2018年度年次報告 平和構築 災害支援事業 復興支援(2019/7発行) – AMDA(アムダ)
救える命があればどこまでも
特定非営利活動法人アムダ
国連経済社会理事会総合協議資格NGO

2018年度年次報告 平和構築 災害支援事業 復興支援(2019/7発行)

東日本大震災復興支援活動


◇実施場所 岩手県上閉伊郡大槌町
◇実施期間 2011年3月12日〜継続中

◇派遣者 (2018年度) 12人

◇受益者数 (2018年度) 延べ2,293人
◇受益者の声
「昔からの気心の知れた仲間がここにきて世間話をしたり、お互いにアイデアを出し合って作品が出来上がる楽しみがある。」(AMDA大槌健康サポートセンターの教室の生徒さんより)

◇現地協力団体
AMDA大槌健康サポートセンター、一般社団法人Tsubomi、復興グルメF-1大会運営事務局、NPO法人仙台夜まわりグループ

◇事業内容
2011年3月11日に東北地方太平洋沖を震源とするマグニチュード9.0の地震が発生、更に津波による甚大な被害をもたらした。8年が経った3月、主な活動地である大槌町では、津波被害で不通となっていた三陸鉄道が全線再開した。しかしながら、若者の流出が続いている状況にある。

◆医療・健康支援

2011年12月以降、AMDA大槌健康サポートセンターにおいて、地域の人が集え、心身共に健康になることを目的として教室事業を継続中。郷土料理、体操、木工、さをり織りなどの教室を通し、健康増進、地域の食文化を受け継いでいくことやコミュニティづくりの場となっている。

また、2016年に設立、翌年に一般社団法人化したTsubomiは、子育て世代の居場所を作るべく、わらべうたベビーマッサージサロンや、親子スポーツ教室、ペアレントトレーニング講座等を開催、親子同士の交流や子育ての学びの場となっている。様々な料理教室も実施、岩手三陸の海・山の自然も取り入れながら食生活を見直す機会となった。アロマやボタニカル講座や岩手に伝わる風習を今風にアレンジしたしめ縄づくりを行うなど、若い世代への岩手の伝統継承にも力を入れた。尚、Tsubomiは設立時より一部事業をAMDAの委託事業として行っていたが、2018年度をもってこの委託契約は終了した。

◆生活・自立支援

毎年、地域活性化を目的として行われている「復興グルメF-1大会」は、2018年9月2日に宮城県南三陸町で予定され、AMDAはボランティアバスを運行の予定だったが、西日本各地で豪雨災害が起き、今年度は中止となった。

また、東日本大震災後2013年より、路上での生活を余儀なくされている人々に対し米を贈る活動については、AMDAの呼びかけに賛同した個人農家等から米を提供してもらい、現地で炊き出し等を行っているNPO法人仙台夜まわりグループに送った。今年度は約660kgの米を支援した。

 

ネパール地震復興支援活動 「障がい者支援プロジェクト」


◇実施場所 ネパール・カトマンズ郡、ラリトプール郡、バクタプール郡、ドラカ郡
◇実施期間 2015年6月〜継続中、第四期: 2018年6月15日〜2019年3月10日

◇派遣者
西嶋望/理学療法士/AMDA委託(ネパール在住)

◇受益者 (2018年度) 延べ625人

◇現地協力団体 自立生活センターラリトプール (Independent Living Center Lalitpur, 以下ILCL)

◇受益者の声
・「うちではベッドから出たことがなかったが、自分の事を自分でできるようになった。」
・「4、5年ぶりに家から外に出る機会になった。自立生活プログラムに参加して、どうやって自立生活ができるかも分かった。そして沢山の友達も出来た。」

◇事業内容
2015年4月25日にネパール中部を震源とするマグニチュード(M)7.8の大地震と余震により甚大な被害を受けた。AMDAは発生直後からAMDAネパール支部と協議し、日本だけでなくAMDAカンボジア支部、インド支部、バングラデシュ支部、カナダ支部、フィリピン支部からも医師らと多国籍医師団を構成し、緊急医療支援活動を実施した。その後、5月26日から復興支援活動として様々な活動を実施、その中でAMDA は7月より障がい者支援として西嶋理学療法士を派遣した。同月よりネパール政府が開始した「車いす製造技術研修」で製造された車いすを適切に使うため、西嶋理学療法士は現地の障がい者団体ILCLとともに、障がい者を訪問し身体と環境の評価によって引き渡すなどの活動を行った。

その後は地方に活動範囲を拡大し、更に障がい者の自立生活に向けた支援も進めた。また、「障がい」と「病気」を混同し、どうしてよいのかわからず寝かせてしまい、結果として寝たきりが進んでしまうネパールの人たちに対し、「障がい」について理解していただくための活動も実施。障がい者本人や家族だけでなく近隣住民にも自立に向け理解し協力していただけるよう、「IDOBATA GAFU Program」という家の外で近隣住民と井戸端会議のように障がいについて気楽に語り合える場を意識的に作り出し、専門家がその場で話をすることで正しい理解と協力の促進に努めた。

4年目となる第四期は、「おかやま発国際貢献推進事業」の協力で訪問活動やIDOBATA GAFU Programなどに加え、ILCLの事務所内で障がい者が1週間ほど介助スタッフと自立した生活が送れるようにトレーニングをしていくプログラム「自立生活プログラム」を新たに開始、7人が受講した。そのほか、介助者トレーニングやピアカウンセリング・ワークショップも実施、受講者はその後「自立生活プログラム」で介助者、ピアカウンセラーとして参加した。

また2019年2月には「自立生活カンファレンス」が開催され、本プロジェクトで実施した介助者トレーニングとピアカウンセリングの受講者のほか、AMDAでこれまで訪問活動を行った対象者と家族、女性子供高齢者省大臣、同省障がい者担当官、ラリトプール市長、同市女性子供課主任、そして外部の障がい者関連団体や重度障害者ら75名が参加した。女性子供高齢者省やラリトプール市役所からの障がい者施策の報告や重度障害者による発表、自立生活コンセプトの講義のほか西嶋理学療法士も講義。AMDAの震災後から続いてきた活動の紹介とともに、「インクルーシブ社会」というテーマで「障がいがあっても住みよい街づくり」についてプレゼンテーションを行った。

 

熊本地震復興支援「益城町役場職員への鍼灸治療」


◇実施場所 熊本県益城町
◇実施期間 2017年7月20日〜2018年7月19日

◇派遣者
AMDA災害鍼灸熊本チーム5人

◇受益者 (2018年度) 延べ89人、全期間: 延べ402人
◇受益者の声
「鍼で身体が軽くなった。痛みが取れた。」

◇事業内容
2016年4月14日、16日に震度7の地震を2度も襲われた熊本県益城町。AMDAは、2017年7月より、「支える人を支える」ことを目的に、益城町の復興に携わる益城町役場職員に対しての鍼治療を実施。益城町役場の会議室で月2回、1日あたり約15人をAMDA災害鍼灸熊本チームがマッサージや鍼治療を提供。また、この活動は産業医、保健師、医療関係者による益城町安全衛生委員会とも協力し実施してきた。

事業開始当初は、疲労度が高い人が多かったものの、少しずつ緩和される様子が見受けられた。治療を受けた人の中には、他県から単身赴任で支援に入られている方も含め、肩こりや腰痛はもちろん、ご自身の身体の疲れに自覚がない方や睡眠障害のある方などもいたが、治療を受けられた後、「施術を受けた日はよく眠れた。」等の声が聞かれた。

この事業を開始から1年が経った2018年7月、益城町担当者と協議、合意の上、同月医療支援を終了した。

 

フィリピン・ミンダナオ島復興支援活動


◇実施場所 フィリピン・ミンダナオ島マラウィ市
◇実施日 2018年4月3日

◇派遣者
菅波茂/医師/AMDAインターナショナル代表、岩尾智子/看護師(米国資格)・調整員/AMDA本部職員
◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDA本部、フィリピン大統領府官房長官室

◇事業内容
2017年5月23日にミンダナオ島マラウィ市で起きたフィリピン政府とIS (自称イスラム国)系マウテグループによる武力衝突は10月16日、ドゥテルテ大統領によるマラウィ開放宣言で終局を迎えたが、2018年4月時点で7万世帯35万人以上が避難生活を余儀なくされていた。

AMDAと2017年に昨年協力協定を締結した大統領府官房長官室のメルカド筆頭秘書官(当時)からマラウィ市訪問の提案があり、AMDAから2人が4月6日に現地入りした。

政府現地オペレーションセンター、アマイパクパク医療センター、ミンダナオ州立大学、マラウィ市の仮設住宅などを訪問し、避難生活を垣間見た。町の中心部には爆弾が今も多数埋まっており、国内避難民は仮設住宅で暮らしている。今後マラウィ復興支援としてどのようにしていくかメルカド氏と協議を行った。

 

AMDAハイチ地震復興支援「無料歯科検診プロジェクト」


◇実施場所 ハイチ・フォン=デ=ネグル (Fonds-des-Negres)
◇実施日 2019年3月23日

◇現地での参加者を含めた事業チーム構成
AMDAハイチ支部

◇受益者 53人
◇受益者の声
「非常にありがたい。今回地方からやってきたが、今後自分が住んでいる場所でも無料歯科検診を行ってほしい。」

◇事業内容
現地時間2010年1月12日にハイチで発生したマグニチュード(M)7.0の地震直後より、AMDAは14日に医師1人を含む緊急医療支援チームを現地に派遣、その後もカナダ、コロンビア、ペルー、ネパール、ボリビア、インドの各AMDA支部からも医師を含む医療者たちが現地の病院にて診療活動に携わった。緊急医療支援後も、義足支援やスポーツ交流等の復興支援に加え、2010年12月より2011年2月までフォン=デ=ネグル市の救世軍病院にてAMDA本部とAMDAカナダ支部合同でコレラの流行に対する医療支援を実施した。

その後、同病院には歯科がないため、病院からの要請で2012年2月にAMDAハイチ支部による無料歯科診療を行った。そして毎年恒例の事業として2019年3月に同病院にて第9回無料歯科プロジェクトを実施。当日午前7時から午後5時まで、歯科医であるケビン・マック・フレドリックAMDAハイチ支部長他5名から成るプロジェクトチームは、地方から来られた53人の方に対し口腔チェック、洗浄、歯の修復、抜歯などの処置と、歯の健康についての指導を行った。加えて、2010年以降のハイチでのAMDAの活動について説明を行った。

今回健診を受けた人達は今回のプロジェクトに満足されており、中には46年の人生で今回の歯科検診が初めてだったが、これからは半年に1回通院するとお話されている人もいた。