インドネシア・ジャワ中部「バングンタパン第三保健センター」視察報告 – AMDA(アムダ)
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特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

インドネシア・ジャワ中部「バングンタパン第三保健センター」視察報告

AMDAインドネシア・ジャワ中部「バングンタパン第三保健センター」視察報告

1.背景

平成18年5月27日、インドネシア・ジョグジャカルタ州バントゥール県でマグニチュード6.3の地震が発生し、約6,000人の死者と2万人以上の負傷者、さらに約10万軒の家屋損壊という被害をもたらした。AMDAは、AMDAインドネシア支部と連携し、5月31日から6月17日まで緊急医療支援活動を実施した。その後、8月に実施された復興支援ニーズ調査の結果に基づき、バントゥール県バングンタパン地区に第3保健センターを建設することが決定した(第1・第2保健センターは地震による崩壊を免れた)。保健センター建設計画は、AMDAが初動から支援・協力を受けていた社団法人・日本医師会との共同プロジェクトとして、建設されることになり、社団法人・日本医師会とAMDAが建設費・施設費等の経費を拠出した。10月17日に建設に関わる合意書をバントゥール県保健局と取り交わし、10月19日から9室からなる保健センターの建設工事を開始した。この保健センターの規模は、医療行政の定める基準で最小規模のものであり、その後の増設ならびに施設機能の向上は、政府の自助努力に任せるという想定で建設が始まった。

2.完成と運用

バングンタパン第三保健センターは、平成19年1月末に建設を完了し、2月末には医療機器等内部設備の設置も完了した。医療機材は、一般的な内科・外科処置に要する診療機材、産科一般機材、歯科医療機材を設置した。緊急時の対応のための無線電話も導入した。薬局や多目的室も整備され、小規模ながら基礎医療一般をケアできる施設になった。バングンタパン第三保健センターの医療スタッフは、保健局の人事通達により、周辺の保健センターの余剰人員が14人赴任することになった。3月5日にプレ・オープンし、患者を受け入れ始めた。3月10日に開所式が執り行われ、県知事・AMDA・社団法人 日本医師会の3者が署名した合意文書(02/BA/Bt/2007)が成立したことにより、施設・資機材全体のバントゥール県への寄贈が完了した。合意文書の内容に基づき、完成後の勤務職員、維持修繕費、消耗品、医薬品など管理費はバントゥール県および保健局の責任において提供・運営されることになった。


パングンタパン第三保健センター(完成当時)

開所当時のラボの様子(血液・尿検査が可能)

3.現状報告


保健センターの正面(2012年1月撮影)

治療費一覧の掲示

平成24年1月30日にAMDA参事の元持幸子が、バングンタパン第三保健センターを視察のため訪問した。元持の訪問にあたっては、ジャワ中部のスラカルタに本拠地を置くローカルNGO「YKPスラカルタ」のトゥミリヤント事務局長がガイドを務めた。YKPスラカルタは、2010年10月のムラピ火山噴火の際に、AMDAと共同で緊急医療支援活動を実施した団体である。ムラピ火山噴火医療支援活動後の2010年11月24日にも、AMDA本部職員(石岡未和看護師)による視察を実施している。今回は、1年2か月ぶりの訪問となった。

今回の保健センターの視察は1月30日の11時半〜12時半の約1時間、所長の案内で行われた。センターの患者数は一日平均80〜100人、風邪症状などの一般内科患者と歯科患者が大多数である。震災当時は、救急や衛生上の問題が寄与する疾患が多かったが、現在は、風邪症状などで落ち着いている。地域のかかりつけのクリニックとして定着している。歯科の虫歯予防や栄養指導など、予防医療も展開されている。診療費については、住民が治療内容に応じて支払うシステムが、県の方針により行われている。治療費も掲示されている。クリニックの運営費は県予算から支出されているため、治療費が払えない患者がいても直接的に運営が左右される事は少ないという。

現在は、クリニックが手狭になり、クリニックの機能をもう一つの建物に分散していく予定である。もう一つの建物は既に建てられており、建物の内部を改築してクリニックとして使えるようにする。改築には、県の次年度の予算を使うことにしている。現在求められているのは、?歯科診療台の追加、?検査室の改善である。歯科診療台は、現状1台のところ、増設後は2台にする予定。検査室は、当初マラリア検査を含む血液検査や尿検査ができるようにと設置されたが、既存の血液検査の機械は、ヘマトクリット値を見るとてもベーシックなものである。現在、検査室では血液検査のみ行っており、心電図やレントゲン検査が必要なときには、保健センターではなく病院で検査を行うよう紹介している。2010年時の訪問においては「デング熱を検査できる血液検査の機械や、心電図検査機械がほしい」との声があがっていたが、今回の訪問においても同様に検査機械のニーズがあった。加えて、検査備品も充分でないことがわかった。

クリニック内には、メッセージボードの設置があり、それを見ながら所長は支援で建設されたこのクリニックは、地域にとって大切なクリニックになっていると話した。最後に、元持らは、新しいクリニックになる予定の建物を見学し、視察を終えた。


保健センター内観

現在の検査室の様子

改築後、新しいクリニックになる建物

「友として」の看板