コロナ禍におけるインド・AMDAピースクリニック(2021/7発行ジャーナル夏号) – AMDA(アムダ)
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国連経済社会理事会総合協議資格NGO

コロナ禍におけるインド・AMDAピースクリニック(2021/7発行ジャーナル夏号)

AMDAピースクリニック現地スタッフ ラビバルティヤダヴ
 

APC現地スタッフラビ氏

昨年、AMDAピースクリニック(APC)は、インド全土でロックダウン(都市封鎖)が解除された後、コロナの感染予防措置を十分にとった上で、一時的に業務を再開しました。主な業務は地元ビハール州ブッダガヤ近郊のマスティプールとピパルパティに暮らす妊産婦達への保健サービスの提供と食料の配布です。当時は感染者の数が急速に減り、状況に回復の兆しが見え始めた頃でした。一方、観光地であるブッダガヤでは、客足が途絶え、多くの人が職を失いました。市民に経済的な負担が圧し掛かる中、APCでは保健サービスと食料の提供を継続しました。

その後、2021年に入りコロナ感染が再燃。特にヒンズー教の祭典『ホーリー』(3月末)の頃に、事態は非常に切迫した状況を迎えることになります。お祭り[pagebreak]のために都市部から地方へと沢山の人が帰省したせいで、急速に感染が拡大したのです。

4月16日の時点におけるブッダガヤの感染者数は一日で52人を数え、検査の陽性率は20%でした。寺院は政府の命令によって閉鎖されましたが、私達はそんな中でも感染予防に細心の注意を払いながら、APCの運営を続けました。また前日15日はAPCの診療日でしたが、来院者に咳や風邪、発熱の症状が見られました。感染予防に配慮し、該当者にはクリニックの外で待つようお願いし、嘱託医のヴェルマ医師が薬を処方しました。

 
4月19日、ビハール州政府はコロナウイルスの拡散を抑制するための綿密なガイドラインを発表しました。この日、ビハール州では1日に8,960人、インド全土では273,802人のコロナ患者が確認されました。自治体政府の要人にもコロナ陽性者が出始め、地元の医療機関では8人が死亡。病院ではベッドと酸素ボンベの不足が懸念され、状況は刻一刻と深刻さを増していました。APCの一時閉鎖について日本側の担当者に相談したところ、翌20日より閉所となり、スタッフは全員自宅待機となりました。これにより、週に一度の食料支援も一時的に休止しました。

同じ頃、APCの元スタッフから体調不良の連絡を受けました。本人は自らを隔離して療養に努めたそうで、これがコロナ感染であったことを聞かされたのは、本人が回復した後のことでした。

4月半ばから5月にかけて感染拡大はスピードを増し、多くの人が咳や発熱など風邪のような症状を訴えるようになりました。検査を受けられたのは一部の人に限られ、また検査の結果、多くの陽性者が見つかりました。私の家族においても、父や兄弟、子供達を含む12人が感染し、一時期は非常に辛い日々が続きました。この感染急拡大の背景には、インドの婚礼シーズンが重なったことが挙げられます。

 
5月5日、ニティーシュ・クマール州首相が翌6日より15日までビハール州全域を全面封鎖すると発表しました。このロックダウンは、後に延長されることになります。その後、一時的な規制緩和措置が二回に渡ってとられ、一部の商業施設や政府関連施設、必要とされる事業所などが条件付きで再開されました。私達も各自で待機しながら、APCの患者にはヴェルマ医師のクリニックで診療を受けさせる体制をとりました。

現在、自分自身はもとより、家族を含む私達の誰もが、健康面、経済面での問題に直面しています。コロナ以降、インド国内は物価が急上昇しています。感染はここにきて急速に収まってきましたが、人々は依然警戒しており、多くの市民は失業中です。政府はコメや小麦粉の配給を、受給資格を持つ貧困層に対して行うと発表しました。APCの利用者もまた、これまで毎週火曜日に行われていた食料配付の再開を心待ちにしています。

以上のような状況とあっては、一日も早くAPCを再開するべきだと感じています。毎日でなくとも構いません。決まった日に開所することができれば、利用者達もその都度ヴェルマ医師のクリニックを受診しなくて済みますし、ヴェルマ医師や私達スタッフにとっても大幅な負担軽減になります。先述の通り、毎週火曜日になると、食料配付の再開を待ち望む利用者から催促の声が聞かれます。雨季に入り、雨が降り続くブッダガヤよりAPCの近況をご報告申し上げます。