2020年度年次報告 災害支援(緊急支援) 日本国内(2021/7発行) – AMDA(アムダ)
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特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2020年度年次報告 災害支援(緊急支援) 日本国内(2021/7発行)

令和2年7月豪雨(熊本県球磨地方)被災者緊急支援活動

◇実施場所(活動開始順): 熊本県球磨郡球磨村、人吉市、球磨郡相良村
◇実施時期: 2020年7月6日〜8月6日
◇派遣者(派遣順): 佐藤拓史/医師/東亜大学医療学部教授・AMDA理事・AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム運営委員会副委員長、橋本千明/看護師/AMDA職員、高和子/看護師/AMDA職員、山田章博/調整員/岡山県赤磐市職員(AMDA本部にて研修中)、吉井治/鍼灸師・柔道整復師/AMDA熊本鍼灸チーム、岩尾智子/調整員・看護師(米国資格)/AMDA職員、平野晃/調整員・柔道整復師/AMDA緊急救援ネットワーク・天理教道竹分教会、頼藤貴志/医師/岡山大学大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野教授・岡山県感染症対策委員会委員、岡本美南/保健師/AMDA緊急救援ネットワーク、灰床宗真/鍼灸師/AMDA緊急救援ネットワーク、後藤英二郎/鍼灸師/AMDA熊本鍼灸チーム・AMDA緊急救援ネットワーク
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成: AMDA本部、岡山県総社市、岡山県赤磐市[pagebreak]
◇受益者数: 207人(活動した避難所3か所の最大避難者数と相良村での自宅訪問件数合計)

◇受益者の声: (鍼灸・柔道整復師による施術を受けた方)
「洪水で全てを流され帰る家もない状況の中で、鍼灸師の優しさに施術中涙が出そうになった。」

「施術を受けてみたかった。限界でイライラしていたけれど、やっと時間ができた。」

◇事業内容:
7月4日早朝、熊本県、鹿児島県に大雨特別警報が発令された。その後、熊本県・球磨川が氾濫し、同県南部球磨地方を中心に洪水が発生した。被害は甚大であり、熊本県内での死者は65人、行方不明者2人、全半壊など住宅への被害は7,781棟に上った(11月2日時点熊本県発表)。この深刻な被害状況を受け、熊本県熊本市からの連携支援要請を受けた総社市より、AMDAへ医療チーム派遣について要請があった。翌7月6日、AMDAは総社市・赤磐市・AMDA合同チームとして、医師1人、看護師2人、調整員1人を人吉市に向けて派遣した。

7月6日から8月6日の活動期間中に、熊本県球磨郡球磨村・人吉市と球磨郡相良村で避難所における医療支援・物資支援、戸別訪問を主とした保健師支援を行った。また、人吉市内で被災しながらも8月再開に向け準備を進めていた「小規模多機能ホーム菜の花」へ物資支援を行った。
 

1)避難所における支援

◇実施場所(活動開始順): 球磨郡球磨村内「さくらドーム」「寿泉寺」、人吉市立第一中学校
◇実施時期: 2020年7月6日〜7月19日
◇事業内容:
7月6日、医師1人、看護師1人からなるAMDAチームは、第1回人吉球磨地域災害時保健医療調整会議に参加した後、球磨村の避難所である「さくらドーム」にて活動を開始。看護師1人と調整員1人が合流し、同避難所と自主避難所「寿泉寺」にて、緊急対応の必要性がないことを確認した後、球磨村の方が避難されていた人吉市立第一中学校で診療・健康相談など避難所での医療支援活動を10日まで継続した。活動中、熱中症の症状なども確認したことから、経口補水液を準備し、感染対策用の医療資材(マスク、手袋、医療ガウン、フェイスシールド)も併せて避難所に提供した。

また、長期化する避難所生活におけるニーズの変化に対応し、7月11日から19日まで鍼灸師・柔道整復師計4人が避難者への施術を行い、のべ21人が鍼灸を、のべ64人が柔道整復師による施術を利用した。コロナ禍での施術であったことから、岡山県感染症対策委員会委員である医師からの感染対策に対するアドバイスを受けながら準備、施術を行った。身体的な痛みの緩和に加えて、被災当時の恐怖や悩みを吐露できる場ともなった。また、地元の鍼灸院・整骨院に引き継ぐ際には、地元の先生のご協力に加え、AMDA災害鍼灸ネットワークメンバーには遠隔からご尽力いただいた。
 

2)保健師支援

◇実施場所: 球磨郡相良村
◇実施時期: 2020年7月12日〜7月22日

◇事業内容:
7月12日、人吉保健所長から相良村への支援依頼を受け、午後から医師1人、調整員1人が相良村教育長のご協力の下、相良村役場を訪問し保健師及び職員から村の状況を伺った。村の一部が前日(11日)の大雨で再度浸水したものの、約200世帯の避難状況、健康状態などが確認できていない、そして保健師は通常業務と並行して、被災世帯の把握など多くの業務を抱えていることが分かった。

AMDAは保健師1人を追加派遣し、翌13日より22日まで、村保健師、外部支援保健師とともに戸別訪問を行った。また、猛暑が続く中、家の片付けをされている方々がいることから、役場の方と相談の上、経口補水液などの飲料3箱を提供。また、保健師より避難所へのシャワーチェア設置についてご相談があったことから、AMDAは1台購入、保健師より後日、設置完了のご報告があった。
 

3)「小規模多機能ホーム菜の花」への物資支援

◇実施場所: 人吉市内「小規模多機能ホーム菜の花」
◇実施時期: 2020年8月5日、6日

◇事業内容:
2018年西日本豪雨災害被災者緊急支援活動にてご協力いただいた岡山県倉敷市真備町にある「小規模多機能ホームぶどうの家真備」より、人吉市内にある小規模多機能施設について相談を受けた。この施設は被災し全壊、8月の再開に向け準備を進めているものの物資が足りないという状況を伺った。AMDAは「小規模多機能ホーム菜の花」への物資支援を決定。現地で手に入りにくい滅菌ガーゼや包帯、ビニールエプロン、手袋、支援企業様から寄贈いただいたアルコールや肌着などを準備し8月5日に発送、6日に到着を確認した。被災された方々に利用いただき、大変喜ばれた、と現地からご報告をいただいた。