2018年度年次報告 平和構築 災害対応プラットフォーム AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム(2019/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2018年度年次報告 平和構築 災害対応プラットフォーム AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム(2019/7発行)

AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム概要


◇実施場所 岡山県、香川県、徳島県、高知県
◇実施期間 通年実施

◇事業内容
AMDAでは、発生すれば死者30万人、300万人が被災するとも言われる南海トラフ巨大地震への取り組みとして、「AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム」を設立。巨大地震が発生した場合に、孤立しやすい四国の徳島県・高知県10か所の避難所にて迅速に支援活動を行えるよう、自治体、医療機関、企業などが一体となり準備を進めている。連携協定を結ぶ自治体や医療機関、経済団体と緊密に連携し、

1)食糧等の事前備蓄
2)支援に駆けつける医療機関と支援に入る徳島県・高知県の自治体との事前マッチング、事前交流
などを実施。

2018年度は、四国での備蓄準備や他団体主催の訓練参加に加え、新たに医療機関との協力協定を締結。

また、7月より実施した西日本豪雨災害被害者緊急支援活動には、本プラットフォームに参加している多くの自治体、医療機関等が協力、参加した。

【訪問先】
日程 訪問先 *敬称略
4/22 自衛隊記念行事(第14旅団善通寺駐屯地)
5/01 十字屋グループと岡山県吉備中央町への訪問
6/07 高知市内の備蓄物資在庫確認・追加物資の検討
6/17 岡山県EMIS訓練の見学
6/28 徳島県美波町へ備蓄用の水を搬送
7/02 高知県黒潮町へ備蓄用の食糧ユニットと水の搬送
8/07 モンゴルのアルタンザガス先生との徳島訪問
8/28 徳島県訪問(美波町、海陽町、阿南市、美馬市)
11/07 株式会社永燃(岡山市)に訪問
11/28 高野山 蓮華院(御住職にガソリンの相談)
12/19 さくら診療所(備蓄水40箱の移送)、美馬市・阿波市へ挨拶、ホウエツ病院で訓練の打合せ
12/25 さめじま病院、佐賀医大(佐賀県)へ訪問
1/25 岡山県トラック協会へ訪問
1/26 岡山市東区パネル展示
2/14 諏訪中央病院(長野県)との協定式
3/13 高知医療センターとAMDA高知クラブへ訪問
3/25 徳島県庁訪問(会計確認)
3/28 高知県協議会

【訓練】
日程 訓練名 活動内容
6/01 AMDA南海トラフ災害対応シミュレーション
合同対策本部設営訓練。岡山県総社市の中央公民館で本部設営とレイアウト確認を行う。

9/01 徳島県防災訓練
1チームがホウエツ病院に到着後(10時到着予定)、阿南市へ向かう。この間の状況について、徳島県が県民に対して提供して安否確認サービスを使って本部リエゾンと情報共有(本部との情報共有訓練)。AMDA到着についてホウエツ病院がAMDAに代わりEMISに代行入力した。

10/13 南海レスキュー
陸上自衛隊第14旅団のヘリで、善通寺駐屯地からホウエツ病院までチームの輸送。その後、さくら診療所で倉庫に移動し物資の確認を行う。

11/25 岡山県赤磐市防災訓練
赤磐市の防災訓練でパネル展示&赤磐市よりデモンストレーターとして参加。

12/16 徳島県阿南市防災訓練
阿南市民による防災訓練への見学としての参加。

1/19 徳島県AMAT訓練
徳島県AMAT訓練の中で、特養老人ホームが福祉避難所となり、AMDAチームが入る。

【事前交流】
日程 訪問者 活動内容
4/06 徳島県美波町
美波町より副町長交代の挨拶と合わせて、マッチング医療機関への訪問。(福山医療センター、倉敷中央病院)

 

第5回AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム調整会議


◇開催場所 岡山国際交流センター (岡山市北区)
◇開催日 2018年11月24日

◇主な参加者・団体 友實武則・赤磐市長、田原隆雄・備前市長、中四国の自治体職員、陸上自衛隊、海上保安部、医療機関関係者、企業関係者など
◇参加者 258人

◇事業内容
11月に「AMDA南海トラフ災害対応プラットフォーム」の第5回調整会議を岡山市内で開催、連携する自治体や医療関係、企業からの関係者並びに陸上自衛隊、海上保安部の方も含め合計258人が出席した。

議長団である総社市、丸亀市、赤磐市と岡山経済同友会の各代表並びに菅波AMDA理事長の挨拶の後、7月に発生した西日本豪雨災害に関し、毛利好孝・岡山県備中保健所長兼岡山県備中県民局次長、河田秀則・総社市危機管理室長、村松友義・まび記念病院院長、吉備医師会より浅野直・あさのクリニック院長らが活動内容を報告した。また、西日本豪雨災害被災者緊急支援活動でも活動していただいたAMDA災害鍼灸ネットワーク代表世話人の今井賢治・帝京平成大学教授より「被災者には一時的な医療では補えない。心のケアを含め総合的な対応が必要。」と、災害鍼灸の重要性を訴えた。

続いて、南海トラフ災害についてAMDAの取り組みについて状況報告を行った後、徳島県、高知県や支援に回る各自治体より、津波タワーの設置や学校、病院の高台移転、自主防災組織の設置など取り組みの状況を説明。更に訓練内容について南海トラフ災害対応プラットフォーム運営委員長である林秀樹・ホウエツ病院院長や自衛隊第13旅団、水島海上保安部の方より報告があった。

菅波代表より今後の災害時の支援活動として、診療や調剤といった機能を持つ車両10台程度が医療チームに同行する「AMDA災害医療機動チーム構想」を発表した。

最後に、友實武則・赤磐市長が調整会議を総括、田原隆雄・備前市長によるあいさつで閉会した。

 

第5回AMDA被災地間交流フォーラム


◇開催場所 丸亀市 北消防署 (香川県丸亀市大手町)
◇開催日 2019年2月17日

◇主な参加者・団体 梶正治・丸亀市長、麻田ヒデミ・瀬戸健康管理研究所 SHL丸亀健診クリニック院長、東北からの参加者10人、岡山・高知・徳島県の行政関係者15人
◇参加者数 46人

◇事業内容
東北各地から東日本大震災復興商店街やNPO法人が参加し、被災商店街と地域の復興の現状について報告され、その経験を「南海トラフ巨大地震」への対応に活かす目的で始まった本フォーラムだが、今回は初めて四国で開催、香川県丸亀市で行われた。

梶正治・丸亀市長より「南海トラフに有意義なアドバイスをいただければ。」とのご挨拶で開会。その後、丸亀市内で活動をされている瀬戸健康管理研究所 SHL丸亀健診クリニック 麻田ヒデミ院長より、ご自身の阪神大震災、東日本大震災、そして西日本豪雨災害での支援活動を振り返ったうえで、「AMDAと南海トラフに対して予防的な活動を行っている。起こってからではなかなか難しいので、事前に何かやっていくというのは、予防という意味で大変大事。」と話された。

その後、東北からの参加者が現在の復興状況などを報告、続いて岡山・四国の自治体、医療機関、一般住民も参加し、各自治体から南海トラフ災害への取組を報告した。更に、2018年7月に発生した西日本豪雨災害の状況や復興計画について、この災害で被災した総社市の方がお話された。

フォーラム後、東北からの参加者は徳島県阿南市に移動し地元住民の方々と交流した。

東北からの参加者からは「今回初めて四国に来た。地元の方と密に話ができて有意義だった。」「徳島の住民の災害に対する高い意識を感じた。来年も地元住民の方々と接する機会を取って欲しい。」「東北の経験から、命だけ残せば何とかなる。」との感想があった。

 

第5回AMDA災害鍼灸チーム育成プログラム


◇開催場所 朝日医療大学校、岡山県立大学
◇開催期間 2018年11月23日〜24日

◇主な参加者 鍼灸師、教育関係者、鍼灸専門学校生など
◇参加者数 55人

◇事業内容
南海トラフ巨大地震含む今後来ると予測される災害に向けて、被災地でより円滑で効果的な鍼灸活動ができるよう、11月23,24日に「第5回AMDA災害鍼灸チーム育成プログラム」を開催した。全国から災害鍼灸の経験者、災害支援に興味のある鍼灸師、学生ら、合計55名が参加した。

初日は、過去にAMDA災害鍼灸活動に従事した鍼灸師の方々、そしてAMDA菅波理事長を講師として、過去の災害支援での経験を共有した。菅波理事長は、鍼灸師は被災地で医薬品がない状況でも鍼等で治療が可能となること、更に実際に肌に触れて被災者に問いかけることのできる鍼灸・マッサージの重要性を語った。

AMDA災害鍼灸ネットワーク代表世話人で帝京平成大学の今井賢治教授は、「通常時とは環境が違う被災地では、普段の鍼灸治療とは違った配慮や活動が必要になる。」と、過去の経験から災害鍼灸の特異性について語り、南海トラフ災害支援に向けてより多くの鍼灸師の確保が必要だと、参加者に災害支援への参加を呼び掛けた。

AMDA熊本鍼灸チームの吉井鍼灸師及び松浦鍼灸師は、熊本地震での緊急支援活動について時系列で活動を紹介、活動中に生まれた課題を共有し、場所が確保できなくても治療できるようにと「災害鍼灸カー」を準備していると話した。

朝日医療大学校の副学校長の山口大輔鍼灸師は、西日本豪雨災害支援活動について振り返りながら、鍼灸師の確保、活動場所の確保、そして鍼などの備品の確保など、活動中に苦労した点について述べ、「職員の調整が比較的しやすい、朝日医療大学校のような学校関係と協力協定を結んでいくことで、人員不足は解消されるのではないか。」と今後のAMDA災害鍼灸の取り組みに対しても提案した。

参加者からの質疑応答の時間では、「鍼灸師だけの活動では受入側との調整がかなり大変だった。AMDAの強みは避難所の保健師など、他業種との連携が強いことだと、他の団体の災害鍼灸に参加した時に感じた。」などの意見が出た。

2日目は、初日の内容を受け今後の南海トラフなどの災害に向けて、今後どう取り組んでいけば良いのかなど、参加者から質問や意見を積極的に話す総合討論の時間を設けた。鍼などの資機材の管理、患者の情報引継ぎ、調整業務の話や、他の医療チームとの連携など、災害鍼灸活動中に生じる様々な課題の解決方法について話し合った。

「災害鍼灸活動はあくまで緊急支援活動であり、地元の鍼灸師が立ち上がった時点で引き揚げるべき。」、「地元の鍼灸院を圧迫するべきでない。むしろ地元の鍼灸師に繋いでいくことで、長期的な避難者の方々のケアが可能になる。」と今井教授が災害鍼灸支援活動に関する考えも共有した。

地元鍼灸師や他業種との連携をしてきたAMDA災害鍼灸に関して、「災害支援の経験が豊富なAMDAが災害鍼灸に力を入れてくれているのは心強い。」という声もあった。