菅波理事長によるAMDAインドネシア支部訪問記〜スラウェシ島マカッサル市の著しい近代化〜(2023/10発行ジャーナル秋号) – AMDA(アムダ)
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菅波理事長によるAMDAインドネシア支部訪問記〜スラウェシ島マカッサル市の著しい近代化〜(2023/10発行ジャーナル秋号)

2022年11月インドネシア・西ジャワ州
チアンジュール地震被災者支援活動に
出発する医療チーム

今年 8 月 1 日から 7 日まで、AMDA インドネシア支部を訪問しました。同支部は、スラウェシ島(南スラウェシ州)のマカッサル市にあるハサヌディン大学とムスリム大学に立脚しています。ハサヌディン大学は、西パプア州地域を含む、インドネシア共和国の東部分を担当している重要な国立大学です。以前は、独立した東チモールもその管轄内にありました。ちなみに、スルタン・ハサヌディンとは、スペインに対して武力闘争を展開したイスラム教のスルタン(指導者)です。スルタン・ハサヌディン国際空港の正面玄関前の像にその雄姿を見ることができます。

2 年ぶりに訪れたマカッサル市内は大きく変容していました。市内からスルタン・ハサヌディン国際空港への建設中の高速道路が交通渋滞を起こしていましたが、圧倒的に車両の数が増えていました。その数日後に訪れたマリノ地区の石積みの村でも、2 年前は数台だった車両が多くの家で見られました。世界の富はアジアに向かっています。中国から東南アジアへと確実に浸透していることを実感しました。

ちなみに、「イスラム」はイスラム教、「ムスリム」はイスラム教徒をそれぞれ意味します。「仏教と仏教徒」、「キリスト教とキリスト教徒」の如しです。このマカッサルに、20 年ほど前、『イスラム大学』が発足し、先述の ” ムスリム大学 ” との区別が必要となりました。

スラウェシ島は、マカッサル人、ブギス人、トラジャ人などの 4 部族から成り立っています。AMDA インドネシア支部の支部長を務めるハサヌディン大学のタンラ教授は、ブギス族のスルタンです。ブギスは新進の気性と航海術に秀でており、シンガポールにはブギスの地域があるほどです。ただし、ブギスの航海術は星を頼りに行動する単純な方法です。

 

AMSA インドネシアのメンバーとともに
(前列左から 2番目がタンラ教授)

数年前にジャワの男性とブギスの女性の結婚披露宴に参加したことがありました。ブギスの男性は刀を武士のように左の腰に持っており、ジャワの男性は刀を背中に持っていました。ブギスの男性は勇猛、ジャワの男性は理性的。刀を差す場所でよく理解できました。

AMDA インドネシア支部は、ハサヌディン大学医学部の教授陣を中心に構成されています。タンラ教授に加えて、整形外科教授であり、前ハサヌディン大学長だったパトルシ教授らも、ブギスのスルタンです。AMDA インドネシア支部の災害医療活動は、AMDA インターナショナルの中でも群を抜いて行動的です。2004 年のスマトラ沖地震・津波の時には、AMDA 支部 8 ヶ国から 100 名近くの医療スタッフを派遣しましたが、3,000 キロ離れたハサヌディン大学からは、延べ 300 名以上の医療スタッフが被災地アチェに派遣されました。パトルシ教授自らがアチェの被災地で陣頭指揮を執りました。

AMDA インドネシア支部は、インドネシア国内で災害があれば、必ず医療チームを派遣します。ハサヌディン大学とムスリム大学の卒業生の多くの医師が AMDA に関心を持ってくれています。AMSA (アジア医学生協議会)、 AMDA、そして AMSA Alumni Club (AMSA の同窓組織)の 3 者が連携して世界平和に貢献する素晴らしい可能性を秘めていると期待しています。