

2003年は「CSR元年」と呼ばれ、その後はCSRの担当部署を新たに設けるなど、活発な動きが見られます。 関心が高まった原因の一つとして、国際標準化機構(ISO)が2004年6月に、社会的責任に関する国際規格の作成の方向を決めたことが挙げられます。 ISO9000シリーズが品質規格、1SO14000シリーズが環境に関して規格化されていますが、社会的責任に関するガイダンス規格1SO 26000−SR規格として、2009年春の国際規格発行を目指し、草案作成作業が進められています。なお、「社会的責任」は企業のみが担うものではない ため「C(corporate)」を取って「SR」と称することになり、強制力のある第三者認証ではなくガイダンス(指針)になる予定です。国によって企 業のあり方が大きく異なり、従って、CSRの考え方も各国によって大きく異なるからです。

「企業は社会のもの」という視点
また、日本国内では、「会社は誰のものか」という議論も並行して活発になりました。

 「このところの日本のコーポレートガバナンスをめぐる論争はおよそ2つの軸でとらえることができる。 ひとつは『グローバル(米国の)・スタンダードへの適応』対『日本的な良さの保存』といういわばナショナリズムの次元である。もうひとつは『株主の所有権絶対論』対『さまざまなステークホルダーに対す る責任を持つ社会公器論』という、階層対立次元である」
出典:「誰のための会社にするか」(ロナルド・ドア著 2006年6月発行 岩波新書)

「企業は社会のもの」という視点に立って、持続的な発展を実現させるため、経営戦略の見直し・社員の意識改革・マネジメントシステムの整備を急いでいる状況ではないでしょうか。
改正会社法の施行と日本版SOX法(企業改革法)への対応を念頭に、内部統制(注1)の強化にも重点を置いている企業も多いのではと考えています。

(注1)「企業経営者の経営戦略や事業目的等を組織として機能させ達成していくための仕組」とする。また、企業がその業務を適正かつ効率的に遂行するために、社内に構築され運用されるプロセスともいえる。
経済産業省ホームページより抜粋 http://www.meti.go.jp/press/20050713001/050713kigyokodo.pdf 

欧州各国で急増する社会的企業
欧州各国では、社会的企業(social enterprise)と呼ばれる新しいタイプの事業体が急増しています。一般的には、地域社会に貢献するという目的を優先して利益は社会のためになる事 業に再び投資し、民間セクター(一般の営利企業など)の枠をはみ出した企業をいいます。非営利セクター(ボランティア団体や協同組合など)にも収まりませ ん。営利企業と同様に新しいビジネスの手法や領域を開拓し、利益を求めるからです。
障害者やホームレスなど社会的弱者に職業訓練の提供をし、他の労働者と比肩しうる待遇で雇用したり、医療や教育など公共性の高いサービスを事業化したり と、国や地方自治体のような役割も担っているケースもあります。ただし、社会的企業に適用する法人格を設けた国はまだ限られており、法整備が課題になって います。

非営利組織形態 NPO法人(慈善型・監視批判型・事業型)、社会福祉法人など
中間法人、協働組合(ヨーロッパでは多様な形態)  
営利組織形態
株式会社 社会的企業
企業の社会的事業…CSR
【参考文献】
「企業の社会的責任(CSR)と人権」岡田仁孝 世界経済評論11月号(2005年)
「誰のための会社にするか」 ロナルド・ドア著 2006年6月発行 岩波新書
「ソーシャル・エンタープライズ−社会的企業の台頭−」谷本寛治編著 2006年2月発行 中央経済社
財団法人日本規格協会ホームページ  http://www.jsa.or.jp/stdz/sr/sr01_keii.asp